プロローグ
剣が無数に刺さり、多くの死体が転がる草原。
辺りは煙によってくぐもっており、血の匂いが辺りに充満していた。
その中心――、そこで一人の男性が横たわっていた。
服も身体もボロボロで、自分の血と返り血で血まみれの姿で男性は仰向けに倒れていた。
どうして、こうなってしまったのだろうか。
彼は、心の中で何万回と繰り返した言葉をさらに重ねた。
視界を少し横にズラすだけで見える刺さった日本刀。その柄についた青色の鈴が風に揺られて音色を鳴らす。
「あぁ、もうダメなんだな……」
誰に言うまでもなく、呟いた言葉。
この場には、彼以外にもう生きている人間などいなかった。
もう一度、鈴が鳴る。
始めはゆっくりと。徐々に音を奏でる速度は早くなる。
まるで、彼の灯火を表すように。
「ごめん、鈴奈……また、助けられなかった」
死に体、まさにその状況で彼の脳裏に映るのは一人の女性。
今までの人生全てを賭してでも奪い返そうとした、一人の女性。
「あぁ……死にたくないな……せめて、死ぬなら鈴奈の腕の中で……」
そこから、言葉が紡ぐられる事はなかった。
彼の眼は開いたまま、空を見上げていた。
生気がなくなり、空を見つめているその眼はまるで世界そのものを恨んでいるかのようであり、空はそれを嫌がるように雲を動かしていた。
生きている物なんていない草原、それを囲むように赤い光が灯っていく。
その光は、彼を見送るように……もしくは、彼を否定するように灯って行き全ての光が灯ったのと同時に光は線となって草原に降り注いだ。
轟音、焼けていく死体と草原。
青い鈴がついた日本刀は、その爆風の中でも直立に刺さり続ける。
だが、その音色を奏でる事はなかった。