表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/229

ツルハと鬼王2

 武闘会二日目の朝。

 昨日の疲労のせいか、夜は夢一つ見なかった。

 ウォルンタスの剣により、覚醒状態にあったとはいえ、それが解けた後の疲労は酷いものだった。

 腕から背中、足まで、全身あちこちに錘を付けたような感じだ。大きな怪我はしていないものの、強く打ったところからは鈍痛がしていた。

 ツルハは支度を整えると、闘技場に備え付けられている専用の宿泊室を後にした。


 闘技場は相変わらず、うるさい程に賑わっている。

 ツルハは、その声に囲まれる、闘技場の土の地面の上に立っていた。

 自分だけじゃない。

 周りを見ると、参加者の男達の顔がズラリと並んでいた。

 急な招集に、何事だと、皆同じような表情を浮かべている。

 ツルハの顔に、露骨に嫌悪が走ったのは、あの男の顔が見えた時だった。

 カーラー。

 その鎖鉄球が目に映ると、ツルハは目が合わないように、すぐ様に逸らした。


(あんな最低な人がまだ残ってるだなんて……)


 敗北していないものかと、心から祈っていたが、彼の姿を目の当たりにした時、身震いと共に胸の底が抜けるような落胆が落ちた。


 貴賓席にフェムルの姿が見えると、闘技場内は、一瞬でピタリと静まり返る。


「観戦席にいらっしゃる皆様、改めて、この町へのご足労、全ての町民を代表して感謝をここに示させて頂く。

 さて、聖なる戦場に立つ闘士の諸君。昨日(さくじつ)の戦い、見事であった。

 今ここに集まってもらったのは、他でもない。今日、陽が西へ落ちる時には、この大会の優勝者が決まっていることだろう。

 そして、その者が手にしているのは、かつてない程の富とその栄誉だ。

 だがしかし、それを手にする者は、それなりの覚悟と勇気も持ち合わせていないとならない!」


 フェムルが両手を広げ、大々的に言うと、その声は言い放った。


「ここに、本日の試合全てにおいて、その制約を解除し、対戦相手の殺戮を許可することを、ここに示す!」


 フェムルが言うと、闘技場の沈黙の中に、戸惑いが走った。

 しかし、その戸惑いが興奮へと変わると、観衆たちから盛大な声が噴き上がった。


「一体どういうことだ?」

「相手を殺しても、お咎めなしになるってことか?」


 観衆たちに遅れ、困惑の顔を浮かべる闘士たちに答えるように、フェムルは言った。


「その通りだ、諸君!

 命を賭けた戦いに見事勝利を収めれば、その栄誉はこれまでのものと比べものにならないものとなろう!

 無論、今まで通り、相手の降伏を持って勝利するという決まりは継続だ。だが、降伏を待つ前に、相手を捻じ伏せ、その勝利を手にすることもできるようになる、ということだ」


「バカげてる……」


 ツルハは貴賓席に立つ男を睨みつけた。


「しかしながらこの急な決まりは、非情かつ酷を極める。命惜しくば、今ここでの辞退も認めよう」

 フェムルは、蔑むような、憐れむような顔で言うと、闘士たちに再び沈黙が落ちた。


 男達は、様子を伺うように、互いに顔を合わせる。


「……異論なしだ」

「俺もだ」


 一人の男が言うと、それは伝播するように、次々と声が上がる。


「おいおい、良いのかァ? やっちゃって良いってことだよなァ?

 ようやく時代が、俺様に追いついたなあ!」


 カーラーのように感極まった声を上げる者もいれば、鬼王や紅蓮の戦士のように黙する者もいた。

 ツルハは、その狂気染みた空気に、戸惑った顔を浮かべた。

 そうしている間に、


「辞退者は無しか。では早速、本日のトーナメントを発表する!」


 フェムルからトーナメントの発表があると、闘技場は昨日よりも大きな熱狂に包まれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ