壊れ行く普通
気分で書いているので、文量はランダムです。
それじゃ、私はこっちだから」
「ああ、じゃあな」
「またな~」
学校に着くと、クラスが違う鈴奈だけ別れる。
「それにしても、鈴奈ちゃんいい子だよなぁ」
「お前にはやらんぞ」
「お前は、お父さんか!」
言い合いつつクラスに入ると、何やら雰囲気がいつもと違う事に気付く。
「なぁ……」
「ああ、何かおかしいな」
何がおかしいって、誰一人として自分の席から立っていないのだ。
みんな絶望的な表情を浮かべたまま、それぞれ手紙を手に持っている。
いや、例外がいた。
クラスの中で一番の問題児である高間が教室の後ろで倒れている。
「おい、何かやばそうな雰囲気じゃないか?」
「ああ……」
高間に近づいて行った真人が脈を計って目を見開く。
「お、おい! こいつ脈がねーぞ!」
「っ!」
俺は、近くに座っていた奴の肩を掴む。
「お、おい! どういう事だ!」
だが、そいつは首を横に振った後に俺の机を指さした。
「なんだって……ん?」
そこにあったのは、一通の封筒。
よく見ると、真人の机の上にも置いてある。
「真人、なんだかわからないが……とりあえず、自分の席に置いてあるアレを読んだ方がいいらしい」
「おまっ! 人が死んでるんだぞ!」
確かに、死体がそこにあるっていうのにこんなことをやっている場合じゃないのは確かだ。
だが、何だかそうしないといけない気がする。
「とりあえず、警察に……!」
真人は、そう言ってから携帯を取り出す。
「電波が来てねぇ!」
それを聞いて、俺も携帯を取り出すと圏外になっていた。
「こうなったら、外に……!」
真人が教室の扉に向かうが……。
「ひ、開かない!」
どうやら、開かなかったらしい。
「どうなってやがる!? くそっ、こうなったら……!」
無理矢理開けようとする真人を急いで止める。
「待てっ!」
「優!」
「いいから、待つんだ。とりあえずはアレを確認しない事には始まらない……!」
俺の気迫に負けたのか、真人は自分の席に向かって行った。
それに続いて、俺も自分の席に向かう。
席に座って、封筒を持ち中身を確認する。
そこに入っていたのは、一枚の手紙だった。
『これを読んだら、一言も喋らずに連絡があるまで席まで立つな。これを破った場合、そこで倒れている男のようになる。』
書かれていたのは、それだけ。
それと同時に、脳内に高間がこれを読んで大声で何かを言いながら席を立って今死んでいる場所まで移動し、そこで息絶えた映像が流れ込んでくる。
一体どういう仕組みで? とか、何がどうなってやがる? とか色々言いたい事はあるが、この手紙は紛れもない事実だろう。
真人も、これを読んで顔を青くしながら固まっていた。
これで、真人が死ぬ事はないだろう。だとすれば、俺も無駄な事をする気はない。
唯一、願う事といったら鈴奈には何もない事を祈るくらいだろうか……。
だが、その願いは打ち砕かれる事になった。
まず、教室に取り付けられているスピーカーから軽快な音楽が流れてきた。続いて聞こえてきたのは、男とも女とも捉えられない声。
『あーあー、とりあえず、混乱でどうなってるのか理解できていないであろう君たちに言いたい事がある。これは、映画の撮影とかそういうのではない。そして、次に君たちに言葉を送りたい。おめでとう』
おめでとうだと?
『君たちは、選ばれたのだ! そう、神々の暇つぶしにね!』
なん……?
『具体的には、君たち2-A~2-Dまでのクラスメンバー達は、今から異世界の各国に送られる。そんで、絶賛そこでは四国が戦争中なんだよね。だから、そこで戦ってほしいわけ』
な、なにを……それ、軽く言っていいやつじゃないだろ!
『あ、そうだ。目標がなくちゃやる気でないと思うから、戦勝国に所属して生き残ってた人だけこの世界に戻してあげるね!』
『あれれ~? 返事が聞こえないぞぉ? あ、そうか! ごめんごめん、もう呪いは解いたから喋ったりしてもいいよ!』
自称神がそういうのと同時に、クラスメイトが口を開く。
それは、最初は誰かのつぶやきから始まり、徐々に規模が大きくなっていく。
「ふ、ふざけるな!」
「そうだ! それじゃあ、俺たちに殺し合いをしろって言ってんだろ!」
「もういやぁ! 家に帰して!」
などなどだ。
俺もそこらへんには同意だが、それ以上に思っている事がある。
それは、鈴奈が別のクラスだという事だ。
『まったく、そんなに喜ばなくてもいいんだよ? あ、そうだ。一度に転移できる人数は40人までだから! まぁ、あぶれちゃった人はどこに転移させられるかわからないけど、頑張って生きてね!』
その言葉で、クラスが一気に静かになる。
この学校は、クラスが4つある。
その中で、クラスメイトの数が40を越しているのは……。
「う、うちのクラスって何人だっけ?」
「42……だったはず」
「高間が死んだから……」
「ひ、一人だけあぶれるな……」
誰かがそういうつぶやきをしたのが、水面に水滴を落とすがごとく広がっていく。
「お、お前が行けよ……」
「嫌だよ! なんで俺が……!」
「私イヤ!」
こうなると、人は自然とパニック状態になり果ては殺し合いにまで発展するだろう。
なら、それを防ぐしかない。
「じゃあ、俺が出るよ」
「「「!!」」」
俺がそう言うと、今まで騒がしかったクラスが嘘のように静かになり、俺に視線が集まる。
「い、今なんて……」
クラスの誰かがそうつぶやくのを聞いて、もう一度ハッキリと言う。
「俺が、一人になるって言ったんだ」
クラスメイトがこちらを黙って見る中、一人だけは俺の方にズンズン歩いてくる。
「優! てめぇ、何考えてやがる!?」
真人が俺の胸倉をつかみ、そう叫ぶ。
だが、こいつを静かにさせる方法を俺は既に考えてある。
「真人、落ち着け俺に考えがある」
真人にしか聞こえないくらいのボリュームで、語り掛ける。
「あぁ?」
「俺は、一人になって鈴奈を救出したいんだ。ほかの奴らはどうでもいいが、鈴奈だけは死なせたくない」
そう言うと、真人は大きく目を見開いたのだった。