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陰りの姫のツルハ -太陽の陰に生まれた勇者-  作者: 望月 優響
第三章 夜を駆ける悪魔
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世界騎士団2

 昼の太陽に照らされた、壇上の敷地にある、ターコイス(てい)は、白を基調とした男達に囲まれ、緊張を帯びていた。

 同じような軍服のような衣服に身を包んだ男達が往来する姿を、ツァイは廊下を歩く中、何度も目にした。


 "世界騎士団"。


 ターコイス家の当主フェムルが魔物と絡んでいたことが、明るみになって間もなく、その男達はアルンベルンの町にやってきた。

 騎士団は町を訪れるとすぐに、闘技場を閉鎖し、闘士や関係者、ターコイス家に仕える者を聴取のために一時的に拘束した。

 2日目の朝には、ほとんどの者が解放されたが、残されたターコイス家の豪邸は、未だに重苦しい雰囲気に包まれていた。

 きびきびとした動き。真面目で(せわ)しない顔。

 ツァイは、苦手なその面々を目にするたびに、ため息まじりの顔になった。


「貴方達!」


 アルフィーとツァイは、突然の横から聞こえて来た声に、足を止める。

 その通路に立っていたのは、髪を左右に束ねた、小柄な蒼髪の少女だった。

 華奢な容貌だが、顔立ちはしっかりとしており、その眼光には、その真面目な性格が露わに映っていた。


「見ない顔ですね。ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ。

 部外者はとっとと――」


 少女が言い掛けた時だった。


「アルフィー!」


 その後ろから聞こえた声に、少女も振り返る。

 その顔を見ると、アルフィーも男と同じ懐かしそうな顔を浮かべた。


「アーサー!」


 アーサーと呼ばれた、白銀色の鎧を身に付けた蒼髪の男は、アルフィーに駆け寄った。


「久し振りだなぁ。元気そうで何よりだ」

「お前こそ、あちこちから活躍を聞いていたよ。剣の腕も衰えないようだな」


「団長様、今、この者達を、お連れしようとしていたところでございます」

 アルフィー達を迎えに来た男が、慌てて頭を深々と下げると、アーサーは手を振った。


「いや、構わないよ。さあ、さあ。どうぞ来てくれ」


 アーサーが背を向け、アルフィー達を案内しようとすると、少女は戸惑った顔で声をかけた。


「おに……、いえ、団長! この人達は……」


「ああ。そう言えば、リリオには紹介がまだだったね。

 紹介しよう。この人は前に話した、グラディワンドの賢者アルフィーだ」


 それを聞くと、リリオと呼ばれた少女は、淡い青の瞳を丸くした。


「この人が……」


「アルフィー、どうやら私の補佐が、また早とちりで迷惑をかけてしまったみたいだね」


「アーサー、この子は?」


「ああ、こいつは……」

 アーサーが紹介をしようとすると、少女はそれを遮るように、キリッとした声で言った。


「世界騎士団、第一騎士団団長補佐、リリオ・アルフレッドです。

 知らずとはいえ、無礼を働き、申し訳ありません」


 少女が頭を下げると、今度はツァイがアルフィーに訪ねる。


「こいつら、知り合いか?」


「まあね。彼は、アーサー・アルフレッド。

 昨日(まえ)に話した通り、世界騎士団第一騎士団の団長で、私の古くからの友人さ」


「ほう」と、ツァイは関心の声を漏らす。


「アルフレッドということは、この()は」


 アルフィーが、それに気が付いて言うと、アーサーは頷いた。


「お察しの通り、ボクの妹だ。

 ボクと違って、堅物で融通の利かない処があるが、多めに見てやってくれ――あ痛ッ!」


 脛を思い切りに蹴られた、アーサーが悶えると、


「案内します。詳しいお話は、お部屋で」


 リリオはそう言うと、アルフィー達を案内した。


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