世界騎士団1
ツルハが目を覚ましたのは、2日後のことだった。
ぼやけた視界が鮮明になると、ツルハは、バッと体を飛び起こした。
「気が付かれましたか!?」
その景色がはっきりするより前に、白い衣服を着た少女の、慌てた顔が目に飛び込んで来た。
「大丈、痛たたッ……!」
背中に錘が付けられたような感覚に、体のあちこちに棘が刺さったような痛みが走った。
「無理なさらないでください! まだ、完治してはいないので」
その少女が、医術に携わる者だと分かると、ツルハは自身のいる状況をすぐに理解した。
窓からは白い太陽の光が差し込み、その光に照らされた、自分の腕を見ると、包帯や綿紗の白が目に映った。
――そうだ。私、あの時倒れたんだ。
真っ白の頭に、闘技場の景色が浮かんでくると、次々と記憶が連鎖するように繋がっていく。
扉が開く音に、その連鎖が止まると、ツルハは振り向いた。
「よお」
低い声と共に、その男の姿が目に映ると、ツルハは点のように目を丸くした。
「鬼王!?」
驚きの叫び声が上がると、鬼王は耳が痛そうに、眉間に皺を集めた。
「姫っ!!」
そのすぐ横から見慣れた賢者の姿が飛び込んでくると、賢者はツルハにすがり着くように、すぐ様に飛び込んだ。
「ひめえええええええ!
ご無事で何よりでございますぅ!!」
滝のような涙を流しながら、見ている方が恥ずかしくなるような情けない顔でツルハを抱きしめると、鬼王は、額に手を当て、大きく息をつく。
「こいつは、お前が目を覚ますまで、ずっとこの調子だったんだ。
医者からは心配無用って言われてたんだがよ。
大会中も、観戦席から魔王レベルの異常な魔力と殺気がすると思ってたら、とんだ大賢者様だぜ」
呆れたように鬼王が言うと、アルフィーはキリッとした表情で返した。
「もしあなたが姫を殺すつもりだったら、今頃、消し炭でしたよ」
「あんな魔力で呪文なんて打たれたら、たまったもんじゃねェぜ。
闘技場は愚か、町ごとアウトだ」
「あの……」
ツルハが、なぜ鬼王とアルフィーが一緒にいるのか、不思議そうな目で声を漏らすと、アルフィーは説明した。
「ご安心ください。この不作法者が姫に危害を加えることはありません」
「不作法者……?」
「姫が眠っていらっしゃる間、色々ありまして。
町長の悪事を芋づる式に明るみにする際、協力することになったのです」
「お前から協力しろって言ったんだろうが」
「噂通り、単なる脳筋かと思えば、こう見えて案外頭も回るところがあるんですよ」
「てめェ、喧嘩売ってんのか!!」
テンポの良く、2人の声が交互に重なると、ツルハは思わず、クスッと笑った。
「アルフィー様」
扉が開き、男が声をかけると、アルフィーは立ち上がった。
「姫はここで安静にしていてください。また落ち着いた時、しっかりと説明に参りますので」
「分かった。……あの、鬼王さん」
ツルハに声をかけられると、アルフィーと共に踵を返した、鬼王はツルハに振り向いた。
「その……、闘技場では、ありがとうございました!」
ツルハが頭を深々と下げて言うと、鬼王は、フッと微笑んだ。
「こっちこそな。お蔭で大事なモンを思い出すことができた。
早く体調治せよ。話はそれからだ」
鬼王が言うと、ツルハは、強く頷いた。




