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この世界でただ1人の人間の戦い  作者: 冒険好きな靴
第9.5章 父祖の辺獄と地獄篇 プライド領プライド塔
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133話 変化せし現状を把握する前に

 「うおああああ!!??」


 飛び跳ねるように起き上がる。

 すごく頭が痛いせいだ。


 頭の芯が揺さぶられるこの感覚。

 直接頭の中をいじられているみたいで、気持ち悪くなってくる。


 「うう・・・」


 しばらく痛みと格闘する。

 いわゆる鈍痛というやつだ。

 中々痛みは治まってくれない。


 「何で頭が痛むんだよぉ・・・」


 泣き言。

 痛いのは好きじゃない。

 みんな好きじゃない。


 何で頭が痛いのか、原因が分かってれば対処の仕様もある。

 自業自得なら、それなりに納得も出来る。

 ・・・イラつきはするだろうが。

 だが、起きてすぐに原因不明の頭痛は泣きたくなってくるぞ。

 2日酔いじゃないんだぞ・・・


 そんなこんなで数分後。

 何とか頭の痛みは取れてきた。


 痛みで頭のぼんやり具合は見事に取り払われていた。

 冷静に周りを見てみると、俺は守護の間にいるみたいだった。


 大魔石は前に見た位置と変わらず。

 俺の位置も変わらず。

 横に寝た状態で俺は目覚めたみたいだった。


 床は柔らかくないので、背中はバッチリ痛い。

 おかげで骨がゴリゴリして不快だ。


 「よっ」


 起き上がって、とりあえず歩こうとする。

 しかし、俺が中腰になった辺りで頭を思いっきりゴンッとぶつけた。


 「また痛い・・・」


 見ると、頭上に結界があった。

 ちなみに横にも。

 結界は大魔石を取り囲むように張られていたのだ。


 大魔石はせいぜいが全長1メートル。

 俺の身長と比べたら低い。

 そりゃあ頭もぶつかるってもんだ。


 「・・・出れなくないか?」


 このままじゃ結界の外へ出れない。

 そう思って、自分の持ち物を確認してみる。

 ・・・装備は俺が守護の間で戦っていたまま残されていた。

 腰には魔剣がぶら下がっている。


 「この!!」


 魔剣をそのまま振って、結界にぶつける。

 見事に跳ね返された。


 「・・・硬いな」


 今度はちゃんと魔剣と同調して、結界に斬りかかる。

 だが、それも跳ね返された。


 ・・・俺の強化状態でも結界が壊れないってことは、少なくともチャントが付加されているってことだ。

 よくよく考えれば、大魔石の周辺に張るような結界なんだから、よほど頑丈なんだろう。


 今の手持ちは少ない。

 大魔石前の戦いで、魔石はもう使い果たした。

 だから、能力が出せない。

 生物と同調すれば、エネルギーも分けてもらえるが、それもいない。


 「・・・これ、出れなくね?」


 ・・・そういうことだった。


 「おい!!誰かいないか!!」


 叫ぶ。

 ただの結界だろうから、声は通るはずだ。

 ・・・多分。


 「誰かああぁぁ!!!」

 「・・・あら?声がすると思って起きてみれば、人間がいるじゃないですか?」


 ストンと上から華麗に何かが落ちてきた。

 見た目はオレンジ色で、体格は人間よりも遥かに小さい。

 黒色の目で、俺を好奇心丸出しで見るソイツは、猫だった。


 「シトネじゃないか!!」


 モロ知人・・・じゃなくて知猫だった。

 知り合いだ。

 俺とプラムがプライド街へ旅する前の時に知り合った、ちょっと天然娘的属性を兼ね備えた猫。

 プラムとの中はまずまず。

 俺とは一緒に馬鹿な会話をしていた仲だ。


 「どうしてここにいるんだよ」

 「プラムさんに頼まれてですよ」

 「アイツに?」

 「プラムさんは色々動くから、代わりに私がここにいろって」


 じゃあ、プラムはいないのか?


 「アイツはどこに?」

 「さあ?」

 「知らないのかよ!」

 「だって、教えてくれないんですもん!」


 拗ねた口調でそう言った。

 見た目はわざとぶりっ子しているように言えるが、コイツは本気でこんななのだ。

 基本、アホの子というか・・・


 「まあいいや。とりあえず、ここから出してくれないか」

 「へ?無理ですよ」

 「・・・何で?」

 「バッカじゃないです?」

 「お前にバカ呼ばわりされたくないわ!」


 収まっていた頭痛が蘇りかける。

 だからコイツは・・・


 「わたしじゃあこの結界はどうにもなりませんよ。そんなことも分からないんです?」

 「・・・俺が目覚めた時に、どうする気だったんだよ」

 「魔王様に何とかしてもらいなさいって言ってましたよ?」

 「なんて他人任せな・・・」

 「眠ってたあなたが悪いんじゃないです?」

 「毒で死にかけたんだぞ!!」

 「知らないですよ、わたし、その現場をみたわけじゃないですし」

 「事情は聞かなかったのかよ」

 「めんどくさいですもん」


 ・・・それこみで、プラムは彼女にここを任せたのか?

 それとも、魔王がいるから安心ってか?


 「魔王はどこにいるんだよ」

 「ここにはいませんよ」

 「それは見て分かる。ここ以外のどこにいるんだってことだ」

 「さあ?」


 イラっとしたが、堪える。

 コイツに怒ったって、ノホホンと受け流されるだけだ。

 シトネはいつだって自分が正しいと思って生きている猫なのだ。


 「じゃあ、お前は何も知らないんだな・・・」

 「ここで見守ってもらうように言われただけですから」

 「・・・テレパシーを使って呼べないか?」

 「呼べますよ?」

 「・・・呼んでくれ」

 「言われなくてもやりますよ!」


 色々突っ込みたいが、もういいや。

 おとなしくここで待っていよう。



 ---



 1時間後。

 シトネは勝手にベラベラ喋るし、その内容の大半は疲れた、だの他の猫仲間のグチだのと、どうでもいいことばかりだった。

 正直苦痛だったし。


 彼女もプラムと同じ月叉の種族なので、それなりに戦闘面では活躍出来る・・・はずなのだが、性格がこんななせいで、あんまり高評価ではない。

 むしろムカつく。

 会話してて、ストレスが溜まっていくタイプだ。

 俺が無視しても、全く構わないといった風に弾丸トークを繰り出してくる。

 だから、仕方なく会話に参加せざる負えない。

 そんなことを、1時間も続けていた頃。


 「・・・やっと起きてきたわね」


 聞きなれた声が俺の耳に届く。

 目の前には、敵であるはずのルシファーとその隣を歩いていたプラムがいた。


 「おい」


 少しルシファーを警戒する。

 敵の魔王。

 ・・・どういうことだ?


 「安心しなさいよ、あたしよあたし」


 ・・・1人称が全然違った。

 男なのにあたしとか。

 まるでオネエじゃないか。

 ・・・目覚めたのか?色々と。


 「ふぅ、仕方ないわねぇ」


 そう言って、ルシファー?は能力を唱えた。


 「完璧な代理人トランスフォーメーション


 奴の周りがバチバチと弾けだす。

 すると、顔と体がどんどん変形していく。


 高かった背丈は少し低くなり、顔もより女性的になっていく。

 髪の色と長さも変わり、綺麗な緑色に染まっていく。

 そこには、大魔石前で俺を守ってくれるといった、72柱のオセ・アムがいた。


 「変身能力か」

 「そう、魔王に化けて、色々好きなようにやらせてもらってるわけ」


 オセがニヤニヤと話す。

 相当現状に満足しているようだった。


 「で、猫ちゃんの頼みで色々やらかしてる他領土の魔王らの動向も探ってんのよ」

 「だからお前がいなかったのか」


 プラムの姿はあの時と全然変わっていなかった。

 猫は年を取っても見た目が変わることがない。

 生まれたその瞬間から美しいからだ。

 そのまま老化することなく、年を重ねていく。


 「その様子では、もう毒は残っていないみたいね」

 「おかげさまでな」


 目を合わせて意思の疎通を図る。

 彼女は何も変わっていない。

 俺をずっと待っていてくれていたのだ。


 「あれから何年経ったんだ?」

 「・・・1年ってところかしら」

 「前よりも短かったな」

 「そうね」

 「いやいや、待ってくださいよ!十分長かったですって!ずっと私ここにいたんですからね!」


 シトネが声を荒げる。

 まあ、1年間はやっぱり長いか。

 彼女にお礼を言うのは癪だが・・・


 「ごめん、長い間俺を守ってくれてたんだな」

 「お礼を言って当然です!いつかお返しをくださいね!」


 ・・・俺は何も言うまい。


 「シトネ、私に借りがあること、忘れてないわよね」


 プラムがギロリとシトネを睨む。

 同じ猫同士でも、貫禄が段違いだ。

 シトネはちょっとたじろいで・・・


 「いいじゃないですかぁ~。わたしだって頑張ったんですよぉ!」


 と言った。

 少し同情してやらないでもない。

 少しだけな。

 それ以外は無関心で貫き通してやろう。


 「この1年間で借りは相殺よ。お礼も何もないわ」

 「・・・分かりましたよぉ~」


 そう言って、シトネは壁の隅へとトボトボと歩いて行った。

 ・・・彼女、どんな借りがプラムにあったんだろうな?

 多分、それをダシにここへ呼んで俺を守らせていたんだろうけど。


 「なあ?」

 「何?」

 「この1年間、何か変化はあったか?」

 「大ありよ。貴方がいない間、色々分かったこともあるわ」


 俺がいない間か・・・

 本当に彼女はすごいな。

 俺なんかにはもったいないパートナーだと思う。


 「貴方がこの大魔石に入る前、色々分からないことがあったわよね?ここにあった現世の武器・・・銃が何故、ここにあるのか?」

 「確かにあったな」


 現世でも実用化されている、かなり本格的な銃だった。

 大量生産に向いているタイプの武器。

 当時はなんで、ここにこんな物が?とか思ってたっけ。


 それに、グリード領の土の僕(ゴーレム)

 あそこにも、隠し部屋と思われる場所に近代兵器がズラッと並んでいた。

 結局あれは何だったんだ?で話は終わってたけども。


 「私達は、魔王を装って他の魔王に近付いた。生き残りの魔王達にね」

 「危ないことするなぁ・・・」

 「貴方ほどじゃないわよ」


 ・・・言い返せないな。


 「それで見えてきたこともあるのよ」

 「面白かったわよ~」


 オセがニコニコと表情が明るくなる。

 恐らく、今回情報を手に入れることが出来たのは彼女のおかげでもあるんだろうな。

 最初は敵かと思ったが、今ではすっかり味方なわけか・・・


 「やっぱりお兄さん側に付いて正解だったわ」

 「お前にもメリットはあったんだな」

 「もちろんよ。あたしの基本的な関係はギブアンドテイクだから。対等に付き合っていける奴じゃないと面白くないでしょ?」

 「私も同意するわ」


 プラムとオセの関係は結構友好みたいだった。

 相性がいいんかな?


 「なんで各地で強力な魔王付きの悪魔が消えてるのかも話が聞けたしね」


 ああ・・・この下にある部屋で、副団長達が話していたな。

 自分達の仲間が消えてるとかなんとか。

 ここの魔王であるルシファーもそれについて、言及していたっぽいし。


 そこで、思い出す。

 あの破天荒そうな魔王について。


 「ルシファーはどうなったんだよ?」


 俺が毒に陥ってる時、ルシファーは閉じ込められてたはずだ。

 で、表向きに今はオセがルシファーの代わりをやっているんだろう。

 じゃあ、本人は?


 「とっくのとうに死んでるわよ」


 オセがあっさり俺の疑問を解いた。

 あっさりすぎて、ちょっと怖い。


 「お兄さん、あの時神聖種の奪い方を教えてくれたでしょ?」

 「ああ」

 「やったのよ。気持ち悪かったけど、何とか調理して食ってやったわ」

 「・・・調理っすか」

 「そうよ?焼いて塩をまぶしてね、ステーキにして食べたわ」


 ・・・グロイ。

 ただ、そう思った。


 俺なら当然食いたくない。

 なんだろうな。

 純粋な嫌悪感がそこにはあった。

 この場合、俺の認識が甘いってだけだろうけど。


 「じゃあ死んだんだ」

 「部下ごとね」


 そっか。

 予想はしていた。

 敵対する奴を放っておくはずがないから。

 俺はただ、その事実を飲み込むしかない。

 そういうものなんだろう。


 「でもさ、とりあえずさ・・・」

 「なあに?お兄さん」

 「この結界どうにかしてくれないか?」


 寝っ転がりながら話すのも、正直疲れていた俺なのだった。

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