表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/229

プロローグ: 未来のあなたへ


 私が生まれた時のことについて、私が知っていることのほとんどは、アルから聞かされたことだった。


 私が生まれたのは、深い海のような夜だった。

 散りばめられた小さな銀の粒のような星と大きくて綺麗な満月の輝く晩、ある大国の王宮の中で、私達はその産声を上げた。


 王国の名は、グラディワンド。世界でも恐れられている強国である、その国では、私達が生まれる前から不穏がその影を落としていた。


「グラディワンドはもうじき滅びる」


 そんな声がどこからか生まれ、風に乗り、波のように国中に(でん)()していた。


 その噂の真実を確かめるために、王はその国に仕えていた大賢者と謳われる男に占術を求めた。

 その男の名は、アルフィー・フィノーレ。


 アルは王の願いを快く受け入れた。そして、この国の未来をその占術で占った。


 その結果が出るまでに、約七日間かかった。


 そして、その最後の晩――彼は占術の結果を伝えた。


「このまま時が流れれば、グラディワンドは間もなく、"大いなる闇"の存在によって滅びる」


 それだけではない。その闇はこの大陸、そしてやがては世界の全てを破滅へと導くであろう。そう告げた。


 しかし、その予言には続きがあった。


「しかしその闇は、太陽の如き勇者の到来によって祓われ、世界、そしてグラディワンドも救われる。そしてその勇者は、グラディワンドの王の下に誕生するであろう」



 その予言が告げられた夜に、私達は生まれた。

 

 国中の皆が私たちの誕生を喜んだ。

 お父様もお母様も、アルも大臣も騎士の人達、国の人達も、皆が私たちを祝福してくれた。

 そして、国を、世界を救う勇者の誕生を心から喜んだ。



 だけど、私はその期待に応えることはできなかった。



 お姉様は武術の才に長け、お父様のように勇敢で(たくま)しく、度量のある、まさに勇者にふさわしい御人に成長した。それとは対照的に、私はお姉様のような武術の才には恵まれず、魔物に立ち向かえる度胸もない。


 だけど、私は心からお姉様を尊敬している。


 私もいつか、お姉様のように誰かの役に立てる、困っている人の力になれる立派な人になりたい。


 明日はいよいよ、お父様の定めた儀式の日。


 お姉様が勇者となるその瞬間を、しっかりこの目にお姉様の姿を焼き付けておこう。


 その姿を私の目標として、この心に刻み込んでおこう。


 いつの日か、未来の私がこの日記を読んだ時に良い返事ができることを、心から願っています――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] どうもはじめまして。 作品拝見しました。 とても面白かったです。 (*´▽`*)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ