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ある変わり者と物好きの喜劇  作者: 和洲さなか
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高齢化社会

2030年、世の中はいよいよ高齢化社会になった。4人に1人が老人になると言われていたが、蓋を開けて見れば2人に1人は老人という、悪夢のような状況だ。

だが、何故かこの件に関してだけは、いつもは能無しの政府も介護や施設などの早急な対応を行い、大きな混乱もなく生活は成立している。

...表向きには。


ここに1人の男がいた。亡き妻から託された1人息子を溺愛して育てている。息子は運動神経も良く、勉強は出来る、親孝行で、物の道理を良く知っていた。男の自慢の、男には出来過ぎた子だった。


男の近所にも老人がたくさん住んでいたが、取り分け1人、この男を気に入っている様子のお爺さんがいた。

この老人はよく男に話しかけてくるのだが、礼儀正しく、息子へ物をくれたりする事もあるので、男も良く相手をしていた。


男には悩みがあった。

息子は男手一つで自分を育ててくれている親を困らせる気など1つも無かったが、男は息子を良い学校へ行かせてやりたかった。スポーツをやっている息子の夢がプロである事も知っていて、夢を叶えさせてやりたかった。自分の不甲斐なさで、息子の華やかな未来を潰したく無かった。しかし、男の稼ぎはそこまで多くなかった。


そんな男の耳に、羨ましい話が飛び込んでくる。友人が、血の繋がらぬ老人から莫大な遺産を託されたというのだ。

何故か自分を良く気に入ってくれている老人で、と友人は言った。


男の頭に淡い期待が浮かんだ。

自分を気に入るあの老人も、天涯孤独で寂しいようだ。よもや財産をくれたりはしないだろうか...。息子も可愛がられている、ならば息子の学費のために今、金が必要なのだが。


男は老人にそれとなく、金の話をしてみた。老人は自分には遺産は無い、と言った。学生の時分に親が自殺し、苦労した人生だったからと。幸い、父の友人が金持ちで生活は救われたが、自分が息子なら、金のかかる学校になど行かなくていい、普通に幸せがあればそれでいい、と金の代わりに、息子の気持ちを知っているかのように説教をくれるので、男はカッとなって老人を殴ってしまった。

老人は倒れて動かなくなった。


男は逃げた。

携帯電話が鳴った。友人からだった。すごい話を教えるので、会いたいと言う。男は自分のアリバイになり得るかと思い、友人の待つ店に向かった。


友人は言った。

「すごい話なんだ。国家機密だぜ?実は老人の大半は未来人で、2080年頃から来ていたんだ。待て待て、帰るなよ。その頃地球は滅亡しかかっていて、タイムマシンを開発する事に成功したんだが、どう頑張っても未来は変えられなかった。それならと選んだのが、平和な時代に普通に生きて死ぬ事だったんだ。だからこんなに老人が多いのさ。何でって?今生きてる奴らが大人になって、この時代に戻って来て死ぬからだよ。この話は未来の俺に聞いたんだ!そう、この前遺産をくれるって言った爺さんは俺だったんだよ!なあ、おい、どこ行くんだよ、嘘じゃないって!」


男は青ざめた顔で店を出て行った。

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