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この世界でただ1人の人間の戦い  作者: 冒険好きな靴
第5章 地獄篇 グリード領ウルファンス山脈
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81話 助力を求めて

 人間は裏切る生き物だ。

 人間以外の生物は、裏切るということをしない。

 裏切るという行為は、知性が高みに達した証みたいなものだからだ。

 では、他の・・・人間のような生物がいたらどうだろう?


 悪魔。

 地球とは別世界・・・別惑星に住む知的生命体。

 彼らは人間とは違う。

 独自の法則を築き上げてきた彼らは、人間社会よりも調和のとれた文化を作り上げている。

 裏切りを起こす必要性もない世界。


 その中で、その文化を拒否する強大な悪魔達。

 72柱の悪魔達。

 ルールから外れることが出来る程の力を持った悪魔達は、きっと大多数の悪魔達の理解を得られてはいない。

 きっと1人ぼっちだろう。

 ・・・俺と同じように。


 悪魔らしい悪魔なんて、72柱の悪魔達ぐらいだ。

 ソイツらには自分勝手な意思がある。

 裏切りの性質を持っているのだ。


 マリアさんとて、召喚王を裏切った。

 まるで人間のようだ。


 ・・・もしかしたら、力を持った悪魔達は人間に近付いた悪魔で、自分の心と似通った人間に会いたいが為に現世へ行きたがるのだろうか?


 人間に興味を持っているのかもしれない。

 人間に好意を抱いているのかもしれない。


 だから、光に集まる蛾の如く、俺という地獄でただ1人の人間に向かって集まるのかもしれない。

 何となくそう思った。


 ・・・あれから後、ララに会わせてもらった。

 自分の目で確認しなきゃ、安心出来ないこともある。

 例え、マリアさんがララは無事で安静にしていると言ってもだ。


 そう言って、ララの寝ている部屋まで案内してもらった。

 そこは洞窟を幾らか改装して出来た一種の家のような場所だった。

 元々あった洞窟を、悪魔が住めるレベルまで整えて、家にしてしまったらしい。


 洞窟が家か・・・

 ワイルドな味わいだ。

 いかにもダゴラスさんらしい家だった。


 必要最低限の家具や食料、その他の道具は揃っていて、本当にそのまんま生活出来る立派な家だ。

 中々洞窟で寝泊まりする機会もないだろう。

 フレッシュな気分だ。


 ダゴラスさんは狩人の仕事をしている。

 地獄各地の狩場に、こういった秘密のセーフハウスを建てたりしているんだとか。

 ・・・自分1人で。


 いくら能力を使えるからと言って、1人でここまで作るのはさぞ大変だったろう。

 これも、狩りを円滑に行うための手間だ。

 ダゴラスさんはそう言っていた。

 やはり、ワイルドなお方だった。


 そして、肝心のララ。

 ララは寝ていた。

 安らかに、静かに。


 まるで彫像だ。

 呼吸すらも最小限に抑えることで、体力の回復を図っているかと思うぐらいの彫像っぷりだった。

 とは言え、しっかりと生きているのを確認出来たので安心した。


 ああ・・・空中要塞でララを助けて本当に良かった

 心の底からそう思う。


 俺が目覚めたのは、空中要塞が墜落してから4日後。

 後、もう少しで彼女は目覚めるだろう。

 それまでここで隠れ潜むらしい。


 今いる場所が、洞窟だということは分かる。

 が、外がどこなのかは聞いていなかった。


 人を隠すなら人の中と現世では言ったが、生憎この世界に人間なんて1人もいない。

 だから、逆に誰も来ないような土地・・・雪山へ俺達を隠したらしい。

 しかも、外は絶賛吹雪の真っ最中だ。


 雪山か・・・

 寒さが伝わってこないのは、結界かなんかを張ってるからだろうな。

 マリアさん達なら難なく出来ると思う。


 この雪山・・・名前をウルファンス山脈と言うらしい。

 年がら年中吹雪いていて、その厳しい気候に並みの悪魔では近寄ることも出来ない。

 そんな訳で、普通の動植物はもちろん、原生種の数もかなり少ない。

 だから、ここを療養の場所に選んだんだとか。


 まあ、逆に言えば原生種の数が少ない代わりに、厳しい気候に耐えられる程の強さと適応力を持った魔物がいるということらしい。


 白氷狼(スノーリークウルフ)

 共鳴する響凍者(アイスシャウト)

 白砂に紛れし者(ホワイトサンドバーグ)


 名前から連想出来るとおり、寒さに強そうな、そしてそれを強みにしているような魔物ばかりだ。

 その中で、この厳しい気候・・・猛吹雪を耐えなければいけない。

 よほどのサバイバル術か、能力がなければ自然に殺される。

 それなのに、洞窟にセーフハウスを個人的に作るあたり、ダゴラスさんはやはりすごい。


 そしてもう1つ、この雪山に用事がある。

 雪山の名前・・・ウルファンス。

 このウルファンスとは、悪魔の名前だ。

 今俺達がいる、雪山に住んでいるらしい。


 雪山の1番高い場所。

 山頂にその悪魔がいる。


 どうしてそんな場所に?と思って聞いてみたら、どうやらそいつも悪魔達から離れて暮らす強大な悪魔の1人なのだとか。


 72柱、第11位・・・サフィー・レイジア・ウルファンス。

 白き魔物を従えし、絶対零度の悪魔。

 氷の女王。

 色々異名はあるが、とにかく氷を扱えば地獄で右に出ることはない強大な力を持つ、女悪魔である。


 この雪山は、本来四季に富んだ自然豊かな山脈だった。

 この山が雪に埋もれるようになったのは、ウルファンスが山頂に住み始めてからだ。

 彼女は悪魔を近付けさせないように、結界の代わりに厳しい気候を山全体に作り出し、以来約200年間そこに籠りっきり。


 雪山に住む魔物は殆ど彼女に従っているらしく、ウルファンスに近付く者は容赦しない。

 魔物自体も屈強な部類に入るので、滅多に悪魔はこの山へ入らない。

 入るとしたら、相当実力のある狩人ぐらいのものだった。


 山脈一帯の環境を変える程の力を持つ存在。

 そんな彼女に会いに行く。

 その為に、この山へ俺達を匿った。

 そういうことだった。




 ---




「うおおお・・・さっ・・寒い・・・」


 白い・・・

 周りの景色が何も見えない。

 白一色だ。


 風が吹き付けて、歩き進めようとする俺に対して容赦なく押し返そうと風を押し付ける。

 おまけにあられみたいな雪のせいで、顔面が痛い。

 ピチピチと絶え間なく俺の顔に当たるので、いい加減ストレスが溜まってくる。


 これを着てなかったら、1分でダウンしてただろうな。

 今着ているのは、名無しの森で着ていたものよりも、2倍増しでモコモコ度がアップした防寒着だ。

 ダゴラスさんが渡してくれた。


 曰く、この防寒着も魔具みたいなもので、火の能力がほんの少し付加されているらしい。

 人肌程度の温度しか上昇しない、ちっぽけなものではあるが。

 でも、俺が着ててはそのちっぽけな能力だって発動しない。


 だから魔石を持たされた。

 魔石は貴重だ。

 エネルギーに適性のある成分が含まれた物質は、意外にもこの地獄では少ない。


 魔石は魔具を作る原材料にもなり得るから、必然的に魔具も貴重になる。

 魔物の素材から作られた例外も存在するが、主流なのは魔石からの製造だ。

 魔石自体はエネルギーを溜めれば繰り返し使用出来る優れものだが、絶対数が少ないために大切に扱われる。


 今持っている魔石は、微弱なエネルギーしか溜められないから、戦闘用には流用出来ない。

 でも、日常的なことに使うのなら十分だ。


 その日常でようやく使える程度の魔具ですら、あまり取引されていないのだから、貸してくれたダゴラスさんには感謝だ。


 そんなこんなな話を、深く降り積もる雪を火の能力で溶かして進みながら聞かされた。

 俺の気が紛れるようにと。

 正直気が紛れたかというとそうでもないが、その心使い自体が嬉しい。


 雪の深さは腰の辺りまで。

 普通に進んだら1歩歩くだけでも一苦労だ。

 火の能力がないと、この雪山を渡るのは無理だろう。


 「大丈夫か?」

 「・・・寒いです」

 「悪いが我慢してくれ。ちゃんとその防寒着にエネルギー通してるか?」

 「はい・・・」


 確かにこの魔具は暖かい。

 高性能だ。

 だが、それ以上に周りの環境が寒すぎる。

 北極の雪嵐みたいだ。


 本気で前の景色が見えない。

 目の前でダゴラスさんの放つ火の能力の明かりだけが俺の道標だ。


 ホワイトアウト。

 雪や雲などによって視界が白一色となり、方向とか地形の起伏なんかが識別不能となる現象。

 まさにそれだ。


 どこに何があるかも分からない。

 なのに、ダゴラスさんは迷わず先へ進んでいく。

 しかも一定のペースを保ってだ。

 ここで遭難したら一巻の終わりだ。

 今、ここでダゴラスさんを見失うわけにはいかない。

 だから俺も、なるべくペースは遅くしない。

 凍死なんてしたくもないし。


 「後、どのくらいでウルファンスの城まで着くんですか・・・」

 「もう少しでウルファンスの使い魔がいる領域に入るから・・・もう少しだ。頑張れ」

 「うおお・・・頑張ります・・・」


 ・・・やばいぜ。

 髪の毛とかが凍ってる。

 カチカチだ。

 いくら何でも寒すぎるだろ。


 鼻毛が凍って、息がしにくい。

 かといって、口から息を吸うと口内が冷気で痛くなる。

 ・・・辛い。

 こういうのはジワジワくるな。


 ・・・何で俺、ここでダゴラスさんと歩いてるんだっけ?

 寒さで頭が朦朧としてくる。

 寒い寒いとは聞いてたが、まさかここまでなんて・・・


 俺はボーとしながら、曖昧な意識の中でここまでの経緯を思い出していた。




 ---




 洞窟内。

 俺が寝かされている部屋での、マリアさんとの会話。

 今回雪山へ赴いた目的を聞かされた後のこと。


 「72柱の内、何人かにはもう会ったわね」

 「ええ、まあ」


 面識がある・・・とは言いがたいかもしれない。

 せいぜいが見たことある、みたいな感じだしな。


 「72柱にカウントされるのは強い悪魔だけなんだけど・・・そんなに強い悪魔は珍しいのよ。特に今はね」

 「ってことは、昔はもっといた?」

 「そう。昔はね、もっといたの。本来は72人なんだけど・・・今は23人にまで減っちゃったわ」

 「そんなにですか・・・」


 それはまた随分減ったな。

 何か理由があるんだろうか?


 「その分順位が上がってしまってるの」

 「ララとかはその・・・72柱に入ってるんですか?」

 「いえ、入ってないわ。今の王立騎士団隊長の面子で72柱にカウントされてるのは、第1隊長と第2隊長だけね」


 第2隊長・・・ララから確か聞いたな。

 ヴァネールがそうだったはずだ。

 隊長でもあり、72柱の1人でもある悪魔。

 あれだけ圧倒的な力を持ってるのだから、当然72柱に入っているだろう。

 ・・・入ってなかったら、逆に驚きだ。


 「で、今回会いに行く悪魔がその72柱に入ってるの」

 「ウルファンス・・・ですね」


 ただの山を、年中大雪の降る山に変えた悪魔。

 山一帯の環境を変えるとか、規模大きすぎだろうと思う。


 「・・・何でソイツと会うんですか?」


 会ったら殺されるか、そうじゃなくとも何かされそうで怖い。

 ルールから外れた悪魔は、俺のことを狙ってるんだろ?

 聞いてる限りじゃあ、相当強そうな悪魔っぽいし。


 だって11位だぞ?

 悪魔の中で、11番目に強い悪魔だってことだぞ?

 怖くならない方がどうかしてる。


 「君はこれからそういう孤立した悪魔と会わなきゃいけない機会が多くなると思う。助力を得られなくちゃ、領土を支える魔石・・・大魔石は手に入らない」


 大魔石。

 主要な街を支える巨大な魔石。

 俺が求める物。


 「助力を得られるんですか?・・・その悪魔」

 「今回会う悪魔・・・ウルファンスは私やダゴラスにかなり友好的だから、安心して。きっと助けてくれるわ」


 ソイツと交友関係なんてあったのか。

 やっぱり人脈が広いな、マリアさんは。


 「もし、助けを得られなかったら・・・その時は別の方法を考えましょう」


 マリアさんは厳しそうな顔をする。

 実際問題、ウルファンスを味方につけられなかったら厳しいんだろうな。

 逆に言えば、味方についたらかなり頼もしいと言える。

 なんたって11位なんだから。


 「ウルファンスは独特ではあるけど、攻撃的ではないから大丈夫よ。それにダゴラスだってついて行くし」

 「・・・マリアさんは行かないんですか?」


 心を操るマリアさん。

 マリアさんさえいれば、ウルファンスだって操れるんじゃないのか?

 そしたら簡単じゃないか。


 「行けないのよ。ここの魔物の侵入を防ぐ結界は私しか張れないし。それにララの状態も確認していたいしね」


 ・・・なら無理か。

 俺としてもララは心配だし。


 「それにサフィーも余程の理由がない限り、私に会いたくないと思うし」

 「・・・警戒されてるんですか?」

 「まあ 、ね。」


 心を読ませないし、心を操れる存在。

 言ってしまってはアレだが、悪魔の天敵みたいなものだ。

 そんな彼女に会いたいと思う悪魔は・・・いないだろうなぁ。


 ウルファンスの協力をまず得ること。

 それが俺達のやるべきこと。


 「ウルファンスと交渉するのはダゴラスがやるからいいわ。でも、君もダゴラスと一緒について行って欲しいの」

 「分かりました」

 「・・・君が話の中心だからね。君がいないと話が進まないのよ」


 そうさ。

 俺が原因でマリアさん達にこんなことさせているのだ。

 何も役に立てなくても、同行くらいはしたい。

 必要ならばなおさらだ。


 「いつ、ウルファンスのいる場所まで行くんですか?」

 「君の片腕が最低限動かせるようになるまでよ」


 腕?

 ・・・あっ。


 俺は慌てて自分の左腕を見てみる。

 失った腕を。

 そこには、ちゃんと俺の腕がくっついていた。


 気付かなかった・・・

 なんか違和感があるとは思ってたが・・・


 やばいな。

 自分の腕が生えていることに気付けないとか。


 自分の体よりも、ダゴラスさん達と会えたことが嬉しかったからかもしれない。

 優先順位というやつだろうか?

 目の前のことが嬉しくて、気が付かなかった。

 そう言い訳しておこう。


 「・・・生やしたんですか」


 ダゴラスさんも、斬られた足を生やしてもらっていた。

 それと同じだ。

 俺の腕も生やしたんだ。


 その腕は右腕と比べて細々としていた。

 一回り小さくなって、筋肉があまりない。

 なんか感覚も鈍いし、自分の腕じゃないみたいだ。


 「本当なら療養にダゴラスみたく1ヶ月は休んでいてもらいたいところだけど・・・状況が状況だから、そんなに休んでいられないの。申し訳ないけど」

 「いえ・・・」


 申し訳ないのはこっちの方だ。

 2回も腕なんてつけてもらって・・・


 「君の腕が本当に最低限動かせるまで、多分後2日だと思う。ちゃんと筋肉が回復するまでは1ヶ月かかるんだけど・・・その時には軽い物なら持てると思うわ」

 「あまり動かしすぎたらいけないですよね」

 「多少なら平気だと思うけど、乱暴に扱ったら・・・筋肉に後遺症が残るかも。脅すようで悪いけど」


 後遺症か。

 うまく動かせなくなるんだろうな。

 マヒとかするんだろうか?

 いずれにせよ、厳重注意しなければいけないだろう。


 「ウルファンスには出来るだけ早く会っておきたいの。君を連れてね」

 「早くしないと、何かマズイんですか」

 「・・・君が眠る4日間、どのくらいの魔物が襲ってきたと思う?」

 「・・・」


 その言い方・・・

 多分・・・


 「相当な数・・・攻めてきたんですか」

 「・・・100以上」

 「えっ・・・」

 「100頭以上の魔物がこの4日の間に襲ってきたわ」


 そんなに・・・

 魔物ってそんなに数が多いのか?


 「普通はこんなことは起こらない・・・これは異常事態よ」

 「100頭・・・大丈夫だったんですか」


 今の様子を見ると、しっかりと対処したことは分かる。

 でも、表情は深刻そうな感じ。


 「現れた魔物は色々いるわ。弱い魔物から強い魔物までね。その魔物を倒すこと自体はさして問題じゃないの」

 「じゃあ・・・何が問題なんですか?」

 「魔物は悪魔と違って、どちらかと言うと世界よりの存在。異なる世界から来た異分子の気配に引き寄せられてくるの。結界を張れば、何とか詳細な位置までは掴めなくなるけど・・・それでも大まかな位置まで寄ってくるのは止められない」

 「じゃあ、この近くにも魔物が?」

 「ウロウロしているでしょうね」


 つまり、危険地帯ってことじゃないか。

 ・・・マリアさんがいなかったら、死んでたのだろうか?


 「魔物が寄ってきても、私達なら何とかなる。けど、極端に魔物が集中しすぎなの」

 「何か・・・都合が悪いことがあるんですか」

 「地獄の害獣について、話は聞いてたわよね?一定数の害獣が増えたら駆除されるっていう・・・」

 「聞いてます。狩りの時に教えてもらいました」


 それで俺は悩んでいたからな・・・

 ・・・過去形ではないな。

 今も悩んでいる。

 この地獄にいる限り、それは解消されそうにもない。

 さらに言うと、セスタや大勢の悪魔を殺したことは、一生忘れられない。

 その点においては、きっと一生悩み続けるだろう・・・


 「害獣は魔物も含まれるって言う話は聞いたことある?」

 「それは・・・聞いてなかった・・・ですかね?」

 「じゃあ、教えるわ。魔物も数が増えすぎると討伐されるの」

 「あれ?でも、魔物は普段単独で行動してるって・・・」


 そう聞いた覚えがある。

 能力を持っているのなら、戦闘力だって普通の生き物の比ではないだろう。

 群れる必要がないのだ。


 普通の生き物相手なら、天敵なんていないに違いない。

 十分な捕食対象がいるのに、魔物をわざわざ捕食しようとするのは考えにくい・・・と個人的には思う。

 俺は魔物について、あまり知識はない。

 せいぜい能力を使える生物ってだけだ。

 魔物の習性なんかは知らない。


 で、そう考えている間に気が付いた。

 今は異常事態だったな・・・

 俺のせいで。


 「魔物は普通、群れはしない。魔物を討伐する機会なんて、本来ならそんなにないの。街の方に魔物が襲撃してこない限りはね」

 「・・・はい」

 「けど、今は君がいるじゃない?」

 「俺で引き寄せられてるってことですよね」

 「そうね・・・そして、魔物が異常に密集していれば、気配察知に特化した悪魔が嫌でも気付く。普通なら、討伐隊が組まれるところだけど、今は違うでしょうね」

 「魔物が密集している場所であれば・・・そこに俺がいると思うでしょうね。きっと」


 俺は魔物を引き寄せる。

 さっきマリアさんの言った話を聞く限り、魔物が俺の近くまで寄ってくるのは止められない。

 結果的に魔物は多くその地域に集まる。

 そして、今は俺・・・人間が逃走中。

 魔物がそこに集まる理由が何かを考えれば、自然と答えは出るだろう。


 「多分、そう遠くないうちに悪魔がこの山にくると思う。強い悪魔がね」

 「・・・だから早くってことですか」

 「そう。誰しも数の力には勝てないもの。いくら個人が強力でもね」


 ・・・俺は数の暴力を知っている。

 ラース街の逃走。

 もう経験したくないことではあるが・・・


 「・・・分かりました」


 ・・・俺の前進すべき時が、すぐそこまで迫っていた。



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