115話 機内での会話
「・・・なあ」
「はい?」
「ちょっとくっつきすぎじゃないか?」
「そうですか?」
「そうだよ」
さっきから天使がグイグイ来ていた。
肩はもちろん、胸が・・・胸が・・・
「私の知っている貴方にどんどん近付いてるから、嬉しいんですよ」
「知ってるも何も2回目じゃないか、会ったの」
「回数は関係ありません。それに、私と貴方がこうしてまた出会えたことは奇跡に近いことなんですよ?」
「奇跡って・・・映画館でまた会えるって言ってたじゃないか」
「んふふ、それでも嬉しいんですよ」
休憩タイムに入ってしばらくすると、いきなりスティーラが態度を軟化させてきた。
初対面の時とは大違いだ。
いい加減恥ずかしいので、ちょっと肩をどかす。
なんだこれ?
俺はどこかのカップルにでもなってしまったのか?
密着していた体を離すと、天使が残念そうな顔をした。
「別にいいじゃないですか。リラックス出来るでしょう?」
「逆に出来ないし落ち着かんわ!」
「ええ~」
「急に友好的になるなよ。不安になるだろ」
「急にも何も、私は最初から貴方の味方ですよ?」
純真な目を俺に向けてくる。
多分、俺が持っていないもの。
その目線が今の俺にはちょっときつかった。
逃げるようにカップのリンゴジュースを口に含む。
もう中身がなくなってしまった。
「おかわりいります?」
「出せるのか?」
「もちろん」
また天使は指パッチンをする。
煙からドロンとまた黄色い液体が出てきた。
飲んでみるとこれまた甘い。
リンゴジュースだ。
「少しハチミツを加えてみました。甘いの好きですもんね?」
「ああ、記憶がないからどうとも言えんけど、これは凄い好きだ」
「ふふ、よかった」
かなり甘い。
舌の奥まで広がっていくこの甘味。
いいね。
「そういえば、ここは地獄じゃないんだよな」
「休憩に入る前に言ったとおり、貴方の世界ですね」
「今、地獄はどうなってるんだ?」
そうだよ。
俺はここに来る前戦ってたのだ。
ダゴラスさん、マリアさん、ララ、ウルファンス、シフィー。
前線に出ていた彼らはどうなっているのだろうか?
「ここの時間は止まっていますよ。安心してください」
「止まってるのか?」
「ええ、じゃないと落ち着かないでしょう」
「いやいや、そうじゃなくて、時間止められるのか?」
「貴方の内面世界では、そう難しいことじゃないですよ。ここは貴方が望めば何でも出来る場所です。今、1番必要なのは癒し。ですから、時間もその目的に合わせて止まっているのでは?」
「なんでクエスチョンマークが付くんだよ」
「実際にこの世界の時間を止めているのは貴方ですからね。私じゃありません」
俺がか・・・
そうだな。
俺、疲れてたもんな。
戦い戦い戦い。
そんなのばっかだった。
休憩が必要だったんだ。
こんな形で取れるとは思ってもみなかったけど。
「あの時、大魔石に触れたからここにきたんだよな?」
「そうですよ」
「なんで触れたらここに来れるんだよ」
「貴方には特別な力があるからですよ」
「特別って、あの強化の力か?」
「あのって言うのが、魔剣を持つ時に起こる強化状態のことを言うのでしたら、そうですよ」
おお・・・
やっぱり特別な力だったんだな。
悪魔の能力にこんな能力はないだろうし、現世なんてもっとありえない。
「ん~この話は元々私から説明する予定だった話になりますから、ここらで休憩タイムはお終いにしましょうか」
「ああ、そうだな」
十分俺も休んだ。
もういいだろう。
「では・・・」
一気に魔法で出現させたカップなんかが消えていく。
液体ごとだ。
それは一瞬で終わってしまった。
「凄いな」
「それほどでもないですよ」
いや、それほどのものだろう。
逆に謙遜しちゃいけないだろうに。
「さて、貴方のその特異な力。それは何だと思います?」
「なんだって言われてもな・・・」
強化の力、としか言いようがない。
強いて言えば、魔剣を持った時だけ強化出来るってことぐらいしか・・・
俺があれこれ思案していると、スティーラが口を開く。
「その力は名前を同調と言います」
「シンクロ・・・」
「闇のもたらした能力の力ではないです。貴方の力は元々、私達側の力なのです」
「じゃあ、俺が使ってたのは魔法か?」
「そうなります」
俺、地獄で魔法を使ってたのか。
長い間の疑問が解けた気がする。
魔法じゃあ悪魔も流石に知らないだろう。
だからマリアさんもダゴラスさんも分からないって言ってたんだ。
「でも、使い勝手の悪い魔法だな。魔剣を持たないと発動出来ないなんて」
「ああ、そこで勘違いを起こしているんですね」
んん?
勘違い?
「同調の力は、そうですね・・・タロットで言うところの愚者みたいなものですね」
「愚者?」
「何者にもなれる可能性を秘めているということですよ」
何者にも、か。
「能力を高めるも落とすも使い手次第、って言いたいのか?」
「そう捉えて結構です。そこら辺の石にも、神にもなれるような力ですから」
「凄い極端な力だな・・・」
「そのとおり。言ってみれば万能の力なんですよ?」
「て言っても、やっぱりよく分からない。具体的にはどんな能力なんだよ」
石にも神にもなれるって聞いても、訳分からん度が増すだけだ。
「では、どんな時にその力・・・魔法を使いますか?」
「どんな時って・・・魔剣を持って戦う時?」
「その時どんな感じがしますか?」
「・・・変な例えだけど、魔剣に意志があるように感じて・・・それと俺が繋がっているような・・・」
「それで正解です。貴方の魔法はそういう力なんですよ」
まだ分からん。
もっと詳しく説明してほしい。
俺の苦い表情を見たスティーラは、何故か逆に気合を入れていた。
「では、もっと根本から説明しましょうか」
「・・・よろしく」
これって俺が理解力足りないだけなのかな、と思ってしまう。
なんとなく罪悪感・・・
いや、彼女の説明もアバウトな気がするが。
「世界には物体があります。石、水、火、氷、その他にも色々。それは分かりますよね」
「それは分かる」
幼稚園児でも分かるだろう。
何か、すごい色々レベルが低くなった気がするが・・・
「その物体には、全て意志が宿っているって言ったら信じますか?」
「・・・意志?生きてるってことか?」
「そうです。さっき言った石とか、水とか、火でも、全部です」
「・・・神道みたいなものか?自然に神が宿るって感じで」
スティーラがそう来たか、みたいな顔をする。
絶妙な表情だ。
学校の先生がたまに、こんな表情をすると思う。
「面白い考え方ですよね、神道。あれって正解かどうかは別として、人間にしては優れた考え方だと思いますよ」
「いやいや、お前は天使だろ。もっと別の宗教に属してるんじゃないのか?」
「どれもこれも勝手に人間が作ったものです。資料の中にも事実は含まれていますが、まあ半々と言ったところでしょうか」
「・・・聖書も?」
「人間の都合の良いように、古くからあるものを歪曲して世に出すことは、普通にあり得ることでしょう?」
言ってることは確かに納得出来る。
歴史が書かれた資料は、全て人間によって書かれた物だ。
間違っていたりすることもあるだろう。
さらに言うと、そこには当時の政治なんかが関わっていたりすることも多い。
素直すぎる事実は消されることもしばしばだ。
だから現存する資料は、本来歴史的証拠としての価値はない。
嘘か真かも分からない資料を当てにするしか、歴史の研究は進まない。
真実はそういうもんだ。
「・・・話がそれましたね。とりあえず、物体には意思が宿っていますが、神様ではありません。ちゃんとした物体としての意思です。もちろん普通の生物みたいに意思の疎通は出来ませんし、動くことも出来ない訳なんですが、それでも意思はあります」
「とんでもない話だけど・・・意識もあるのか?」
「あります。人間の理解出来ない領域にありますけどね」
じゃあ理解は出来ないな。
「普通なら、そんなこと知る由もありません。私達、天使のような高次の生命体であれば話は別ですが、悪魔や人間には無理でしょう」
「・・・だろうなぁ」
人間の世界では、それを神様に例えて宗教にしているくらいだしな。
信仰は信じているからこそ、何も信じられないという矛盾が起きる。
それに普通の人間なら、それこそテレビ番組のネタにされて終わるだろう。
それを見て、視聴者はケラケラ笑うだけ。
想像はそんなに難しくない。
悪魔は・・・どうだろう。
天使が無理だって言ってるんだから無理なのか?
でも、マリアさんみたいな悪魔なら、いつか気付くかもしれない。
人間と違って悪魔は寿命も長いらしいし。
「そんな誰も気付かない法則のルールを扱うのが魔法でもあります。それは同調でも同じです」
「・・・今の話からすると、あれか?魔剣を握った時に起こる現象って、俺が魔剣と同調してるからなのか?」
「そのとおりです!」
またパチパチパチと拍手が俺に贈られる。
学生に退行したみたいで少し嫌だな・・・
「じゃあどうして魔剣としか俺は同調出来ないんだよ?」
例えば、銃を握っていた時がある。
だが、魔剣を持った時みたいにはいかなかった。
なんか強化出来る!って感じがしなかったんだよな。
「記憶の戻っていない貴方では、力の大きい意思としか同調出来ないからですよ。前世みたいに使えないのは当然のことです」
「え!?前世でも俺、魔法を使ってたのか!?」
「ええ、使ってましたね」
ええ・・・
魔法、使ってたのか・・・
俺、私利私欲に囚われちゃったりしてたのかね。
「てか、何で現世で魔法が使えたんだよ、俺」
「残念ながら、言えません」
またか言えないか。
言えないものは、何度聞いても言えないんだろうな・・・
「とにかく、貴方の力はもっと応用の利く素晴らしい魔法なのです。大切に扱ってくださいよ?」
「じゃあスティーラ、お前も使えるんだな」
「使えません」
「・・・使えないのかよ」
予想外の回答だった。
でも、悪魔だって能力には適正があった。
そして、極めれば極める程習得出来る能力の範囲は狭まる。
天使も同じなのか?
「その魔法は特別なんです。もう使える天使は残存していませんし、今後も出現しないでしょう」
「何でさ?」
「滅んだからですよ」
「・・・」
この話、スティーラは大丈夫なのだろうか?
「いえ、別に私は気にしていないですし、気を使う必要は全くないですよ」
と申されたので、遠慮なく話してもいいみたいだった。
「地獄へ天使が行くことがあるのですが、そこでたまに殺されてしまうことがあったのです」
「事故・・・じゃないんだな?」
「悪魔に、ですよ」
また悪魔か。
マリアさんの言っていた、悪魔は優しい発言は何だったのだろうか?
「悪魔の中にマリアさんって言う恩人がいるんだけどな、悪魔は善良なのが多いって言ってたんだ」
俺は襲われるし・・・天使も殺されたってんなら、マリアさんは嘘をついていたんだろうか?
「ん~、悪魔はここ最近で安定を取り戻したみたいですよ?」
「最近?」
「ええ、元々悪魔は好戦的な者が大多数ですから」
「おいおいおい・・・」
スティーラの言っていることが本当なら、マリアさんが嘘をついていたことになる。
これ、どっちが正しい?
・・・正直、分からない。
分からなくて困る。
「何か、気になることがあるようですね?」
「・・・だって、俺が信用していた悪魔と言ってることが食い違ってるんだぞ」
「ん、どちらが正しいか分からなくて、疑心暗鬼と?」
的を得ていた。
ズバリ当たっている。
「ふぅん・・・」
スティーラは考えるようなしぐさを少し見せて言った。
「さっきも言った通り、信用するかどうかはさて置いて・・・私は嘘をついていませんよ」
「・・・」
「貴方の人を見る目は確かですからね・・・あっちの悪魔が何か善意で隠し事をしているのでは?」
そういう可能性もある。
だが、別の可能性もある。
「・・・考えても袋小路に嵌まるだけだな」
「でしょうね」
そうだろう。
本人がいないのに、こんなことを考えて意味あるのか?
俺はないと思った。
だからその点については考えないようにしよう。
「じゃあさ、話し戻すけどどうして俺、そんな魔法が使えるんだ?」
「んん・・・言えません」
今度はちょっと間隔のある言えませんだった。
何か言えないことには共通点があるんだろうかね?
「起源はさして重要ではないですよ?どんな物事においてもね」
「もしトラブルがあったとして、責任問題に発展したら大概根元の話に行き着くけどな。あれは誰がやったんだ?って」
「それは次元の低い生物特有の考え方ですね。損得勘定で動くことを前提に責任があるのがそちらでは普通でしょう?」
「まあな」
当たってるから否定はしない。
と言うか出来ない。
「責任とは本来別の使い方のある重要な言葉です。使命感や大きな目的のない、大多数の人間が使うべき言葉ではないですね」
「お前達はどうなんだよ?何の目的があって俺に会ってるんだ?」
そうだ。
使命や目的について、そんなに語れるのなら是非言ってほしい。
「貴方に会っている理由は話せませんが・・・天使の目的は単純明快です。世界の平和を祈っているのですよ」
「・・・平和か」
今は感慨深い言葉だ。
俺も実現出来たらそうしたいね。
「天国は争いようがない程の絶対的な調和で守られている為、例外なのですが・・・現世や地獄はそうはいきません。世界の仕組みとしてそうなっているから仕方ないとも言えるのですが、それが理由で救わないなんて、私達の存在意義に反します」
「天使は平和主義なのか」
「分かりやすく言えばそうですね」
なんだよ。
魔王が天使は嘘吐きだと言うのだから、てっきり・・・
いや、でもこの時点で嘘をついている可能性は否定出来ない。
・・・だが、さっき考えたことだが、そんなことを今考えても意味がないよな。
「貴方のその魔法も、元は平和を祈った天使の魔法だったはずです」
「でもさ、さっきの話からすると俺、この魔法あんまりうまく使えてないんだよな」
「あんまりというレベルではないですね。初歩の初歩しか使えていない感じです」
ズッパリ言われたし。
言うと時は容赦なかったもんな、確か。
「まあ安心してください。前世の記憶が少し戻ったはずなので、もっと応用が利くようになっている筈ですよ?」
「例えばどんな風に使えばいいんだよ?魔剣以外でも同調出来るのか?」
「えっと、例えばですね~」
そう言って、天使の手のひらからポンッと煙が生じる。
煙から現れたのはスズメみたいな小鳥だった。
「まだ無機物は到底無理ですが、意思のある生物なら、大概同調出来ると思いますよ?」
「無機物は無理なんだ」
「そこまで到達出来たら、中々良い感じの領域ですね」
言って天使は、小鳥を俺に差し出す。
俺の手のひらに、トンッと静かに小鳥を乗っけた。
触られても嫌がらないし、逃げもしない。
おとなしい鳥だった。
「では、同調してみてください」
「え、いきなりか」
「試しにです。それに、貴方は感覚で物を覚えるタイプでしょうし」
まあ、そうだな。
いちいち考えないで、試すのが1番いいだろう。
百聞は一見に如かず。
だが、触れて使った方がなお良いに決まっている。
「どうやればいいんだ?」
「魔剣と同調した時はどうやったのか覚えてますか?」
「ああ、覚えてる」
「その時の感覚を思い出して」
そっか。
魔剣と同じようにね・・・
目を閉じる。
魔剣の時は、握った手の先から意思を感じた。
鳥に触れている部分から、似たようなものを探す。
「あった・・・」
それは簡単に見つかった。
魔剣とは比べ物にならない小さな灯。
だけど、確かにそこへ存在している。
魔剣と同じプロセスを辿って、俺の手のひらと結ぶように思考してみる。
小さいから、慎重に結ぶ。
糸のようなソレは、結ぶと勝手に複雑に絡みついて融合する。
その時点で生物の意思が俺の中へダクダクと流れ始める。
目を開けた。
目の前には、俺を静かに見つめるスティーラの姿があった。
「どうでした?」
「多分、成功だと思う」
手のひらを見てみる。
小鳥は微動だにしないが、繋がっているのは確かに感じる。
その割には魔剣と違って、何のアクションも起こさないが。
「魔剣と感覚が違う・・・」
「あれはアニマが通った特殊な代物ですから、他とは感覚も違うでしょう」
「アニマ?」
「イタリア語で魂・・・まあ、悪魔の呼称するエネルギーと同じです」
「へえ、そんな呼び方するんだ」
「その方が正確ですからね。自分の魂を切り離して執行する技術を、能力と私達天使は認知しています」
「魂を切り離してる・・・のか?」
それって・・・
「寿命を減らしているようなものです。ですけどまあ、貴方の考えとは少々違ってるとは思いますよ?」
「えっ?」
「どうせ寿命が減るのか、って悪魔を心配してたのでしょう?貴方、優しいですし」
優しいかどうかは分からないが、確かに心配はした。
本当にポンポン俺の思考をよく当ててくる奴だな。
「悪魔の寿命は少なくとも800年~900年はありますから、能力を行使しても生涯で200年かそこらの命しか使っていないですよ」
「それでも200年かよ」
異様にスケールがデカイ。
人間には想像出来ない寿命の長さだ。
現世でそんなに生きるのは、樹木だけだろう。
「悪魔の寿命と言っても、私達が認知している中ではそれくらい1番長生きした悪魔がいるのを確認したってだけであって、もっと長生き出来る悪魔はいるかもしれません。使える能力によっても、アニマの消費量は上下してきますし」
それくらい長生き出来るのであれば、死んだ年齢もさぞバラバラなんだろうな。
戦死、事故死、病死、衰弱死・・・色々な死の形があるのは悪魔も変わらない。
若くして死ぬ奴もそれなりにいるだろう。
生きる幅が大きいと、死んだ年齢の平均値も信頼出来るデータにならないだろうな。
「とにかく、生物と同調は出来ましたね」
「・・・これで俺はどうなるんだ?」
「魔剣と同じですよ。貴方が強くなるんです」
「鳥の分だけ?」
「そう、今はほんのちょこっとだけね」
微妙な強化になると、感覚も薄くなるのか?
「でも、石とかと同調出来るって言ってたよな?そんなのと同調しても、何の強化がされてるんだ?」
考えてみるが、うまく想像出来ない。
「本来は自身を強化するための魔法じゃないですからね。同調は意志疎通の出来る対象幅を増やしてコミュニケーションを図ったりすることも出来ますし、自分に足りない要素を補完出来たりします。何も使えるのは戦闘だけじゃないですよ」
「うむむ・・・」
色々応用の幅がある魔法だってのは分かった。
分かったのはそれだけだけども。
「今の貴方は、鳥の意思とあらゆる要素を取り込んだ状態です。鳥に出来た経験値はしっかり頭の中に叩き込まれているはずです」
「空は・・・飛べるのか」
そう言うと、スティーラが笑い出した。
「フフフッ!面白いことをいいますね、貴方は」
・・・だって鳥じゃん。
鳥は飛ぶじゃん。
同調したんなら俺だって飛べるんじゃね、とか思ったんだよ。
ごく自然な発想だろ?
だから笑うなよ・・・
「まあ確かに、飛ぶ要領は鳥は心得ているので、知識と経験は貴方の中にありますよ」
「なら・・・」
「でも、鳥が飛べるのは鳥の体あってのことでしょう。人は生身では飛べませんし、鳥の経験があったからって飛ぶのは無理ですよ」
言い終わって、またちょっとクスクスし始めた。
・・・悔しいが、言ってることは分かった。
超簡単に説明してもらったおかげで、俺、恥ずかしい・・・
「いや~話してると楽しいし、やっぱり可愛いですね」
2度目の頭なでなで。
頭をなでるのが好きなのか?
もっと恥ずかしいので、さらに質問をぶつける。
「じゃあさ、悪魔とは同調出来るのか?」
「・・・それは自分で試してみてください。どうせ、すぐに分かることですから」
前にもそんなセリフを聞いたな。
何だったっけか・・・
「さてと」
天使が口調を切り替える。
同時に和やかな雰囲気が薄れていく。
「これで伝えるべきことは伝えたと思います」
「・・・」
「今は心象世界の中にいますが、貴方には使命があります。ここを出ていかなければなりません」
だよな。
俺だってこんなのがいつまでも続くと思ってない。
「フフッ、受け入れが早いのも貴方のいいところですね」
スティーラがまた笑う。
映画館で会った時よりも笑顔が増えた気がする。
「さあ、ここを出る準備をしましょう」
俺と指を絡めて、彼女はそう言った。




