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この世界でただ1人の人間の戦い  作者: 冒険好きな靴
第6章 地獄篇 グリード領グリード街
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104話 大災害8~危機~

 〜ララ視点〜


 悪魔には段階がある。

 心の段階だ。


 最初のレベルは、感情をうまく抑えるようにしている。

 能動的な面は普通に見られるが、ルールを逸脱する行為は一切ない。

 ないったらない。

 心を悪魔同士、相互に読むことで抑制するのだ。


 これが基本。

 悪魔の7割方はこんな感じだろう。


 そして2段階。

 悪魔はある程度実力がついてくると、好奇心が強くなってくる。

 実力を上げようとする向上心が働いてきている為だ。

 外界との接点を増やそうとするその行動が、急速な自我の発達を促進する。


 3段階。

 周囲の悪魔よりも実力が上に到達する頃。

 自身の欲求の内に、戦闘欲が含まれてしまう頃。

 ルールを逸脱こそしないが、それでも欲求を満たすために積極的に魔物を殺していく。

 それを管理する者も、ソイツのストレスを溜めない為、討伐の任務を多く課すようになる。

 心のバランスを取ることは、世界のバランスを取ることと同義だ。

 まだ、この頃は大丈夫。


 4段階目。

 初めて疑問を持つ時期。

 自身の存在理由とか、色々。

 普通の悪魔はそんなことは考えない。

 ・・・普通は。


 自身を知り、相手も知る。

 相互を知ること。

 それが悪魔の大前提だ。


 が、この頃になると自身のことが分からなくなっていく。

 分かっていたのに。

 突然不明瞭になるのだ。


 強くなる兆しだ。

 そこから暴走が始まる。

 場合によってはルールを破ったり、領土を離反する者もいる。


 5段階。

 すでにここらの領域に入れば、もう周囲を拒絶してしまうことになる。

 強靭な精神力で耐えられる者もいる。

 が、ここで悪魔はみんな目的意識を持つようになる。

 この感情が表に出れば、断罪者に殺される。

 魔王の命によって。


 ここに至る前に、大体の悪魔はここで死ぬのだ。

 邪悪な芽を摘むこと。

 これもバランスの為と言って。


 72柱はその状態から断罪者の目を逃れ、力を蓄える者達になるだろう。

 肥大化した自身の実力は、自身の願望や目的に向けられる。

 そこで邪魔になる障害物を排除しながら。


 願望の為に暴走する悪魔を、断罪者などの力と拮抗させて動けなくする。

 願望を持っているが故に、なまじその悪魔は動けない。

 

 この段階の表現は、能力のチャントに似ていると言われる。

 能力は力を。

 力は自我を生み、自我は願望を生む。

 願望は世界を歪ませ、周囲を破壊していく。

 抑制すればする程力を増し、手が付けられなくなる。


 魔王様は力の拮抗がいつまでも続くと思っていたようだが、それは違う。

 いつか崩れてなくなってしまうものだ。

 一時しのぎなのだ。


 輪火の足エラ。


 性別は女性。

 性格は好戦的。

 アモン・マモンが重宝する戦力の1人。


 私はコイツが変態だと思っている。

 口を開けば戦いたいだの何だの。

 グリードの魔王の抑制が働いていなければ、とっくのとうに領土を離反している奴だ。

 側近ともなれば、それに見合った力量がある。

 ・・・危険な悪魔達だ。


 だから、魔王が直に連中を管理する。

 そして手駒にする。

 微妙な関係だ。

 いつ壊れるとも限らない。

 なら、壊れてしまえばいい。

 いっそのこと。


 「私が壊わそう。貴方を」

 「殺せるものならねぇ。殺してみなさいよぉ」


 狂った口調だ。

 人間が麻薬を摂取した時のような。

 少数だが、自身の特質が脳に影響を及ぼしている悪魔もいる。

 私の同僚だったラース騎士団、12隊長のポポロもそうだ。


 マリア様に抑えては貰ったが、未だに名残は残っている。

 苦しんでいる。

 それが力になっているとも言えるが・・・


 「戦って、嬲って、苦しめて、凌辱して、絶望させて、殺す。いい?あたしが相手になったのが運の尽きよ」

 「・・・勝手にほざいてなさい」

 「チッ」


 そうか。

 この態度。

 知らないのか。

 なら、都合がいい。

 油断しているのならば。


 「まあいいかぁ。あんたも殺られたがってるみたいだしぃ」

 「・・・」


 ニッコリとエラは武器を構える。

 エラの持っている武器は魔剣だ。


 形状はフラフープとよく似ている。

 外周部に刃があり、取っ手が上下に2か所。

 実に扱いにくそうだ。


 性格からして攻撃的なスタイルだろう。

 円形状の魔具を使って、何をするのかは分からないが・・・


 「ふっ!!」


 あらかじめ強化していた足を使って、1歩踏み出る。

 1歩で20メートルは離れていたエラのすぐ傍へ。


 「ちょっ!?」


 エラがギリギリのところで私の斬撃をかわす。

 ・・・流石に側近か。

 私の攻撃をかわせるレベルには反射神経はあるらしい。


 「はっやぁ!これで吸血鬼の能力があるとか反則じゃん」

 「・・・」


 今度は警戒したのか、しっかりと構えに入る。

 彼女・・・私をなめてるのか?

 戦闘に対する心構えが分かっていない。

 つまり・・・戦闘力は高いが、実戦はまだ足りていないのか・・・


 「大いなる炎よ(ケン・マグナス)


 エラの持っていた魔剣が燃える。

 まるで火の輪潜りのフープのようだ。


 「いっけぇ!!」


 そして、そのまま燃やした魔剣を振りかぶる。

 あれは・・・投げるのか。


 魔剣が高速で回転しながら、こちらへやってくる。

 曲線的な動き。

 攻撃の軌道があらかじめ分かるのなら、こんなのお遊びだ。

 余裕でかわせるだろう。

 私はそのまま横へ移動する。


 「・・・?」


 私に合わせて、投げられた魔剣も横へ移動する。

 手元から離れた状態で。

 ・・・追尾?

 何かの能力か?

 なら、刃の接触にタイミングを合わせて弾けばいい。

 剣を構えて受け身の姿勢へ。

 目前まで魔剣は迫り・・・


 「っつ!?」


 急に刃が伸びてきた。

 いや、刃じゃない。

 風だ。

 刃にいつの間にか乗っていた風の切っ先が、私に向かって異常に伸びたのだ。


 風は目に見えない。

 私の場合、不可視の攻撃は脅威で感じ取る。

 視覚で理解するよりも速く、頭の中で警告が走る。


 上方向へと相手の魔剣を飛ばす。

 その際ギャンと音が響く。

 が、輪っか状の魔剣は投げられた直後の回転速度を維持しながら、空中へ浮遊したままだった。


 ・・・風か。

 投剣した後に、軌道や運動エネルギーを風でコントロールしているんだろう。

 それに、風で選り分けられた酸素は、魔剣の火をよく燃やす。

 なるほど。

 彼女の戦法はそれか。


 一瞬だけ上の方に視点を移したのを見たのか、エラはそのままマグナス級の火の玉を連射してくる。

 私はまた横へ移動して、ダッシュする。

 今度は様子見の意味で、少しゆっくりと。

 思った通り、1メートル程もある火の玉は、私めがけてホーミングしてきた。

 風で軌道を変えているんだろう。

 相当な修練を納める必要がある。

 だてに側近はやっていない訳だ。


 剣で火の玉を切り伏せようにも、爆発が怖い。

 避けようにも、火の玉を追尾させて避けにくくする。

 無理に避ければ・・・


 「魔剣が首を刈り取る、か」


 剣を鞘にしまって、火の玉を直前で避ける。

 攻撃の死角にうまく入り込み、鋭い音を出しながら魔剣が目前まで迫ってくる。


 ・・・確かに、これは手ごわい。

 普通の悪魔であれば、対処のしようもない。

 追尾する火の玉を、避ける体捌きがある者ならまだいい。

 だが、複数であらゆる方向から同時になど、そうそう避けられる悪魔はいないだろう。


 なら、属性能力をぶつけて相殺させるなどで対処するしかないが、火の玉に対処する間に魔剣をどうにか出来る者も中々少ない。

 しかも、魔剣まで追尾してくる。

 攻撃を仕掛けた本人は、万が一魔剣の攻撃をどうにかされた時のために、いつでも攻撃出来るようにスタンバイしている。

 

 ・・・さて。

 この相手の戦法を、どう破るか。

 私はどうすればいい?


 私はただ・・・突っ込めばいい。

 能力を魔剣に込める。

 吸血鬼特有の能力を。


 火の攻撃を避けた際に作った、居合の姿勢。

 移動しながらの抜刀。

 この攻撃は、私の斬撃の中でもスバ抜けて速い。


 魔剣から伸びてきた風を見切って、剣を振る。

 能力を込めた魔剣同士がぶつかり、お互いに弾けた。


 このままなら、エラの魔剣はまた風の能力で私を絶え間なく襲ってくるだろう。

 でも、それはなかった。

 クルクルとゆっくり回転して、輪っか状の魔剣は地面にカランと落ちる。

 刃に灯っていた火も鎮火している。


 「・・・はぁ?」


 エラが呆然と落ちた自分の魔剣を見つめる。

 強い思念がこっちに伝わってくる。

 何故?と。


 それはそうだ。

 しっかりエネルギーを魔剣にストックさせていたのに、急にそれが消えたのだ。

 不思議に思ってもしょうがない。


 「ふっ!!」


 今度は手加減せずに、全力でエラへ踏み込む。

 剣を鞘へしまって、居合斬りの姿勢を維持しながら。


 「大いなる炎よ(ケン・マグナス)!!」


 途中、エラが炎を拡散させて私に放つ。

 視界一杯に広がる赤色の属性攻撃。

 ・・・抜け道は1つ!


 姿勢を固めたまま、その場でジャンプする。

 火炎放射に当たるギリギリの高さ。

 靴が火にかすめてチリチリと焦げる。


 空中で方向転換が出来ないと思ってか、かなりの量の火球を連続でエラが放つ。

 打ち上げ花火のように光り、距離を急速に縮めてくる。

 ・・・これは避けられない。


 そう判断して、私は剣を抜く。

 魔剣に無詠唱で風を乗せながら。

 リーチの増大。

 私の位置と、攻撃の先端はだいぶ離れた位置にある。

 その剣の先端が火球に当たり、爆発を起こす。

 横に振りぬく剣の軌道上にある火球が、全て連鎖的に爆発した。


 この距離であれば、私は爆風でダメージを受けることもない。

 剣を構えて、爆発の後に発生した黒煙の中へ落下する。


 「大いなる隠遁の壁よ(エオロ・マグナス)


 視界が塞がっている時に、この能力は戦闘中に役に立つ。

 マグナス級の気配断ちは、第6感以外の五感殆どを塞ぐ。

 これほど相手を嫌がらせることはないだろう。


 自分の周囲にだけ結界を張って、そのまま落ちる。

 煙に乗じて攻撃のタイミングをずらす。

 そして、黒煙から出ない内にリーチを伸ばした魔剣をエラに向かって斬り付ける。

 この距離なら当たるだろう。

 だが・・・


 「んっ!?」


 振った剣が途中で止まった。

 止まった瞬間に、ガギンとエラの方から音が聞こえた。

 黒煙から抜け出て、地面に着地。

 剣の先を前に移動しながら見てみる。


 剣が頑丈であろう結界に阻まれていた。

 私の出した風はマグナス級。

 恐らく、あっちもマグナス級相当の結界だろう。

 じゃなきゃ止められるのはおかしい。


 剣ではあれを破れない。

 素早く風の能力を走りながら解除する。

 勢いを止めずに、結界へ突っ込む。

 そこからあの能力を剣に付加させて、結界を斬り付ける。

 キィーンと金属が叩かれたような音を出して、結界は簡単にあっさりと切断された。

 風で弾かれたのが嘘のように。


 常識を破る。

 この能力はそう言う類のものだ。


 うまく使えば、危機から逆転出来る。

 うまく使えなければ、善戦していても転げ落ちるように敗者になる。

 打ち破ること。

 能力を取り込む能力。

 使えばさらに私は強者になる。


 「なぁっ!?」

 

 驚いて隙が相手に生まれる。

 輪火の足はまだ若いと聞く。

 なまじ戦法が強くて負けたことがないと、自身の欠点に気付かないものだ。

 こっちも若いから、他のことは言えないが、それでも私はこいつよりも遥かに実戦で負けてきた数は多いと自負する。

 

 圧倒的強者に打ちのめされて、初めてそういうことが分かるのだ。

 ただし、生きていないとそんな経験はまるで意味がない。

 生き残って初めて強くなれる。

 もちろん、私は殺すが。


 「こっの吸血鬼野郎!!」


 驚きから、私が驚く程彼女はすぐに立ち直る。

 私が剣を振ることを目で理解して、腰から1本の大型ナイフを取り出す。


 どうやら接近戦に持ち込むらしい。

 いい悪あがきだ。


 「ん?」


 後ろから突然脅威が接近するのを背中で感じ取る。

 攻撃を中断して、エラと距離を置く。

 上を見ると、赤い光が一面に渡って空に広がっていた。


 「・・・転移」


 それしかない。

 そして、この状況の中で出てくるであろう存在。

 大体は予想出来る。

 ・・・神聖種。


 赤い光が急速に収縮していく。

 その中心。

 そこには、魔王の手先である守護統べる管弦の聖狐(ナインテイル)が空中に浮遊していた。

 それを見たエラの顔がにやける。


 「アハ、アハハァ!!魔王様が援護して下さる。あんたをいよいよ殺すよぉ!!」


 さっきまで押されていたくせに、急にいきがるようになる。

 ・・・不快だ。


 白い狐がゆっくりと口を開ける。

 綺麗な音を出しながら。

 狐の鳴き声が空に響き渡った。


 耳を癒し、リラックスする楽器を奏でるようなこの音。

 それと共にやってくるものが1つ。

 魁偉の火(タクティクスフレア)だ。


 注意しなければいけない能力の1つ。

 この能力があるからこそ、私達はまず雪崩でグリード街に住む悪魔達を戦闘不能にした。

 集団で強化されたらたまったものではないからだ。


 声に乗って火が矢の如くエラへと進む。

 ・・・黙って見ている訳にもいかないだろう。


 「守りの壁よ(オセル)!」


 狐の吐いた火の先。

 進行方向に合わせて、結界を張ってみる。

 これで邪魔出来るだろうか?

 そして火に結界がぶつかる。


 「そうなるか・・・」


 結界は壊れなかった。

 魁偉の火(タクティクスフレア)もだ。

 両方が当たるその時、結界を火がすり抜けたのだ。


 予想外の一言。

 あれは物理的なものじゃないのか・・・または、結界に何か特殊な影響が作用したか・・・

 見て分かるものではないだろう。


 剣を持って、神聖種の火へ接近する。

 火の速度は速いが、私ならまだエラに届く前に1回追いつける。

 精一杯足に力を込めて、地面を蹴る。


 認識的にはコンマ数秒。

 私は飛来する火を追い抜かす。

 下半身全体を使って、急ブレーキ。

 慣性の力でズリズリと地面を滑るように摩擦がかかる。

 移動の反動でまだ止まりきっていないが、そのまま強引に逆方向へ地面を蹴る。

 追い抜かした火へと向かって。


 魔剣に能力を伝わせて、単純に火を斬ってみる。

 無理な体勢から斬ったので、火の様子が見えない。

 ただ、キィーンと音が聞こえる。


 勢いを殺すために地面に着地して、足を踏ん張る。

 土の地面が足の形の跡を作っていく。

 数メートルでやっと体が停止した。

 

 「・・・どうだ?」


 言いながらすぐに振り返る。

 エラが強化された様子はない。

 ・・・ちゃんと打ち消されたようだ。


 「なぁ!?」


 あてが外れた顔を彼女はしている。

 実際この火が来るまで待っていた節はあったんだろう。

 今、それは台無しになったが。


 戦闘は待ったなしだ。

 隙あらば殺す。

 経験が少し足りないも、相手はそれを分かっているようだった。

 両者が同じタイミングで得物を持って、突っ込む。


 エラは片手を使って、強い風を起こす。

 暴風だ。

 魔剣を使って、それを切り裂くように無効化する。


 能力戦は諦めたのか、そこでエラが前へ出る。

 大型ナイフを縦に振る。


 彼女、ナイフで戦いなれていない。

 ナイフはリーチがどれも短い。

 だから通常、突いて刺すことで殺傷力を得る武器だ。

 能力による付加ならまだ納得出来るが、ただ振り回すならそれは有効な使い方だとは言えない。

 そんな使い方をするなら、私みたいに剣を持つことを選べばよかった。


 明らかに武器の選択ミス。

 経験値が足りていない。

 いざ戦ってみれば、こんなものか。


 才能はあっても、それを生かさないと意味がない。

 生かすことが出来るのは経験のみだ。

 彼女はそれが足りない。


 ナイフの一振りをよく見て避ける。

 わざわざ相手の剣に剣を当てずとも、軌道が読めるのならかわせばいい。

 ナイフは軽量かつコンパクトな点で、相手に動きを読ませないことに利点がある。

 ナイフの大振りから推察するに、きっとそんなことは考えていないだろう。


 彼女は接近戦向きじゃない。

 遠距離戦でずっと戦ってきた。

 そのことがよく分かる。

 なら、私に敵う道理は皆無だ。


 振った腕の余韻を確認して、相手の上腕部分から剣で一気に斬る。

 エラの腕がポトリと落ちた。


 「ああああぁぁああっ!?いやああああぁああ・・・」


 狂乱している内に、手早く首を斬り落とした。

 首からヒューヒュー息が吐かれる音がして、その後噴水のように血が噴き出す。

 血がかからないように、素早く血しぶきから逃れる。

 私の勝ちだ。


 「次!」


 普通なら、死体を見てアンニュイな気分に浸るところだが、今はそうはいかない。

 死体を見ている暇があるなら、他の助けに入るべきだ。

 私は周りを見渡す。

 

 山脈とは反対の方向にある、防護壁辺り。

 そこでは熾烈な争いが繰り広げられている。

 ダゴラス様だ。

 手練れ2名と交戦中。

 私が戦った悪魔とはレベルが違う。

 こっちは比較的楽な方だったようだ。


 ダゴラス様なら心配はないだろう。

 必ず生き残るお方だ。


 街の中心部では、2体の巨大な存在が地震のような振動を地面にも空にも反響させながら、格闘戦をしている。

 あの規模となると、私では手出しが出来ない。

 逆に足手まといになるか、死ぬだけだ。

 ウルファンスの心配はする必要がない。

 72柱は死んでも死なない。

 そんな連中だ。

 心配するだけ無駄というもの。


 となると・・・

 私は上空にいる筈の2人を探す。


 「・・・いた」


 視線の先では、神聖種と幻想種がブレスを吐きあっていた。

 青のブレスと赤のブレス。

 攻撃が接触している地点では大規模な爆発が絶え間なく続いている。

 凄まじい烈風の中でも、狐とドラゴンはお構いなしに攻撃を吐き続ける。


 ドラゴンの背に乗っている2人は、結界を張って爆発の余波から身を守っている。

 だが、結界がピシピシとひび割れているのが遠くからでも視認出来た。


 急がなければならないようだが、ドラゴンは遥か上空。

 吸血鬼化した私の脚力でも届かない。

 この状態では脚力強化の能力も使えない。

 ならば。


 力を溜めて、めいいっぱい跳躍する。

 青龍(ブルードラゴン)へ。


 空気抵抗を減らすため、無駄に体は広げない。

 体積は小さく、鋭く。

 それでも強風で体が流される。

 重力でジャンプの運動エネルギーも消失していく。

 勢いがゼロになったところで、能力を唱える。


 「守りの壁よ(オセル)!」


 足元に結界を床状に張る。

 強度的には脆い壁だ。

 私の脚力ならば、ジャンプするために蹴っただけで壊れてしまうだろう。

 それでも、1回飛べるのなら・・・


 風でバランスを失わないように、グラム単位で体重を移すようなイメージでまた飛ぶ。

 さらに強風が上層で吹いていることは明らかなので、少し目標地点からずれた場所を意識して微調整。

 ドンピシャでシフィーの方へ向かっていた。


 ドラゴンの背で展開している結界。

 これはマリア様の能力じゃない。

 シフィー単独で発動させたものだ。

 近くで見て、ようやく理解する。


 マリア様が準備に入っていること。

 もう結界が破れる直前だということが。


 「ハアアァァァ!!!」


 私がブルードラゴンの背にたどり着く、その刹那。


 シフィーの結界が完全に壊れ散った。

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