第一話
登場人物
大和 香住 主人公? 一人称は“私”
長野 稔 大学院生 一人称は“オレ”
米澤 佳子 大学院生 出番少なめ
後藤 先生 先生 一応“助教”
他多数でおおくりします。
地方独立行政法人奈良県立病院機構奈良県総合医療センターの看護師、佐々木郁恵はふと視線をあげた。真新しい待合室のカウンターに置かれた端末がカタカタと音を立て始めLCDパネルがひょこひょこと踊り始める。足元から突き上げる小刻みな振動。鉄骨7階建ての遥か底の方から沸き上がる極低音の咆哮に、壁面のTVから流れる電子音が重なる。画面の上端には「緊急地震速報」の文字。続けて下端に表示される地図。紀伊半島の中心に赤い☓印。黄色く塗り込められた和歌山と三重、そして奈良県を視界の端に捉える間もなく凄まじい横揺れが襲いかかる。
450床を越える病室に31を数える診療科や多数の手術室・処置室などを備える基幹病院の駆体を、地下3階コンクリートスラブで支える免震装置。その設計限界を遥かに超える水平加速度が、鉛プラグ入り積層ゴムと鋼鉄ダンパーを容赦なく引きちぎる。川沿いの小高い丘を造成して構築された人工地盤が、地下数十mの深みまで穿たれた基礎杭ごと押し流され、上部構造物と共に幾百トンもの瓦礫へ変容する僅かな時間、郁恵の脳裏には一つの疑問が浮かんでいた。
「なんなのこれ!? 地震なのホントに??」