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この世界でただ1人の人間の戦い  作者: 冒険好きな靴
第9.5章 父祖の辺獄と地獄篇 プライド領プライド塔
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134話 武器庫にて

 結界を解除してもらった後、俺達は移動した。


 プラムはいつもどおり俺の肩へ。

 そっちの方が落ち着くらしい。

 ちなみに、シトネは隅っこでいじけていた。

 どうもプラムにめっぽう弱いらしいなぁ・・・

 俺も苦手な部分はあるけれども。


 トコトコ歩いて数秒。

 目の前には、白い壁があった。


 「確か・・・」

 「隠し扉があった場所よ。前に見たでしょ?」


 ・・・見たな。

 あれだ・・・サタンとルシファーが一緒に出てきた場所。


 「まずはそこへ」


 ルシファーが、本棚に置いてある1つの本を手に取る。

 そうすると、本棚が奥の方向へ勝手に開いた。


 「グリードにも同じ物があったよ」

 「魔王の居城、どこにでもこういう隠し扉はあるわ」

 「へぇ・・・」

 「問題はその先にある物よ」


 俺達はその先へ進んでいく。

 そこにあったのは・・・


 「武器・・・」


 そう。

 また武器だ。

 グリード城と同じ。


 その数は軍隊が作れるぐらい大量にある。

 様々な兵器・・・主にあるのは銃だが、ロケットランチャーや手榴弾も置いてある。


 「ねぇ」


 プラムが俺の耳元で囁くように言ってくる。

 誘惑の声色。

 一瞬、彼女が俺のことを愛していると言っていたことを思い出す。


 「どうしてここに銃があると思う?」

 「・・・必要だから?」

 「誰が、何のために?」


 誰が?

 それは魔王?

 その手下達?


 眼前にある兵器の数から言って、大勢の奴らが使うんだろう。

 だが、目的は分からない。


 地獄を統べるのであれば、72柱でも十分に縛りは効く。

 ヴァネールなんかがそうだ。

 だが、それ以外の戦力で多領土に力を離したいと思うなら・・・


 いや、それでも領土同士は共存関係にあるはずだ。

 敵対する意味が分からない。


 じゃあ、俺を倒すために?

 わざわざ現世の武器を使って?

 元々72柱という強力な駒があるのに?


 「・・・分からないよ」


 そう聞いて、プラムがクスクス笑う。

 プラムの奴、全部分かってやがるな。


 「もったいぶんないで教えてくれよ」

 「ごめんなさい、貴方の反応を少し見ていたくて」


 俺の困った顔を?

 趣味が悪いぞ。

 俺の顔を見た彼女は満足したように、俺の耳元で話し始める。


 「この複数の武器は、ある72柱の悪魔が複製(トレース)という固有能力を使用することで作られたわ」

 「誰なんだ?」

 「72柱第21位、アンデール・オリオット」


 オセがプラムの代わりに答えた。


 「あたしより順位が1つ下の悪魔よ」

 「・・・ソイツも強いんだろうな」

 「そこらの悪魔よりはね」


 72柱だもんな・・・

 強くて当然の存在なのだ。


 「ラースの魔王サタンと、エンヴィーの魔王レヴィアタンが断罪者を使って、無理矢理強制して作らせてんの」

 「なんの為にさ?」

 「新しく作る世界の為に」


 新しい世界って・・・


 「あたしも魔王に成りすましてから知ったけど、年に1回だけ魔王が極秘で集まる集会みたいのがあんのよ」

 「で、お前が参加した?」

 「猫ちゃんも隠れてね」


 2人で行ったのか。

 確かに、プラムは気配断ちの能力を行使出来るから気付かれずに潜入出来る。

 俺がいない分、さぞや楽に忍び込めただろう。


 「そこから聞いた話、ラースの魔王がトンデモナイことを企んでたのよ」

 「それは?」

 「世界征服」

 「・・・は?」


 なんだ?その悪の親玉みたいな発想。


 「言っておくけど、この地獄ではないわよ?」


 プラムが注釈を加える。


 「じゃあどこさ?」

 「貴方の世界・・・現世」

 「・・・まじか」


 そんなこと、出来るのか?

 俺が現世へ行くために、どれだけの代償を払ってると思ってるんだ?


 「世界を渡るための大魔石がないだろ」

 「だから貴方を今、血眼になって探しているのよ」

 「じゃあ、相手も大魔石を集めてるってことか?」

 「そうね、そうなるわね」


 そうなのか・・・


 「で、なんで銃なんか作ってるんだよ」


 銃自体はどうやって作られているか大体想像がつく。

 魔王サタンの能力は世界を渡る能力だ。

 運命干渉系能力。

 魂だけを世界に飛ばして、現世へ渡る術。


 本来の使い方は、現世へ流れてきた魔物を処理するために使われたらしいが・・・

 使い方はそれだけに止まらないだろう。

 現世へ直接干渉しなくたって、知識を得てくることは出来る。

 俺が殺したセスタの忍者コスチューム然り、ルフェシヲラのスーツ然り。

 恐らく、同じようなものだ。


 「それが世界征服のため」

 「現世の兵器を使ってか?」

 「そう。能力で確かに戦闘を行うことは出来る。けど、現世を見てきて学んだのでしょうね。能力だけでは勝てないと」

 「だから・・・なのか?」


 それでも、まだ分からないことはある。


 「なんの為に現世へケンカしに行くんだよ?」

 「・・・表向きには、この無茶苦茶になった地獄から新たな安住の地を悪魔達に提供するため、と言ってたわね」

 「つまり、俺が原因かよ」

 「魔王は地獄のバランスが崩れたのを人間のせいにしてるけど、私の推測は違うわよ?」


 じゃあ、何だってんだよ・・・

 散々悪魔達にお前が悪いって言われてきたんだぜ?俺は。


 「貴方が地獄に来なくても、いずれは72柱が暴走を起こして、戦争状態にまで発展してたと思うのよ」

 「へぇ、面白い推測ね」


 オセが興味深くプラムを見る。

 新しいものを見つけた子供のように。


 「悪魔の心に干渉する術を持ってる者は、大概気付いてるんじゃないかしらね?心の奥底にある悪魔の闇・・・その本質に」


 スティーラが俺に言っていた。

 悪魔は闇から誕生し、本質はアニマ・・・魂が穢れている為、元々強暴なのだと。


 かつて、空中要塞で出会ったポポロや、銀騎士バルバトス。

 あいつらは傍から見れば、凶暴なだけの異常者かもしれない。

 実際、俺もそう思った。

 けど、実は違うんじゃないか?

 だって、今思えばあいつらは・・・悪魔の本質を体現していたような気がするから。


 「心を読むのではなく、干渉すること。相手の心に触れて初めて分かるけど、悪魔という生き物はある意味で抑制されているのよ」

 「・・・あたしでも分かるように言ってくれない?」

 「そうね・・・昔、突然記憶喪失になってしまった悪魔を見たことがあるわ。その悪魔は元々温厚な性格だと周囲に認められていた。けど、記憶を失くしてしまってからは凶暴になってしまったと言われたわ」

 「それで?」

 「凶暴になる前と、なった後。どっちが本当の自分だと思う?」


 これ・・・聞いたことがある。

 俺が数年前、名無しの森でマリアさんからベットで聞いた話。

 記憶喪失の話。


 記憶喪失を起こすことによって性格が変わることは多々ある。

 けど、記憶がなくなったことでその性格が変質してしまうのではなく、より純粋な人格に戻ただけなのだという話。

 余計な記憶が欠落した分、自分の本質に近付くと・・・


 「あたしは凶暴になる前が本当の自分だと思う」

 「何故?」

 「記憶喪失自体が異常だからよ」


 オセの言っていることは分かる。

 分かるのだが・・・


 「私は後者ね。記憶喪失になった後の自分が正常だと思うわ」

 「なんでよ?全然そうなった理由が分からないんだけど?」

 「自分が生きている上で、1番いらないのは記憶よ。生存には必要ないの。本能と、自身の体さえあれば。記憶は人格を作り、人格は生存に余計な要素を与える。人格がなければ文明も発達しないでしょうけど、本来は文明すらいらないものなのよ。この世界ではね」


 ・・・彼女の言っていることは、どちらかというと生物側よりも世界側に傾いているように見える。

 生きるという本質が、彼女の言葉に含まれていた気がするからだ。

 でも、この考え方は大多数の存在から否定されるだろう。

 生物の尊厳が一切そこにないから。

 それが例え真実だとしても。


 「・・・流石猫ね。斬新な考え方をするわ」


 オセはなんか、意外な反応をした。

 俺はてっきり、プラムの言っていることには否定するかと思ったんだが・・・


 「そこらの古臭い連中とは全然違うこと言ってて、面白いわ!」


 ・・・これも意外だった。

 いかにも72柱らしいな・・・


 「話を戻すけど、私は記憶喪失になって凶暴化した悪魔・・・その者に悪魔らしさを感じたのよ」

 「今まで悪魔の心に触れてきた経験から言って・・・か?」

 「そうね」


 俺もその考え方の方がしっくりくる。

 悪魔の元々の性質。

 それは実際に確かめていないから分からないが・・・予測するならプラムに俺は賛成する。

 て言うかしたい。

 その考えなら、この地獄の一連の騒動は俺だけのせいじゃないってことになるし。


 「だから私が魔王連中から盗み聞いた、現世へ安住の地を作るという話。そこには裏があると思ってるのよ」

 「ああ、あたしも何か裏があると思ったわ。魔王が一同集まって話していたあの場で、ラースの魔王だけ精神に偽装を施してたし」

 「・・・それを見破ったのは私よ?」


 プラムはオセをギロッと睨む。

 そんな視線に対して、72柱のくせにちょっとビビっていた。

 気持ちは分かるよ・・・超高圧的だもんな、彼女。


 「じゃあ、現世へ戦いを挑むために重火器を準備していたのか?」

 「そうよ。周囲に対して秘密裏に行うために、各魔王は個人個人でジャミングを施してる。だから、一般の悪魔やその他創造種にも現世侵攻の話は伝わっていないわね」


 俺の質問に対して、そう流麗にプラムが答えた。

 精神に直接干渉したり、妨害干渉出来る悪魔は貴重だと言える。

 そんな理由で、魔王は精神干渉の能力に長ける悪魔を傍に置きたがるのだ。

 ラースの魔王で言えば、ルフェシヲラとか、マリアさんとか。

 だから心を読むという世界の安定基準が保たれてきた。

 そうじゃないと、嘘が付けない悪魔通しで、抜け穴がだいぶそこらにあることになってしまう。


 「現世へ戦争を仕掛ける戦闘員は、魔王や側近らが各自で選出して秘密裏に連れ出すことになってる。それが原因で各領土の実力者が行方不明になってるのよ」

 「その悪魔は?今どこにいるんだよ?」

 「ラースの王立図書館、その地下で重火器の訓練を積まされてるらしいわ」


 着々と現世へ戦争を仕掛ける準備を整えてるってことか・・・


 「後、もう1つ重要なことがあるわ」

 「・・・嫌なことか?」

 「捉え方次第になるわね」


 曖昧な返し方だ。

 ますます嫌な予感・・・


 「貴方が知っている通り、ラスト領の魔王アスモデウスが3年前に死亡。グラトニー領の魔王ベルゼブブが行方不明の話、覚えてるわよね?」

 「覚えてるよ。大魔石はどっちも行方不明だったな」

 「その行方知れずの大魔石・・・ラースの魔王がどっちも所持しているわ」

 「・・・ん?」


 ラースの魔王が?


 「行方不明の大魔石を見つけたのか?」

 「いいえ、大魔石は最初から行方不明になってなどいなかったのよ」

 「んんん?」


 よく分からない。

 大魔石は実際に行方不明だったじゃないか。


 「サタンが奪ったのよ。魔王達から」

 「・・・仲間割れか」

 「そういうことね。現世へ安住の地を作るという話、2人の魔王は拒否していたらしいの」


 魔王の行方不明って、もしかして・・・

 世界の安定のために存在している魔王が・・・


 「もうこの世界は安定などしていない。そう言い出したのは、サタンの元側近だったマリア・ガープが死んだのを、サタン自身が確認してからだそうよ」

 「俺1人を殺せばいい話が、だいぶメンドクサイことになってきたな」


 世界を捨てる・・・か。

 故郷を捨てて、新しい地へ行くこと。

 それが現世。

 多分、現世がどんな場所かはサタン自身も分かっているはず。


 「3年前に断罪者に殺されたアスモウデウスは、7人の魔王で唯一の独立派だった。ラースを中心として世界を監視している体制とは別に、独自の目線で世界を見ていた。故に、色々と面倒な存在として魔王の目には映っていたのでしょうね」


 だから殺された。

 そう言いたいのか?

 この世界の状態・・・これは悪魔が本質に回帰しつつあるから?

 マリアさんという枷が外れたから?


 そもそも、マリアさんは何故枷と呼ばれている?

 俺が地獄に来る前に、何かあったとしか考えられない。

 だって、スティーラがそれを匂わすことを言っていたのだから。


 「じゃあ、アスモデウスとベルゼブブは魔王に殺されたってことでいいんだな?」

 「いえ、ベルゼブブはまだ、殺されていないわ」

 「生きてるのか?」

 「そうよ。そして、恐らくは私達の味方になってくれる」


 魔王が味方になれば、相当頼もしいだろう。

 魔王自体の戦闘能力は低いが、何といっても神聖種がいる。


 「これで大魔石はラースに3つ、貴方に2つ、スロウス領とエンヴィー領に1つずつ」

 「スロウス領とエンヴィー領はラースに協力的なんだな?」

 「そう、だから大魔石もまだ回収されていないわ」

 「じゃあ、次狙うのはスロウスかエンヴィーだな」


 ラースは守りが堅い。

 数年前に隊長格は殆ど死亡したが、それでも72柱を2人も保有しているような領土なのだ。

 その内の1人である、あの炎のじいさんの実力は俺も見た。

 今の俺では確実に殺される。

 特攻覚悟で突っ込んでもだ。


 「でさ、話がベルゼブブに戻るわけ」


 オセが人差し指をピンと立てながら前へ歩き出す。


 「ベルゼブブがここ2週間前に捕まったのよ」

 「・・・どこかに隠れてたのか?」

 「エンヴィー領のクルド街道近くでね」


 クルド街道と言えば、グラトニー領とラスト領を繋いでいた道のはずだ。

 クルト古道と対をなす、もう1つの陸路。

 

 「何でそんなところに?」

 「グラトニー領の大魔石は今、ラースにある。魔王は大魔石を取り返したいはず」

 「まあ、あんな莫大なエネルギーの塊を他人の好き勝手にはさせたくないよな」

 「そうそう!けど、グラトニー領からラースまでの道は遠いわ。通常なら転移で移動するけど、今は逃亡中の身でしょ?」

 「だから?」

 「断罪者に追われて自分の領土の転移は使えない。でも、エンヴィー領の近くにあるラスト領・・・アスモデウスの統べていた領土の転移の陣であれば、ラースと繋がっている個所はある」

 「・・・転移回廊だな」


 そこなら、大概の転移の陣と繋がっている。

 改造陣職なら何とかそこに繋げられないこともないだろう。

 だからこそ、警備も厳しいと聞いていたが・・・


 「でも、魔王単身で乗り込むのは無謀だろ」

 「そこで、ベルゼブブは自分の神聖種を使おうと思ってたわけよ」


 グラトニーの魔王・・・その神聖種ってなんだっけか?


 「それが、饐えた聖礼なる蠅の王(インフェクション)・・・万能の神聖種」」


 インフェクション・・・感染か。


 「グラトニーの神聖種は様々な薬品を体内に作り出して、それを空気中に散布するわ。傷の治癒、筋力強化、病原菌や毒の生成、色々1頭で何でも出来ちゃう奴なのよ」

 「なんか万能兵器っぽいなぁ・・・」


 さぞや色々な能力が混ざってんだろうな。

 2、3種類じゃあきかないだろう。


 「けど、ラスト領に忍び込む準備している間に捕まって、今はクルト街道の先・・・エンヴィー領に捕まってるらしいわ」

 「・・・助けたら、いいことありそうだな」

 「でしょ?あたしは助けるのが吉だと思うけどな~」


 オセがプラムを見る。

 その目は完全に身内を見る目つきだった。


 「私もそう思うわ」


 そして、プラムは俺を見た。

 いつものように、俺を試している意図を秘めた目で。


 「ラースの街に入りたいなら、今の内に味方を作っておくべきだよな」


 そう。

 単身で乗り込むには、余りにも無謀な領土だ。

 なら、今のうちにでも・・・


 「よし、じゃ、そこに行こう」


 俺達の次にやるべきことが決まった瞬間だった。

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