↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世界でただ1人の人間の戦い  作者: 冒険好きな靴
第3章 地獄篇 ラース領ラース街
53/244

53話 2人の逃亡

 「右から炎が来る!」


 そんな言葉を俺は叫ぶ。

 俺達に迫る炎の龍に向かって。


 ララは素早く炎の龍を目視して、走りながら回避する。

 その身のこなしは、流石隊長と言ったところだ。


 さらに、四方八方から大量の火の玉が襲ってくる。

 1発1発は大したことがなさそうだが、あれが俺に1発でも当たるとデットエンドだ。

 何1つ油断出来やしない。


 ララはさらに加速して、火の玉が着弾する前にさらにその先へ行く。

 並みの悪魔では、捕捉もままならないだろう。

 だが、そんなララでもこの無数の攻撃には対処出来ない。

 火の玉ならまだ別だが、炎の龍が厄介すぎる。

 まるで、本当の生き物みたいに動いてるし。


 ララがかわしきれない攻撃。

 そんな攻撃が来る時は、俺の出番だ。


 俺は片手に握っていた魔剣を、迫っていた龍に向かって構える。

 ララ曰く、あの龍に向かって真正面からガードはしない方がいいらしい。

 持っていた魔剣を斜めに構えて、龍の攻撃のタイミングを見計らう。


 龍と緑色の刀身が接触した瞬間、ギャリギャリギャリと異質な音が鳴り出す。

 魔剣は能力を最大限に発揮していた。

 なのに、炎の龍は消失しない。

 明らかに異常だった。


 確かに、龍は魔剣に触れた端からどんどん消失していた。

 いたが、奥の方からは炎が永続的に溢れ出してきている。

 こっちのドレイン以上に、炎の生成が早いのだ。

 それに、どんどん龍を削り取っていくペースが落ちている。

 エネルギーが強すぎる。

 この魔剣のおかげで、衝撃はないも同然だが、流石にずっと受け止められている程、今の俺は炎に強くない。

 予め斜めに構えていた魔剣を、外側に力が流れるようにして腕を振る。

 すると、意外と簡単に龍は魔剣に受け流されてくれた。


 「その調子です!今持っている魔剣なら、龍も簡単には攻撃を仕掛けられないでしょう!」

 「ああ!」


 俺はララに対して大声で返事をする。

 何故、大声なのかと言うと、そうでもしないと聞こえないからだ。

 風の音や、爆発音のせいで。


 俺は今、ララに背負ってもらっていた。

 いわゆるおんぶってやつだ。

 森で、魔物に追われている時にダゴラスさんにしてもらったこと。


 ララが移動役。

 俺が防御役。

 ララが俺を背負いながら走りに全力を尽くし、ある程度攻撃をかわしていく。

 俺がララの走りを、著しく遅くさせるような攻撃を防御する。


 ダゴラスさんに背負ってもらっていた時は無力な俺だったが、今は大丈夫だ。

 俺ならやれる。


 悪魔達は、連携が取れた攻撃を俺達に仕掛けてきた。

 火の玉の雨や、氷の玉。

 土の壁による走行の邪魔。

 突風を使った体勢を崩す妨害。


 それらを殆どララはかわしてみせる。

 攻撃の雨をかわし、壁を越え、風を突破する。

 俺を背負いながら。

 まさに超人だ。

 ありえないぐらい、ララは強い。


 俺は頭の片隅でそんなことを考えていた。




 ---




 炎に囲まれた砦の脱出直前。

 どのように脱出するか、俺とララは話し合っていた。


 俺は、魔剣による身体能力アップのことをララに話した。

 いくらか手助けが出来ることを伝えたくて。

 まあ、そんなに事細かくではないが。

 性格が安定しなかったりすることについては伏せた。

 とりあえず時間がないから、身体能力がありえないぐらい上がることだけを伝えたのだ。


 一通りの説明を終えた俺は、ララの表情を見てみる。

 不可解だと言いたげな様子だった。


 「この魔剣からは、能力付加の雰囲気は伝わってこないのですが・・・」

 「雰囲気?」

 「ええ。大体どの魔具に、何の能力が付加されているかは触れた時の感覚で分かるんです」


 へえ。

 感覚で能力が分かるのか。

 便利なものだ。

 俺が初めて縛牢斬滅を触った時は、能力なんて分からなかったのに。


 ・・・いや。

 よくよく考えてみれば、俺だって魔剣の能力をちゃんと理解して使ってたじゃないか。

 誰からもドレインの能力があることを教えてもらってなかったのに。

 俺がこの魔剣の能力を知ったのは、いつだったか?

 よく思い出せない。


 「・・・その点についてはまた、この危機を脱してからにしましょうか」


 ・・・そうだな。

 今の優先事項は、脱出することだ。

 その話し合い。

 俺がどうしてそんなことが出来るのかは後回しだ。


 「確かセムトラが使っていた足の強化に、貴方はついて来れたんでしたね?」

 「一応、魔剣を持っている時はそうだった。でも、かなりギリギリだったな」


 あの状態で風を使っていたものだから、スピードでは確実に負けてたな。

 横に転がっている風使いを見ながら、俺は思い出す。


 風使いやその他の悪魔達は、縄で縛って普通の結界に閉じ込めてある。

 目が覚めて攻撃される可能性があったのはもちろんだが、1番はコイツらの命のためだ。

 せっかく生かしておいても、周りを取り囲んでいる火で燃えてしまったら、全部無意味になってしまう。

 その火から結界が彼らを守ってくれるだろう。


 それにしても、風使いを含めた悪魔5人がこの砦内にいたことは、敵側も分かっていたはずだ。

 だが、こうして建物に火をつける。

 つまり、ここでこうして結界に閉じ込めてやらなければ、風使いたちは死んでいたことになる。


 まあ・・・コイツらは見捨てられたってことだな。

 ちょっと判断が冷酷すぎる気がしないでもない。

 俺を攻撃してきた悪魔達ではあるが、同情の余地がないでもない。


 「ギリギリですか・・・そのぐらいの速さでしたら、私の方が数段速いでしょう」

 「・・・そうだろうな」


 ララの転移回廊の時の素早さには驚かされたし。

 しかも、能力を使っているような素振りはなかった。

 加えて身体干渉系能力を使うのだったら、相当な速度で移動が出来るだろう。


 「今はまだ、敵方は様子を伺っていますが、一旦この砦を出てしまえば悪魔総出で攻撃を仕掛けてくるでしょう。そうなれば、貴方の走力では不安が残ります」

 「なら、どうすればいいんだ?」

 「私が背負います」

 「・・・は?」


 今ララは何て言った?

 俺は顔を歪ませる。


 「・・・何て言った?」

 「ですから、私が貴方を背負います」

 「本気か?」


 だって・・・ほら。

 お前、俺より小さいんだぞ?

 ちゃんと持てるのか?


 「何を心配しているのですか?」

 「だってお前・・・体小さいじゃないか」

 「貴方は私が転移回廊で突貫者(ビックホーン)を弾き飛ばした所を見なかったのですか?」

 「・・・見たな」


 そうだった。

 ついついララが素早いことばかりを考えてしまっていたが、コイツは超の付く程怪力だったんだ。

 あの巨大な魔物を剣1本で弾いたんだっけか。


 「・・・思い出した。それなら俺を背負っても問題ないのか」

 「そうです。そして私は、出来るだけ走りに集中したい。故に貴方を守っている余裕はあまり無いのです。ですから、ここは役割分担をしましょう」

 「どんな?」

 「私が貴方を背負って移動する役。その方が貴方にいちいち方向を伝えなくてもいいので、時間短縮に繋がります」


 確かにな。

 それに、バラバラで行動してお互いの行方が分からなくなる事態は、なるべく避けたい。

 俺には道案内が必要なんだ。


 「・・・なるほど。で、俺は・・・何をすればいいんだ?」

 「貴方は私を守ってください」

 「守るって・・・背負われながらか?」


 そんな器用なことを、俺が出来るのか?

 でも、魔剣を持った時の訳分からん俺の状態なら出来るかもしれない。

 ・・・いや、出来るだろう。

 やってみる価値は大いにある。


 しかし、あの俺の豹変ぶりをまた再現出来るのか?

 最初、魔剣を持った時は何も変化しなかったし。


 「恐らく、最初の攻撃は一斉に来るでしょうから、最初が肝心です」

 「最初・・・ね」


 プレッシャーがかかってくる。

 命を懸けることにはまだ慣れない。

 魔剣を持ってる時だけは、あんなに自信たっぷりなのにな。


 「・・・時間はもうないみたいですね」


 周りを見ると、火がたいそう酷いことになっていた。

 砦は石作りのはずなのに、何故か火が燃えている。

 ・・・石が燃えていたのだ。

 これが悪魔の火だからなのか、何か別の理由があるからなのかは分からない。

 だが、この火が尋常じゃないことくらいは俺でも分かる。


 「さあ、もう行きましょう」


 そう言って、ララは俺に背を向ける。

 その背は、超人的な動きが出来るとは到底思えない程に小さい。

 コイツの背におぶさるのか・・・


 「乗ってください」

 「ああ」


 俺はララの背中に乗っかるようにしてしがみつく。

 よくよく考えてみれば、これは女子中学生が成人男性をおんぶしているようなものだ。

 ララの体が小さいせいで、俺の姿勢が不恰好に見える。


 「魔剣を渡しておきます。私が攻撃をかわせないと感じたら、それで迎撃してください」

「分かった。俺がディフェンスってことでいいんだろ?」

「ええ。防御は全部任せます。あなたが頼りです」


 そんな風に言われると、嬉しくもあるがプレッシャーを感じてしまう。

 まあ、やるだけやってはみるが。


 ララは後ろに手を回して魔剣を俺に渡す。

 その魔剣は、初めて持った時のようにズッシリと重かった。

 悪魔と戦っていた時は、あれだけ軽かったのに。


 「ここまで貴方は悪魔を退けたんです。私に実力を見せてください」

 「・・・」


 だからそんなこと言われたらプレッシャーになるっつの。

 お前は俺に失敗して欲しいのか?


 「まあ、出来るだけな」

 「お互い、出来ることを全力でやりましょう」


 後ろで爆発が起こる。

 何かに引火したんだろう。

 もうここにいるのも限界だ。

 ・・・考えても仕方ない。


 「行こう!!」


 そうして俺達は修羅場へと身を投げ出した。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。