105話 大災害9~娘と母~
〜ララ視点〜
ぼやける頭。
うるさい耳鳴り。
意識を取り戻した直後に抱いた感想は、最悪だった。
背中が冷たい。
横たわっている場所が雪の積もった場所だからだ。
雪崩の雪。
そうか。
私は落ちたのか・・・
「ぐっ・・・」
痛みが走る。
全身に。
仰向けに倒れているその体は傷だらけだ。
シフィーとマリア様。
2人を助けようと急いで飛んだが、間に合わなかった。
爆発で吹き飛ばされてしまった。
結界が破壊されたことで、シフィーは青龍から落下。
マリア様は見えなかった。
そして私も爆発に巻き込まれて・・・
試しに体を動かしてみる。
おそるおそる。
「っつ・・・!!」
駄目だ。
複数箇所骨折している。
・・・動かせない。
高度数百メートルからの落下。
普通なら死んでいる。
骨折どころの話ではない。
死んでいないのは、吸血鬼化のおかげだ。
一族の体にまた助けられた。
雪のおかげもあるだろう。
クッション代わりだ。
それが証拠に、周りの雪は私の体の形に合わせて大きく陥没していた。
自身の体を見てみると、鎧を貫通して何かの破片が肉に突き刺さっている。
爆発の脅威の1つに、破片が飛来してくることがある。
さっきの爆発では、何かの破片が体に突き刺さっただけのようだが、鎧を貫通する程のものだ。
頭に当たっていたら即死だったろう。
運がよかったのだ。
死と隣り合わせの状況。
こんなことは分かり切っている。
割り切らなければならない。
空では、ブルードラゴンと守護統べる管弦の聖狐が主人もなしに戦っていた。
ドラゴンは誰の指示もなく、攻撃を続けている。
シフィーの最後の命令を実行しているのか。
とにかく・・・シフィーが心配だ。
彼女は戦闘的な悪魔じゃない。
サポーターだ。
あの爆発に耐えられただろうか・・・
私がこんなに怪我を負っているのに。
吸血鬼化は解除されてしまった。
もう私は切り札を使えない。
今の私では、役に立てない。
が、やれることはある。
シフィーを探して、テレパシーで位置を仲間に伝えるのだ。
彼女には救援が必要だ。
誰よりも。
私よりも。
首を動かす。
ギシギシと骨が痛む。
それを無視して、無理矢理辺りを見渡す。
「・・・あ」
頬に血が付いた。
生暖かい血。
雪に染み込んで、綺麗なシャーベットのようになっている。
・・・自分の血ではない。
頭部からの出血はないからだ。
下に埋まった悪魔のもの?
それもきっと違う。
なら、なんだ?
誰の血だ?
血が流れている先を見ようと首を動かす。
血の流れ道。
赤い液体の元の持ち主を。
「・・・」
いた。
彼女が。
そこには、シフィーがいた。
「うっ・・・うう・・・」
うっすらとシフィーの目が開いていく。
気が付いたのか。
「う・・あっ・・・」
口が開けていない。
話すのは無理そうだ。
だが、意識は覚醒しつつある。
つまり・・・
「シフィー・・・聞こえ・・・ますか・・・」
彼女に問いかける。
無様なことに、私の声もガラガラだった。
熱した空気を肺に吸い込んだせいだ。
喉がボロボロなのだろう。
強化していたおかげで、呼吸困難にはならなかったみたいだが。
「ラ・・ラ・・・さ・・ん・・・」
目と目があった。
会話は出来る。
ここからは慎重に話さなければいけない。
優しく、丁寧に。
割れ物を扱うように説明するのだ。
心が砕けないように。
「爆発に・・巻き込まれたのを・・・覚えてます・・か・・・」
シフィーがコクンと頷く。
「わた・・し・・・うご・・・けな・・・」
聞き取りにくい発音。
でも、言いたいことは分かった。
どっちみち伝えなくてはいけない。
・・・辛いことだ。
聞く方も、言う方も。
どっちもだ。
出来たら苦痛を半分背負ってあげたい。
だが、それは無理だ。
現実は違う。
なら、言うしかない。
「自分の・・・体を・・見れますか?」
「・・・え?」
聞いたことで、シフィーの反応が変わる。
頭のいい子だ。
すぐに異変を感じ取るだろう。
「あ・・・れ・・・?」
体をゴソゴソと彼女は動かす。
違和感を感じているみたいに。
首を何とか動かして、自分の体を見る。
私の指示通りに。
「あ・・・ああっ・・・」
悲しい顔になっていく。
悲しくて、辛い表情。
理解出来るが、したくない・・・したくもないこと。
「う・・そ・・・だ・・・」
シフィーの右足と右腕が、中間部分からちぎれてなくなっていた。
状態は・・・酷い。
あまりに酷い。
右足のちぎれた部分からの出血は、殆ど止まっている。
爆発の熱で焼けたのだろう。
肉がえぐれて、異臭を放っているが、本人は痛くないようだ。
感覚がマヒしているのかは分からない。
が、これも幸いなことだ。
痛みでショック死もありえるのだから。
もう片方の足は、変な方向へ曲がっている。
・・・骨折だ。
同じく両腕もあり得ない方向へ向いていた。
わき腹から血がどくどくと流れて、私の頬を濡らしている。
血はここから流れてきたのだ。
多分、内臓をやられている。
今すぐ治療しないと、手遅れになる。
あの高度からどう生き延びたかは知らないが、これは幸運なことだ。
死んでいない。
それだけで救いようがある。
だが、それでも今は命の灯が消えかけている。
助けられる命と助けられない命。
戦場では2つしかない。
個性は尊重されず、技能だけで価値を図る。
その技能も敵味方共にただ浪費して、全部なくなる。
キレイサッパリ。
死を覚悟してきたのなら、ここで死ぬのは問題ない。
納得の上だ。
本人の意思を尊重している。
そう。
尊重と言うのは、戦う前に受けなければならない。
戦ったらもう何も言えない。
ただ、彼女にその覚悟はあったのか?
マリア様の前では、他の悪魔の心を読めない。
シフィーの心情だって、分かる筈もない。
表面上ではみんな同意の上だ。
内面ではどうだ?
どういう理由で参加していた?
こういうことになるから、マリア様は自身の戦う動機をウルファンスの城で問い正したのではなかったのか?
その場にシフィーはいたのか?
何故、彼女はここにいる?
どうして?
「お・・・かあ・・・さ・・ま・・・」
シフィーの目線の先。
あそこの位置は、確か土の僕が氷分身・・・ウルファンスと戦っていたはずだ。
思って私もそこを見てみる。
「なっ・・・」
氷分身が土の僕に蹂躙されていた。
馬乗り。
ウルファンスがマウントを取られ、一方的に殴られている。
所々氷の体は欠損していて、ウルファンス本体がいる頭部を腕でガードしながら何とか持ちこたえていた。
「そ・・ん・・・な・・・」
見ると、土の僕の体が光っている。
いや、燃えている。
燃えた拳で殴る度に、守っている腕から溶けている。
溶けた端から氷を生やして再生させているが、あんなのいつまでも持つわけがない。
劣勢は明らかだ。
・・・とても助けを呼べるような状態じゃない。
ダゴラス様は・・・駄目だ。
戦闘中だ。
手練れ2人相手に善戦しているが、手は離せそうにない。
人間は・・・予定通りゴーレムの中。
マリア様は・・・気配を辿れない。
あの爆発で無事だという保証もない。
死んでいるのかも。
ああ・・・考えるのも疲れる。
みんな必死だ。
余裕がない。
自分の仕事をこなしている最中なのだ。
せめて、ノルマのエラを殺すことは達成出来て良かった・・・
心底そう思う。
そして、今の私に出来ることは・・・
「シフィー・・・」
言いながら私は懐からある物を取り出す。
・・・魔具と魔石。
どっちともウルファンスの城から取った物。
私は治療の能力を使えない。
習得出来なかった。
魔具は本来、習得出来ない能力をカバーして、戦術の幅を広げる耐えに使用する。
だから、これに選んだ。
恢復器
透明で小さなこのカップ。
これが私の持ってきた魔具だ。
この魔具は、傷を癒す能力が付加されている。
チャントは付加されていないから、素のままの回復になる。
もがれた足はもうどうしようもないし、骨折も治らないだろう。
これで出来るのは、出血を抑えることぐらい。
私のエネルギーはもう殆ど残っていない。
テレパシーで相手にこの状況を伝えることが出来ないくらいに。
おまけに怪我も酷い。
体を動かすことも出来ない。
それでも私は・・・
彼女を延命させることぐらいは出来る。
・・・して見せる。
「いいですか・・・これから・・・あなたの出血を・・・抑えます・・・」
途切れ途切れに呼吸して、何とか自分の意思を伝える。
彼女を絶望させてはいけない。
これも戦いだ。
今、戦っている。
彼女も私も。
「わた・・・し・・・こ・・れ・・・しぬ・・・で・・しょ・・?」
「死なせ・・ない」
「もう・・・む・・り・・・よぉ・・・」
彼女の目に涙が溜まる。
無理もない。
死が隣に迫っているのだから。
仮に生き延びたとしても、手足が完全に元の状態にまで復元されるかはまだ分からない。
障害も残るかもしれない。
それはとても苦痛だ。
生きにくくなる。
障害者。
つまり、そういうことだ。
生きることにも覚悟がいる。
だが、今私は・・・
「これしか・・・出来ることが・・・ないから・・・」
出来ることを精一杯やる。
やり遂げる。
それが私のやることだ。
やるべきことだ。
私の意志は決まっている。
彼女が何と言おうと、延命させてやる。
これは私のエゴだ。
本人の意思を確認していない。
本来死ぬか生きるかは、本人に選択する権利がある。
他者が決めることじゃない。
それが他者の尊重。
戦場では命を奪うか奪われるかだ。
本人では選べない。
尊重はありえない。
強者が勝つ。
それだけだ。
シフィーの顔が涙でグシャグシャになる。
血が混じって、赤色に。
血の涙だった。
彼女はもう1回、今も戦っているウルファンスを見て、私を見る。
何かを確認するように。
辛い表情は変わらない。
変わらないが、また口をゆっくりと広げた。
「お・・ねが・・・い・・・」
口からコポッと血が漏れる。
「た・・・す・・け・・・てっ・・・!!」
「言われ・・なくても・・・」
その意思を聞いた瞬間、体に力が溢れる。
火事場のクソ力。
今はそれでいい。
腕が動くのなら。
「助け・・る・・・!!」
手に持っていた小さなカップを、出血している彼女のわき腹へそっと当てた。
エネルギーを魔石から魔具へ。
流れるようにイメージして、力を発現させる。
そして・・・
カップ型の魔具が、ほんのり輝きだした。
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〜ウルファンス視点〜
「いい加減に倒れろお!!」
土の僕のわき腹に、1発パンチをお見舞いしてやる。
が、相手は両脇を締めて、堅牢な構えを維持している。
お互いに莫大な質量を操っての戦いだ。
精密な動きは期待出来ない。
だからこそ、より精度の高い動きを再現した者が優勢に立てる。
私は攻撃を絶え間なく続ける。
それを相手は防御する。
そんなことがしばらく行われている。
多分、動きの精密さではこっちが勝っている。
体術ではこちらに優位だ。
だからより守りを固くして、隙を伺う。
そんなところだろう。
ああ!
うっとおしい!
早くコイツを壊したい。
壊したい壊したい壊したい!!
マリアからは時間を稼ぐように言われているが、もう我慢出来ない。
ここで魔王のゴーレムを倒したい。
その為の方法はある。
実行も出来る。
その分エネルギーの消費も倍になるが・・・
私の欲求。
本能。
破壊。
これは抑えきれるものじゃない。
無理だと理解したから、ここで戦っている。
・・・もう無理っ!!
「ハハハハハハハッ!!」
笑う。
嬉しくて。
今が最っ高に楽しい。
早く壊したい。
もう我慢の限界。
子供のような本能に、どす黒い大人の狂気が混ざって、私を突き動かす。
「もう我慢するのはおしまいよおぉ!!!!」
私は氷分身の手から、氷の大剣を作り出す。
純粋な氷製の剣。
切断力はない。
この大きさでは、それを実現するのは無理がある。
せいぜい振った剣圧で折れないようにするのがいいとこだ。
それでもいい。
こん棒のような粗雑な持ち方で、剣を振る。
流石に腕でガードは出来まい。
予想通り、振った剣に対して保守的な体勢を崩して、大きく後ろへ下がってかわしてくる。
そこから剣の持っていない片手で、巨大な氷塊を作り出す。
二重の能力行使でごっそりエネルギーを持っていかれる。
今はそれすらが快感だ。
大砲の発射音を超える大きな音を発しながら、氷塊を発射する。
背後へかわした後の隙を狙ったのだ。
もうかわせない。
「ほらあ、ガードしてみなさいよぉ!!」
再びゴーレムは、眼前に2本の巨大な腕を盾のように構える。
それが相手の稼働限界。
私を大きく下回ってる。
殺せる。
確実に殺せる。
飛ばした氷塊が着弾。
両の腕が大きく左右に弾かれる。
接触した直後、氷塊は破裂する。
破片とは言っても、当たれば十分なダメージは残る。
ゴーレムは何とか片手を強引に降って、頭部・・・操縦室を覆い隠す。
そこが破壊されたらもう終わりだ。
だからそこを必死に守る。
守った為に、隙が出来たのを私は見逃さない。
渾身の力を込めて、ダッシュする。
足を蹴った余波で、下にあった積雪が大きく派手に舞う。
狙うは無防備になった片腕。
剣を握って狙いを定める。
そして乱暴に縦に振った。
ゴーレムの腕に剣がもろに当たった瞬間、破壊音が衝撃と一緒に空間に伝わる。
剣と腕が一緒に壊れたからだ。
斬ったと言うよりも、叩き壊したに近い。
衝撃で氷の剣はバキバキに砕け、腕も同じように砕かれて両断した。
こっちの剣はまた生成すればいい。
替えが効く。
そっちの腕はそうはいくまい。
もう勝ちは目前だ。
蹂躙の時間が始まる。
剣を新しく作る必要すらない!
「アハハハハハハハッッッツ!!!」
走る。
魔王の操縦室を滅多打ちにするために。
ボコボコにしてやる。
殺してやる。
呪いを込めて。
死ね。
死ね死ね死ね。
死んでしまえ。
この世界のどこからも消えてしまえばいい。
願望が現実になる時、狂喜乱舞する。
それを表現するように、片腕だけのゴーレムに殴りかかる。
「「お母様!!助けてっ!!!」」
突然、やけに綺麗な声が頭に届いた。
あの子のテレパシー。
私の娘、シフィーだ。
「シフィー!!」
咄嗟に上を見る。
それと同じくして、遥か上空で大爆発が起こった。
青龍と守護統べる管弦の聖狐を挟んで。
「えっ・・・」
爆発に巻き込まれて、落ちてくる小さな物体が2つ。
黒く焦げた塊にも見えるソレ。
まさか・・・
まさかまさかまさか!!!
嘘だ。
違う。
1番安全なポジションだったのに・・・
どうして・・・
どうしてっ!!!??
動揺が隠せなかった。
マリアがいたから安心していた部分はある。
だから余計に焦った。
それがいけなかった。
気付いた時には、眼前に土の僕の姿があった。
完全な無防備。
隙だらけの体をさらけ出して。
デカブツの巨大な姿は、いつの間にか炎に包まれていた。
燃えている。
・・・なんで?
疑問に思う時間すらも奪うように、ガンッと思いっきりデカブツの拳がアイスアバターの頭を殴った。
脳の芯まで届くような痛みが、やがて全身をマヒにさせる。
膝がガクンと落ちる。
全身の力が入らない。
頭が白む。
ああ。
頭を殴られたのだ。
脳震盪?
そんなところか。
ゆっくりとした思考の中、2発目の拳が至近距離で振るわれるのが分かった。
分かったので、能力を発動しようとする。
が、それはうまく出来なかった。
拳がまた頭部にクリーンヒットする。
今度は頭部に覆っていた氷の外装が大きく損なわれた。
その際にマウントポジションを取られる。
私を守る氷の壁が薄くなる。
外気に晒されようとしている。
なのに、体が動かない。
動いてくれない。
シフィー・・・
そうだ。
シフィーが危ない。
危ないのだ。
私の娘。
大切な子。
ずっと一緒にいたかけがえのない命。
あの人の形見。
失いたくない。
失いたくないから、動かせない筈の腕を欠損した頭部の前に持ってくる。
今、ここで私が死ぬ訳にはいかない。
死んだら誰が助ける?
こんな戦場の中で。
まだあの子は世界を知らない。
子供達と一緒に世界を見たい。
それが叶うまでは、絶対に死ぬ訳にはいかない!!
動く筈のない腕が動いた。
次々と浴びせてくる片腕の殴打を、腕でガードする。
殴られる度に、腕がかけていく。
それを補う為に、全身の氷を腕に移動させて凌ぐ。
それもやがて尽きていく。
体はまだうまく動かせない。
しかも、腕に費やす氷の量が大きいせいで、もうアイス・アバターの体があちこち欠けている。
耐久力が足りない。
もう自重で崩壊してしまうだろう。
でも、どうしてもシフィーの元へ行きたい。
・・・行きたい。
その為には、ゴーレムが邪魔だ。
胴体から下を切り離す。
既に脆かったせいか、簡単に砕けてくれた。
デカブツのマウントポジションを抜ける。
足はもうない。
だから、両手を使ってズリズリと体を引きずっていく。
積雪が絡みついて重いが、気にしない。
あの子の為なら。
黒い塊が2つ落ちた場所へ行く。
ゆっくりと。
確実に。
背後から大きな足音が聞こえてくる。
もう分かっている。
あのデカブツが近付いているのだ。
余裕たっぷりで。
その証拠に走ってこない。
まあ、そういうことだ。
構わない。
そのまま私はあらん限りの力を入れて、体を引きずる。
頭のぼやけが酷い。
タラタラと頭から出血しているのが分かる。
目に血が入ってきてうっとおしい。
ああ・・・
この感じを私は知っている。
1回体験したこと。
死がもうすぐそこまで来ている。
あの時は、あの人と一緒にいけなかったけど・・・
思い出す。
・・・縁起が悪い。
今はあの子だ。
黒い2つの点がやがて悪魔の姿として、私の脳が理解する。
血まみれのララとシフィーがそこにいた。
やっぱりあの子だった。
死んだ?
それとも生きている?
・・・生きていてほしい。
死んでいるなんて、思いたくない。
悲しい。
悲しすぎる。
私は、目の前のことに囚われすぎていた。
なんであの子が危ないって思わなかったのだろう。
城を出る前に言えば良かった。
行くなって。
私についてくるなって。
後悔。
72柱と呼ばれてから、後悔してばかりだ。
まだ私が弱かった頃・・・昔は後悔なんてしなかった。
後悔の味を知ったのは、強くなってからだ。
結局、私の理解者はマリアとあの人しかいなかった。
悪魔は心を読む。
けど、そんな悪魔でありたくなかった。
少なくとも、私は。
もちろん、子供達にも。
後悔しない為に、私は世界に渡る。
再出発。
それが私の願い。
だけど、そんな願望も子供達がいなければなんの意味もない!
子供達がいなければ、私はまた後悔してしまうからだ!!!
「シフィーイイイィィ!!!!」
声の限り叫ぶ。
あの子に向かって。
その時、シフィーの体がほんのり光った。
証拠はない。
けど、なんとなく分かった。
「・・・生きてる」
安堵感が私を包む。
同時に、大きな影も。
上を見てみる。
ゴーレムが私を踏みつぶそうとしていた。
けど、不思議と心は乱れない。
あの子が生きていた。
とりあえず、それで良しとしよう。
後悔はしなかったのだから。
巨大な足が、私の頭を踏み抜く。
そこで、私の視界はプツンと途絶えた。




