110話 大災害14~武器庫への潜入~
〜人間視点〜
転移の光から解放された。
体が床に投げ出される。
背中から思いっきり衝撃が走る。
受身は取れなかった。
何故かと言うと・・・
「ぐっ・・・うううああああああああああっっ!!!」
痛い痛い痛い!!!
頭が割れるように痛い!!
何だこれ!
何なんだよこれ!!!!
「ぐっうううっつ・・・ああっ・・・」
抑え込む。
ここで大声を出したらマズイ。
死ぬような思いさえ脳の奥に閉じ込めて、ひたすら痛みが引くのを待つ。
転移し終わったと思ったらこれだ・・・
いきなり痛みがやってきた。
「あうっ・・・最悪だ」
本当に最悪。
これから戦うってのに、これはない。
頭痛ってレベルじゃない。
何かの病気か?
死後に?
でも、天使が嘘付いてるかもって・・・
うああ・・・
頭をかきむしる。
血こそ出なかったが、髪の毛が数本抜けた。
新しい痛みで痛みが少しは薄れる。
誤魔化せ・・・
誤魔化せ!!
そうして静かに痛みを堪えること5分。
ようやく頭から痛みが引いていく。
少しずつではあるが・・・
「はぁ・・・ここはどこだ?」
転移魔石は大体土の僕の胸部分に向かって射出された。
なら、ここは胸部辺りで間違いないだろう。
それに、床から揺れを感じる。
地震って感じじゃない。
巨大な何かが歩いていると分かるような揺れ。
「・・・あった」
足元に転がる魔石を手に取る。
ドラゴンのブレスで無理矢理飛ばしたせいか、表面がガリガリに削られている。
危うく陣を刻んだ部分まで損傷するとこだ。
これが壊れてたら、俺は転移出来なかったってことになる。
周りを見ると、ここは誰かの部屋らしかった。
中央にクイーンサイズのベットが設置されている。
椅子にテーブル。
特に変わったところもない。
・・・敵もいないっぽい。
「ふぅ・・・」
ここで気を抜いていい訳がないけど、まあ一安心だ。
少しだけ警戒を緩める。
「んじゃ、行くか」
部屋の出口は1つ。
従って、俺の取る行動も1つ。
ドアの傍へ寄っていく。
静かにドアを開けて、敵がいないか確認する。
こういう時に、気配を察知出来る能力が欲しくなる。
俺は悪魔なんかじゃないから、全く使えない。
ない物ねだりしても仕方ないもんな。
キィ、とやけにドアの開く音が響く。
慎重に顔を出して、戦闘を開始出来る心構えを作っておく。
・・・誰もいない。
先には空中要塞で見たような細長い廊下が続いている。
内装も似ている。
てことは、複雑に通路も別れてるってことか?
それは嫌だな。
また迷うじゃないか。
じゃあどう行く?
どう俺は道を選ぶ?
「・・・考えても仕方ないな」
とりあえず、先に進むことにする。
通路は要塞の時と同じように明るい。
確かクズ魔石って言ったっけか。
光源が限られたこの世界に、電灯なんて物はない。
て言うか、電気が固有能力だった奴がいたのだから、そうそう使えるものじゃないってことだ。
クズ魔石はその代わり。
電気の代用品だ。
異なる文化が作った全くの別物が、結局のところ同じ結果を生むのは結構おもしろい。
進むと、少し大きな部屋に出る。
気配を俺なりに探ってみるが、ここにも悪魔はいなそうだ。
部屋の中を慎重に見てみる。
そこには、色んなガラクタが散らかっていた。
ストーブ、扇風機、ノートパソコン、豆電球、洗濯機、大型テレビ、釣竿、エトセトラ・・・
どう見ても現世にある近代的な物ばかりだ。
この地獄に来てから初めて見たぞ。
おいおい、懐かしいファミコンや、ポラロイドカメラなんて物まである。
ここは何の部屋なんだ?
よく分からない。
だが、こうも現世の物がこの部屋に集まってるってことは、それなりの訳があるんだろう。
或いは目的と言った方がいいか。
どうやってここにある物を作ったのかは分からないし、どうして作ったのかなんて知るわけもない。
ガシャガシャした床を避けて通る。
この部屋には俺が入ったドアを含めると3つあった。
・・・どっちに行く?
「・・・右だな」
なんとなくだ。
迷ってタイムロスをしたくない。
外ではダゴラスさん達が戦っているはずだ。
俺が大魔石を奪い取るまで。
いつまでダゴラスさん達が戦うかは、俺に左右される。
なら、適当でもいいから進む方が迷うよかはいい。
戦う前にあらかじめ決めていたことだ。
迷うことなくドアを開けて中を確認。
「んな!?」
そこには大量の武器が置かれていた。
武器って言っても剣とか槍なんて物じゃない。
それは銃だった。
ピストル、ライフル、ショットガン・・・
前の部屋はジャンルがごっちゃだったが、これは違う。
明らかに武器のみだ。
地獄にはない筈の物。
ご丁寧にマガジンと弾まで近くに置いてある。
観賞用じゃない。
使う気だからここにある。
現世でも作れたのだから、地獄でも再現して作れる気はする。
だが、大量生産とはいかないだろう。
こんなにたくさんの武器・・・どうして・・・
思わず側にあった銃を手に取る。
日本警察の使う執行実包。
しっかりとした重みがある。
弾が入っていないか確認して、安全装置を外す。
トリガーを引いてみる。
ガチッと確かな音がした。
「やっぱ本物か」
人を殺せる本物。
人が殺せるなら、悪魔も使い用では殺せるだろう。
場合によっては魔具よりタチが悪い。
これは逆を言うと、俺でも扱える武器と言うことになる。
狙って撃つだけだ。
俺でも簡単に使えるだろう。
「持ってくか」
有名なデザートイーグルなんかもあるが、大口径の拳銃はよしておく。
反動で逆に扱いにくくなるだけだ。
俺の扱える範囲内の拳銃だけを選択していく。
弾は銃ごとに横に置いてあり、対応する弾の種類が分からなくても大丈夫なようにしていた。
この置き方から見るに、悪魔に使わせようとしていた形跡がある。
悪魔に拳銃とか、鬼に金棒だな。
世界のバランスとか言ってはいるが、これがあったらもう安定どころじゃないだろ。
魔王は一体何を考えてるんだよ。
思いながらも武器を用意していく。
ホルダーがないから、腰のズボンに拳銃を2つ突っ込んでおく。
いざとなったらいつでも使える。
ただ、魔物相手に効果があるかは分からない。
ドラゴンなんかの巨体生物に効かないのは分かるが、例えばイーター種とかには効いたりするのか?
・・・無理だろうな。
弾が本体に届く前にどうにかされる気がする。
凍てつく器の捕食者とか、近付くだけで弾が凍りそうだもんな。
魔物、この先出るんだろうか。
空中要塞ではかなり出たからな・・・
まあ、持っていないよりはだいぶマシに決まっている。
幾らか拳銃を拝借?したらまた歩いていく。
この部屋はでかい。
50メートルぐらいは奥域がある。
ズラッと並んだその光景はちょっと凄い。
やばいな、ロケットランチャーまであるよ。
爆発の危険性がある手榴弾もある。
かなり本格的だ。
これも頂戴しておこう。
1番奥のドアに到着する。
ドアの外から風が少し漏れ出している。
・・・外か?
手で開けて、ドアの向こう側へ行く。
そこは、地下駐車場みたいな場所だった。
かなり天井が高い。
奥にはこれまた相当段数がある階段があり、壁はガラスが張ってある。
ガラスの向こう側からは雪景色が見えた。
やっぱり外だ。
だけどこんなガラス、ここを外から見た時にあったか?
外からは見えないようにしている?
おまけに、この駐車場のような部屋には車とヘリコプターがあった。
多分、どっちも軍用だ。
ヘリコプターて!
金額にしたらいくらだ?
相当な額だろうに。
「ますます分かんないな・・・」
圧巻としながら進んでいく。
ヘリなんて操縦出来っこないから無視だ無視。
目指すは階段。
それは螺旋状に作られていて、高さがかなりある。
そのまま天井の向こうへと続いていた。
・・・登るしかない。
足で踏むと、カッと軽い音が聞こえた。
これ、鉄かなんかだ。
この階段も近代的な物。
何でここはこんなにも現世の物がある?
俺が地獄に来たから、これで対抗する気だった?
でも、俺がこの地獄に来たのは1ヶ月ぐらい前だ。
そんな短時間にこれだけの物を用意出来るか?
俺が関係なかったとしても、それまでの地獄でこんなのが必要だったのかも疑問だ。
俺が来るまでは地獄は安定していたんだろ?
戦いがあるとすれば、それは魔物を排除したり、害獣を殺すぐらいのものだ。
能力があれば十分足りるだろう。
何か他に目的が?
なんのために?
武器の他にもガラクタが山ほどあったあの部屋。
現世での技術革新があった後の代物が大半だった。
腰から1丁だけ拳銃を取り出してみる。
よくよく見ると、スライドの方に薄く文字が彫られていた。
「CZ75B・・・」
そう書かれていた。
英語で。
そう。
英語だ。
ルーン文字じゃない。
紛れも無い現世の文字。
ここから考えられること。
それは・・・
「地獄で作られていない?」
わざわざ悪魔の識別しにくい英語で彫ることはないだろう。
それなら、ルーン文字で彫ればいい。
だから、ここで作られた物をじゃない。
そう思った。
そういえば、何で俺、安全装置とか知ってたんだろうな?
銃を扱ってなければ知らないこと。
俺、銃を使ったことがあるのか?
いや、生前おもちゃ用の銃を使ってたのかも知れない。
欧米なんかに住んだ経験があるなら、本物の銃の1つや2つ見たり触れることもあるだろう。
疑問に思うようなことじゃない・・・筈。
そうこうしている内に、階段は終わりに近付いていた。
天井の向こう側へ続いている。
隔てているものは何もないが、先は真っ暗で何も見えなかった。
ライト代わりのクズ魔石はあいにく持ち合わせていない。
感覚で慣れるしかないだろう。
俺は、新しく持たされた魔剣を鞘から引き抜く。
リーチの短い短刀。
だが、今の俺には十分だ。
魔剣から流れる意思のような力に触れる。
魔剣と配線で繋がるような感覚。
目を開けると、感覚が強化された影響で、ある程度暗闇でも僅かな光を瞳孔でキャッチして見れるようになっていた。
もうこの強化には慣れたものだ。
未だに原理は分かってないが、今はどうでもいい。
俺の補助になってくれるんなら。
「痛っつ」
頭にピリッとした軽い痛みが一瞬走った。
その痛みはすぐに収まる。
さっき、転移した直後の激痛とそっくりの痛み。
・・・今は気にしないことにした。
中を覗く。
・・・また誰もいない。
今度は比較的小さい部屋だった。
家具も何もない、ただの空間。
奥にはドア・・・と言うか、四角い窪みがあった。
人が1人通れる程。
近くまで行って、確かめてみる。
触ってみると、木の手触りだった。
ドアノブも何もないが、向こうにまた空間があるのは大体分かった。
「・・・いるな」
小声で言う。
俺でも分かる。
向こうには何かがいる。
強化された感覚が伝えてくる。
やばい何か。
緊張が一気にやってくる。
蹴れば倒れそうな障害1つを隔てた壁の向こう。
ここにいる奴は、全員敵だと思った方がいい。
仕掛けるなら最初っから全力がいいだろう。
息を整える。
今あるベストコンディションを意識する。
勝利をイメージして。
殺すこと。
口では簡単だが、いざやるとなると困難だ。
初撃で終わればベストだが、距離にもよるだろう・・・
片手に拳銃を持って、引き金を引いてすぐに撃てるようにしておく。
離れているなら拳銃を。
至近距離なら魔剣で首を狙おう。
いるとしたら、魔王かその他の悪魔か・・・
多数の戦闘は経験しているとはいえ、手練れじゃどうにもならない可能性が出てくる。
・・・俺に出来る全力を尽くそう。
「よし」
行こう。
木の障害物を思いっきり蹴りつける。
バタンとそれは倒れた。
「ガルルルルル・・・」
「なっ」
向こう側には4つの存在がいた。
魔王。
手下と思われる悪魔。
「おっ、来たか」
そして、そこには召喚王と3つの首が生えた犬の魔物がそこにいた。




