ツルハと少年2
午後の日差しは、少し暑いと思わせる程だった。
ツルハは眩しさに太陽を睨むと、野原に駆け出した。
草原を歩く中、林の陰にいた、丸い小さな姿にツルハは気が付くと、ゆっくりとその陰の2つの人型に駆け寄った。
「大丈夫?」
後ろからかけられた声に、膝に埋めていた顔を少年がバッと振り向かせると、少女もビクッと振り返った。
「お、お前っ!」
少年は立ち上がると、傍にあった木の枝を持ちツルハに向けた。
怯えた子犬のように威嚇する少年は、妹を庇うように後ろに隠し、軽蔑いっぱいの眼差しをツルハに向けていた。
「……勇気があるんだね」
目の前の少女がふと笑むのを見ると、少年は困惑したような色を滲ませる。
少女は膝を曲げ、少年の目線に自身の目線を合わせると、何かを重ねているように言った。
「私もね、そういうお姉さんがいるの。勇気があって、強くて、いつでも私を護ってくれた、大切な人」
束ねた髪が風に揺られ、春の花のような匂いが少女から香った。
「あなたを見ていると、そのお姉さんのことを思い出す。
私がオズ君くらいの歳の時、私には誰かを護れるほどの勇気はなかったから」
ツルハは、膝を組み、草地に座ると、空を仰いだ。
オズは警戒が少し解けたのか、持っていた木の枝を下げると、マノと共にツルハの横に腰を下ろした。
「おじいさんから聞いたよ。おじいさんの家を、皆の生活を護るために、私たちに立ち向かったんだよね?」
ツルハが訊くと、オズは視線を向けずも、コクリと頷いた。
「それは、とっても凄いことだよ」
ツルハの言葉にオズは顔を上げる。
「何かを護るために、誰かに立ち向かえるって、凄く勇気がいることだもの」
ツルハが言うと、オズは照れ臭そうに少し頬を赤らめた。
「オレ、強い人になりたいんだ。父さんみたいな、強い冒険者みたいに」
「お父さん?」
膝に口元を埋めながらオズは頷いた。
「父さんは凄い冒険者だった。カッコよくて、強くて、大きな魔物にも勇敢に立ち向かって。いつでもオレや母さんたちを守ってくれた。
父さん達は、旅先の事故で亡くなっちまったけど、オレはいつか、父さんみたいに強い人になりたいんだ。そして、じいちゃんやマノを、あのバカ貴族から護れるようになりたい」
オズの輝いた目がようやくツルハの目に映ると、ツルハは微笑んで頷いた。
「きっとなれるよ。誰かを護りたい、その心を忘れなければ絶対に」
オズの、力強く頷いた顔には、もうさっきまでの警戒心はすっかり氷のように溶けていた。
マノもツルハに、オズと同じ柔らかな表情を向けている。
「さっ、帰ろう。おじいさん達も心配しているよ」
ツルハがオズの手を引き立ち上がると、3人は老人とアルフィーの待つ、木造りの家に向かって歩き出した。
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