世界騎士団2
昼の太陽に照らされた、壇上の敷地にある、ターコイス邸は、白を基調とした男達に囲まれ、緊張を帯びていた。
同じような軍服のような衣服に身を包んだ男達が往来する姿を、ツァイは廊下を歩く中、何度も目にした。
"世界騎士団"。
ターコイス家の当主フェムルが魔物と絡んでいたことが、明るみになって間もなく、その男達はアルンベルンの町にやってきた。
騎士団は町を訪れるとすぐに、闘技場を閉鎖し、闘士や関係者、ターコイス家に仕える者を聴取のために一時的に拘束した。
2日目の朝には、ほとんどの者が解放されたが、残されたターコイス家の豪邸は、未だに重苦しい雰囲気に包まれていた。
きびきびとした動き。真面目で忙しない顔。
ツァイは、苦手なその面々を目にするたびに、ため息まじりの顔になった。
「貴方達!」
アルフィーとツァイは、突然の横から聞こえて来た声に、足を止める。
その通路に立っていたのは、髪を左右に束ねた、小柄な蒼髪の少女だった。
華奢な容貌だが、顔立ちはしっかりとしており、その眼光には、その真面目な性格が露わに映っていた。
「見ない顔ですね。ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ。
部外者はとっとと――」
少女が言い掛けた時だった。
「アルフィー!」
その後ろから聞こえた声に、少女も振り返る。
その顔を見ると、アルフィーも男と同じ懐かしそうな顔を浮かべた。
「アーサー!」
アーサーと呼ばれた、白銀色の鎧を身に付けた蒼髪の男は、アルフィーに駆け寄った。
「久し振りだなぁ。元気そうで何よりだ」
「お前こそ、あちこちから活躍を聞いていたよ。剣の腕も衰えないようだな」
「団長様、今、この者達を、お連れしようとしていたところでございます」
アルフィー達を迎えに来た男が、慌てて頭を深々と下げると、アーサーは手を振った。
「いや、構わないよ。さあ、さあ。どうぞ来てくれ」
アーサーが背を向け、アルフィー達を案内しようとすると、少女は戸惑った顔で声をかけた。
「おに……、いえ、団長! この人達は……」
「ああ。そう言えば、リリオには紹介がまだだったね。
紹介しよう。この人は前に話した、グラディワンドの賢者アルフィーだ」
それを聞くと、リリオと呼ばれた少女は、淡い青の瞳を丸くした。
「この人が……」
「アルフィー、どうやら私の補佐が、また早とちりで迷惑をかけてしまったみたいだね」
「アーサー、この子は?」
「ああ、こいつは……」
アーサーが紹介をしようとすると、少女はそれを遮るように、キリッとした声で言った。
「世界騎士団、第一騎士団団長補佐、リリオ・アルフレッドです。
知らずとはいえ、無礼を働き、申し訳ありません」
少女が頭を下げると、今度はツァイがアルフィーに訪ねる。
「こいつら、知り合いか?」
「まあね。彼は、アーサー・アルフレッド。
昨日に話した通り、世界騎士団第一騎士団の団長で、私の古くからの友人さ」
「ほう」と、ツァイは関心の声を漏らす。
「アルフレッドということは、この娘は」
アルフィーが、それに気が付いて言うと、アーサーは頷いた。
「お察しの通り、ボクの妹だ。
ボクと違って、堅物で融通の利かない処があるが、多めに見てやってくれ――あ痛ッ!」
脛を思い切りに蹴られた、アーサーが悶えると、
「案内します。詳しいお話は、お部屋で」
リリオはそう言うと、アルフィー達を案内した。




