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この世界でただ1人の人間の戦い  作者: 冒険好きな靴
第4章 地獄篇 空中要塞アネンヴァング
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72話 殺戮の夜7~夜の雲海の上で~

 耳のすぐ近くで轟音が鳴る。

 何故か?

 今現在、空中にいるからだ。

 そして今も下へ落ちている。


 「うおああああ!!!」


 落ちる!

 落ちる落ちる落ちる!


 どうする!

 ・・・どうしようもない!

 だって掴むものも何もないのだから。

 足場も何もない。

 落ちる意外、俺にはどうしようもない。


 以前、赤い海にダイブしたことがフラッシュバックする。

 あの時は海があったから助かった。

 今は果てしなく広がっている雲海が見えるのみだ。

 下に何があるかは分からない。

 だから、助かるかどうかも分からない。


 だが、こういう時こそ落ち着かなくちゃならない。

 だてに何回か死線を潜り抜けてきた訳じゃない。

 落ち着け。


 俺は心臓の鼓動を落ち着かせるように、呼吸を整える。

 空気が勢いよく当たって呼吸しずらいが、何とか我慢してコンディションを整える。


 まあ、これ以上どうしようもないんだが。

 空中でどうしろと?

 手足をバタつかせればいいのか?

 そんなので今の現状が変わるとは思えない。

 変わるとすれば、俺と一緒に落ちてきた数人の悪魔達次第だろう。


 ララ、魔王、空駆ける聖馬(ユニコーン)、ルフェシヲラ。

 合計3人と1頭が、俺と一緒に落下していた。


 魔王とルフェシヲラは気絶していた。

 ルフェシヲラが気絶しているので、床代わりに結界を張ることも出来ない。

 ユニコーンは落下している魔王を回収しようと、全速力で魔王を追いかけていた。

 銀騎士は液体金属を空中要塞に刺して、難を逃れていたのだ。


 「・・・カカカ」


 銀騎士は俺を補足すると、液体金属を触手のように伸ばしてきた。

 狙いは・・・俺だ。

 俺に向かって触手が何本も向かってくる。


 「くっそ・・・」


 俺を捕まえる気だな。

 ・・・このまま掴まってやってもいい。

 落下死するよりは大分マシな選択だからな。

 だが、その前にやってみたいことが俺の頭に浮かぶ。


 俺の目の前に、魔剣・・・縛牢残滅がクルクルと回転しながら落ちてきていた。

 魔王が気絶した時に手放したんだろう。

 手を伸ばせば、何とか届く距離にその魔剣はあった。

 俺は必死に手を伸ばす。

 それをさせまいと、触手が俺に迫る。

 触手が俺を捕まえるまで、あと数秒・・・


 「届け!!」


 ガシッと右手に感触が伝わる。


 「よし!」


 俺はしっかりと魔剣を握って、すぐ傍まで接近していた触手を斬りつけていく。

 たちまち触手達は消滅していく。

 やっとこさ魔剣を手に入れた。


 ・・・脱出方法は転移だろうと俺は最初に考えた。

 ポポロは物資補給庫にそれがあるとも。

 だが、よくよく考えてみればもう1つあるじゃないか。


 ・・・俺は思い出していた。

 魔剣で何が出来るのかを。

 ドレイン以外にも付加されているこの魔剣の能力。

 魔剣の転移だ。


 転移にはエネルギーがいる。

 それも莫大なエネルギーが。

 このままでは、この魔剣の転移は使えない。


 じゃあ、このまま落ちていくだけか?

 そのまま触手に捕まえてもらった方がよかったか?

 ・・・違う。


 多分、魔石はある。

 どこにあるか見当は付いている。


 俺は目線をある者に向ける。

 魔王だ。

 たった今、俺と一緒に落下している魔王。


 あいつは銀騎士との戦いで魔石を使っていた。

 戦闘に使うと見越して、予め持っていたんだろう。

 魔石は1つだけしか持ってなかったのか?


 俺の予想は違う。

 魔王は他にも魔石を持っている。

 予備用にもう1つ持っていると考えるのが普通だ。

 ・・・そうであって欲しい。

 と言うか、銀騎士の触手を払った時点でその方法しか生き延びる手段がないし・・・


 そして、その前にやるべきもう1つのこと。

 ララの回収だ。


 アイツを助けなきゃ、俺がここまで苦労した意味がない。

 最初の助けを無視して、ここまで遠回りした意味がなくなるのだ。

 ・・・絶対助ける。


 俺の左腕は切り落とされてなくなっている。

 片腕しか使えない。

 だから、魔剣は口にくわえる。

 幸いララは、俺から遠く離れないで落ちていた。

 腕を伸ばせばすぐ届く距離だ。


 こんな状況になっても、彼女は一向に目覚めない。

 ・・・仕方ない。

 俺を守ってこうなったんだから。


 彼女の肩を無理矢理掴む。

 空中なので、彼女を引き寄せるのはさほど苦労しない。

 体重が無に等しいからだ。


 俺はうまく片腕を使って引き寄せて、腕を組む。

 もう2度と離さないようにしっかりとだ。


 俺は地獄に初めて来た時のことをイメージする。

 空中での移動はどうやった?


 空中だから、そんなに移動は出来ないだろう。

 だが、魔王の元へ行くことぐらいは出来る。

 そのくらいの距離なら、邪魔がはいらない限り大丈夫だ。


 体を大きく広げたり、小さくしたりして空気抵抗の度合いを変えていく。

 空気が顔にそのままぶつかって痛い。

 目をつぶりそうになる。

 しかし、ここで目を閉じたら魔王が見えなくなる。

 それは避けたい。


 俺は体の感覚を鋭敏にして、魔王に出来るだけ早く接近していく。

 俺の周りには落下スピードを比較する物が何もないから、自分が落ちている感覚は殆どない。

 空中に浮いたような感じだ。

 その感覚を体で大きく受け止める。

 それが俺のイメージするべきこと。


 足を広げて、鳥のように。

 自分は飛べると思え。

 その思い込みが、俺を1秒でも長く浮かせる。


 出来るかどうかはこの際関係ない。

 思い込まなきゃ死ぬだけだ。


 「カッカカ・・・」


 空気がぶち当たる轟音の中で、異質な音がかすかに聞こえてくる。

 1発で分かる。

 銀騎士だ。


 銀騎士の方向を見てみると、自身と空中要塞に留めていた液体金属を離し、空中へと落下していた。

 再度触手を無数に伸ばして、攻撃を仕掛けている。

 今度は俺ではなく、空駆ける聖馬(ユニコーン)にだ。

 空中に落ちていても、まだ戦いは続いていたのだ。


 空駆ける聖馬(ユニコーン)は主を守るために。

 銀騎士は恐らく、戦いたいがために。


 空中戦だ。

 聖馬は華麗な動きで触手を掻い潜っていく。


 うまい動きだ。

 並みの魔物では、きっとああはいかないだろう。


 知能の低い野生の生き物は、殆ど本能で攻撃をかわす。

 だが、それじゃあ当然かわせない攻撃も出てくる。

 頭を使わなきゃかわせない状況というのはどうしても出てくるものだ。

 そこが、知能の高い生物と知能の低い生物の壁だ。


 魔物はどう見たって、本能に支配されているように見える。

 相手が格上だろうと、猪突猛進するのがいい証拠だ。


 ユニコーンは違った。

 周囲からの攻撃を、4本の足や長い首、背中までも細かに注意して避けているのが分かる。

 自身の体がどういう構造をしていて、どういう動きならあの攻撃をかわせるかをしっかりと理解している動きだ。

 

 背後に第2の目があるみたいに、感知能力にも優れている。

 四方からの同時攻撃も難なくかわしていく。

 もちろん、かわしている間にも不可視の能力を使って触手を攻撃している。


 その攻撃は通っているのだが、聖馬は主である魔王には近付けなかった。

 触手の数が激増していた。


 かつて名無しの森で、ダゴラスさんに闇の器の捕食者(ブラックイーター)が無数の腕を伸ばしてきて攻撃したことがあった。

 その数は100本ぐらいだと俺は記憶しているが、銀騎士の触手はそれ以上だ。

 1000本は越えている。

 分裂しすぎて、糸のようにも見える。

 その全てを、聖馬に向けて攻撃に使っていた。


 液体金属は液体状なのに硬いし重い。

 それを自由自在にあんな数で攻められたら、普通は対処出来ない。

 魔王を救おうとしてなら、まず接近は出来ない。

 なら、銀騎士を倒すしかない。

 そう思ってか、ユニコーンは銀騎士と戦い始める。


 「・・・すげえな」


 攻撃をしている銀騎士は単体だが、余りに触手が多いので乱戦に近い状態だ。

 そんな中、聖馬の挙動には全くと言っていい程乱れがない。

 魔剣で感覚が鋭敏化している俺でも、絶対にあんな動きは出来ない。

 野生のセンスを理性でコントロールすると、あんな感じになるんだろう。

 その動きは野生的でありながら、どこか人間のような知性的な印象を持たせる部分がある。

 ユニコーンと銀騎士バルバトスは戦いに夢中だった。


 ・・・チャンスだ。

 両者の戦いの場はどんどん魔王から離れていっている。


 聖馬が魔王に接近出来ないなら、当然俺も接近出来ない。

 が、銀騎士の妨害がない今なら行ける。

 やってみせるさ。


 「ガアアアアアアアァァァ!!!」

 「うおわ!!」


 急にでかい叫び声が聞こえて、熱風が俺の近くで巻き起こった。

 何だ?

 いきなり。


 見てみると、空中要塞の方向から落ちてくる影が2つある。

 ヴァネールと襲撃者の女悪魔だ。

 2人が一気に下目掛けて落ちてきた。

 その目線を見ると、目的は俺のようだった。


 またあの炎に襲われるのかよ。

 勘弁してくれ。

 今、逃げ場なんてないのに。


 ヴァネールが炎の龍を顕現し、俺に襲わせようとしている。

 うわ・・・絶対当たる。

 ヴェネールの炎はどのくらい広がるか知っている。

 それは空中だろうと何だろうと関係ない。

 全部燃やすのだから。


 「行って!」


 それをさせまいと、女悪魔は黒い巨大なドラゴンに指示を出す。

 多分、助け舟だ。

 炎に対して炎が効くのかは分からない。

 が、ヴェネールはその攻撃に対して防ごうと、より大きい炎の壁を作る。

 見事に炎の壁に黒炎が衝突して、互いに互いを燃やしていた。

 熱の波紋が空気を伝って、俺まで届いてくる。


 「あっちい・・・」


 熱が半端じゃない。

 ブワッと汗が出てくる。

 実際に熱いのと、恐怖心のためだ。

 巨大な存在が近くで戦っている・・・

 プレッシャーがでかすぎる。


 どうやら、両者は拮抗しているようだった。

 ヴァネールは行きたくても行けず、といった感じだ。

 いいぞ。

 そのまま頑張ってろ、襲撃者。


 「まだいるのか・・・」


 そして、その巨大な存在の隙間を縫うようにして、こちらにくる影が3人。

 ロンポット、エイシャ、召喚王だ。


 ロンポットが岩を作って足場にし、それをエイシャが重力を使って浮かしている。

 手馴れた連携って感じだ。

 エイシャが操作している足場をうまく乗りこなしている。


 「制約練成ハンドメイドストーンズ・黒曜岩!!」


 能力を唱えながら、黒く綺麗に反射する大きな岩を作り出しているのは、ロンポットだ。

 前にも見ている能力だが、作り出した岩だけが違う。


 「割れろォ!!」


 そう言って、黒い岩にハンマーを叩きつける。

 すると、たちまち黒い岩はガラスのように割れて、細かい破片になる。

 1つ1つが鋭くて、小さな針の弾丸みたいだ。

 ・・・あれに当たったら、全身血だらけになるだろう。

 てか本気で俺を殺す気か、ロンポット・・・


 「推進する重力(グラビトン・ストラ)!」


 それに加速をつけるように、重力の能力を行使するもう1人の悪魔、エイシャ。

 牢屋を挟んで話したような、普通の雰囲気ではない。

 歴戦の戦士の顔だ。

 殺す気の顔。

 殺気を重力に乗せて、俺に攻撃を仕掛けてくる。


 「クッソ・・・」


 口にくわえている魔剣に意識を集中させる・・・が、魔剣を持っているとは言っても、あれだけの細かい破片は打ち消しきれない。

 体のどこかが絶対に刺さってしまう。

 防ぎようがない。


 「フンッ!」


 召喚王の杖からすさまじい赤い光が発せられる。

 赤い光といえば、もう決まっている。

 召喚光だ。

 あれだけ召喚しても、まだ召喚出来るらしい。

 流石にララが強大な悪魔だと言っていたことだけはある。


 しかも、その召喚スピードは異常な程速い。

 速攻の召喚だ。

 パパパパパッと連続して光が明滅する。

 そこから現れたのは、黒龍(ブラックドラゴン)を召喚する時に3つの召喚魔石を持っていた、黒いカラスのような鳥だった。


 強そうな雰囲気はまるでない、普通の鳥だ。

 攻撃を防ぐ手段にはなりえない・・・と思ったのだが、それらが大量に、本当に大量に召喚されていく。

 赤い光が周りに連続して発生しているので、周囲が真っ赤に染まる。


 その大量の鳥達は、ロンポット達の攻撃と俺とを挟むような形で召喚された。

 召喚しすぎているせいで、鳥達が黒い何かの集合体のように見える。

 バッサバッサと羽音がうるさい。

 その鳥達は、密集して大きな壁のような形に素早く整列していく。

 空中要塞内で、魔物を制御出来ない様子は何だったのかと思わせる連携ぶりだ。


 ザザザザザッと鳥達に黒い破片が突き刺さっていく。

 これもまた、大量に鳥達が雲海へ落ちていく。

 ・・・黒い滝でも見ているような気分だ。


 後続して、赤い光は黒い鳥を召喚し続ける。

 ・・・もう無茶苦茶だ。


 上空は炎が凄まじいことになり、時折液体金属とカマイタチのような衝撃波がぶつかって響く。

 そして、下ではカラスが続々と死にながらも、ロンポット達を数の力で徐々に追い込んでいく。


 ・・・ギリギリだ。

 いつ流れ弾が来てもおかしくない。

 不意に攻撃がこられても、空中で、両腕を使えない状態で対処は難しい。

 一刻も速く魔王の元へ行かないと。


 俺は精一杯体を伸ばして、空気抵抗を作り魔王に接近していく。

 後、少し・・・


 「行かせるなぁ!!!!」


 燃えるような怒号が聞こえた。

 ヴァネールが叫んでいる。

 ・・・初めて叫んでいる声を聞いた。

 きっとあせってる。

 脱出されるとあせってるのだ。


 「ぐっ・・・」


 ロンポット達は黒いカラスの対処に全力を傾けていた。

 全力を傾けないと、肉をついばまれてしまうからだ。

 サポートのエイシャは目を閉じて、重力の力を行使しながらそこを動かないでいる。

 ・・・何をしている?

 あの目を閉じるような場面、どこかで見たような・・・


 いや、それもどうでもいい。

 もうここしかない。

 俺が脱出出来る場面はもうここしかない!


 「うおおおおおおらあああああ!!!」


 気合を入れて、魔王を両足でキャッチした。

 腕が使えないんだからしょうがない。

 魔王相手に恐れ多いが、緊急時だ。

 遠慮なくいかせてもらう。

 魔王の体を片足で固定して・・・


 「だらあ!!!」


 もう片方の足で、ダイナミックに背中の方から蹴りつけた。

 魔王の体が軽く曲がり、マントに衝撃が伝わっていく。

 そして・・・


 「・・・あった!!」


 マントからポロッと出た物。

 目的の魔石だ。


 やっぱりあった。

 予備用を持っている予想は正解だったみたいだ。


 俺は空中に浮かぶ小さな魔石を、口に加えている魔剣を腰のズボンに刺して、口でくわえる。

 口の中から感じられる、魔石に込められたエネルギー。

 それを全て、口から魔剣へパイプで流し込むイメージをする。


 「よっし!」


 エネルギーの装填が終わる。

 ようやくか・・・


 口から用済みの魔石を吐き出して、魔剣を口にくわえ直す。

 これで準備は整った。

 後は・・・


 何だっけ?

 肝心のところでボケをかます俺だった・・・


 「じゃなくて!!」


 こんな状況で忘れるとか!

 ありえない!

 思い出せ・・・思い出せ!!


 必死に念じる。

 冗談じゃない。

 こんなんで死んでたまるかよ。


 「・・・あっ」


 思い出した。

 召喚王が俺を転移で送ろうとしたんだった。

 俺は魔石で魔剣にエネルギーを入れただけで、何もしていない。


 つまり・・・

 転移の仕方が分からない!


 どっ・・・どうするんだよ。

 まずい。

 何もやり方を知らない。


 ダゴラスさん達からは、そもそも俺が能力を使えないと言う理由で、能力の使い方なんて話題にはのぼっていない。

 ああ・・・こんなことなら聞いとくべきだった。

 今更後悔しても遅い。


 「ガアアアアアアアァァァ!!!」


 龍が叫んでいる。

 ゴゴゴと空気が振動している。

 紅蓮の炎で出来た巨大な龍が、巨大隕石の如く俺に向かって落ちてきていた。


 「審判の火」


 隕石の熱気が波紋の形になって、黒いカラス達を燃やしていく。

 しわがれた声を出して、燃え尽きていく。

 喉も一瞬で焼かれているんだろう。

 ゾンビみたいな声だ。


 ロンポットとエイシャは退避していた。

 今分かった。

 エイシャが目を閉じていたのはテレパシーだ。

 ヴァネールが攻撃してくるタイミングをやり取りしてたんだ。


 分かってももう遅い。

 巨大な炎の隕石みたいな龍は、俺を食べようと口を開いて落ちてくる。

 ・・・食べられる。


 召喚王はどうした?

 周りを探してみる。


 「・・・いた」


 見つけた。

 彼は転移で、ヴァネールの攻撃範囲の外へと移動していた。

 ある程度離れた向こうで、赤い光から彼が出てくるのが見えた。

 ・・・やっぱ自分の命は惜しいよな。


 こんなんじゃあ、落下死の方がまだマシだ。

 いっそ燃やされる前に、魔剣で自分の命を絶つか?

 そう思いながら、口にくわえていた魔剣を目を動かして見る。


 ・・・魔剣。

 ふと、頭をよぎる。

 映像が。

 俺の記憶が。


 そして感じる。

 例の魔剣の意思が流れるのを。

 俺の危機感に呼応して、流れてくる。

 魔剣は言っている


 自分がここで消滅されることを望んでいない。

 そして、流れてきた映像・・・


 魔剣の刀身が赤く光る。

 ラース街から逃亡した時と同じだ。

 あの感じが体を巡っていく。


 炎の龍は、もう目の前まで迫っていた。

 俺の体は光に置き換わっていく。

 炎の赤色と、転移の赤色が俺の視界をいっぱいに埋め尽くす直前。


 目覚めたルフェシヲラが、大声で俺達がラース街を転移で脱出する時のように、大声で何か言ったのを俺は見逃さなかった。

 


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