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いつもの世界へ

「優くーん? 起きてる?」

俺は、そんな間の抜けた声で目を覚ました。

頬に伝わる涙を拭い、身体を起こす。

それと同時に、部屋のドアが開いた。

「なんだ、起きてるなら返事してよ」

「すまん、今起きた所なんだ」

ドアからひょっこり出てきたのは、地毛の茶髪を腰まで伸ばした女の子――鈴奈だった。

「まったく、ご両親がいないからって夜更かししてるからだよ」

鈴奈は、やれやれといった感じでそう言ってくる。

俺の両親は、一昨日からいきなり旅行に行っている。

帰ってくる日は未定らしい。

「いや、夜更かししたつもりはなかったんだが……」

「はいはい、それじゃあ下に朝食用意してあるから着替えて早めに来てね」

鈴奈は、俺のそんな言葉をスルーして部屋から出て行ってしまう。

「本当なんだけどなぁ……」

愚痴りながらも、俺は先ほどまで見ていた夢を思い出していた。

現代とはあり得ない環境で、俺は一人死体の中で倒れていた。

あの時の感情は、まさしく怒りでありそれは世界へ向けられた物だった。

「どうして、こうなってしまったのだろうか……か」

夢の俺が呟いた言葉は、一体どういう意味があったのだろうか?

考えても、どうせ答えは出ない。

「ま、いいか。それよりも鈴奈を待たせる方が問題だよな」

そそくさと制服に着替えて、下に降りると鈴奈が丁度朝食をテーブルに運んでいる所だった。

「あ、珍しく早かったね。今運んでるから、座ってて」

鈴奈に無言で手を上げながら、俺は椅子に座ってTVをつける。

『--のように、現在原因不明の神隠しが続出しておりまして』

TVに映ったニュースアナウンサーが何か言っていたがそれを聞き流す。

「最近、増えてるよね~」

「あん? 体重がか?」

俺が冗談でそういうと、鈴奈がキッと俺を睨んでくる。

「冗談冗談、それで何が増えてるって?」

「神隠し!」

「あぁ~」

鈴奈の言う通り、ここ最近になって何やら突然姿を消す人間が増えている。

世間では、UFOの仕業やら拉致やらと騒いでいるが答えはいまだに見つかっていない。

「まぁ、俺たちには無縁だと思いたいな」

「だといいけど……」

鈴奈が椅子に座ったのを確認するのと同時に、俺は手を合わせて朝食を食べ始める。

「どう?」

「ん、美味しい」

俺がそう返事すると、鈴奈はホッとした表情で朝食を食べ始める。

鈴奈と俺は幼馴染なのだが、いつからかこんな感じで世話になっている。

俺の母親に至っては、鈴奈の事を大変気に入っており結婚はいつだとか聞いてくるが、俺にその気はないし、鈴奈にもないだろう。ましてや、付き合っているわけでもないしな。

あれ? そう考えると、鈴奈に彼氏が出来たらこの朝食を食う事もなくなってしまうのか。

「ん? 優くん、どうしたの?」

「え? 何がだ?」

「何か、微妙な顔してたよ~」

おっと、顔に出ていたようだ。

「すまんすまん、ちょっと考え事してただけだ」

悟られないように、俺は味噌汁を一気に飲んだ。

「あちぃ!」

「そりゃ、出来立てだからね……」

そんなやり取りをして、朝食を食べ終えた俺たちは家を出る時間までお茶を啜った。

家を出て、通学路を二人で歩く。

「んー、今日もいい天気だねぇ」

「そうだな、こんなことなら布団でも干してくるべきだった」

「優くんって、変な所で主婦的な発想するよね」

「気のせいだろ?」

むしろ、そんなことを言われるとはとても心外だ。

鈴奈が何かを言おうと口を開くのと同時に、背後から誰かが走ってくる音が聞こえた。

「お~ふたりさんっ! 今日も朝からあつあつですなぁ!」

声に振り返ると、スポーツ刈りの長身の男が立っていた。

「なんだ、真人か」

「野村くん、おはよ~」

そこにいたのは、野村真人(のむらまさと)だった。俺のクラスメイト兼親友だ。

「おはようさん、ところで優。なんだとはなんだ!」

「はいはい、お前は朝から熱いなぁ」

俺は、真人を流しつつ学校へと向かった。

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