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この世界でただ1人の人間の戦い  作者: 冒険好きな靴
第6章 地獄篇 グリード領グリード街
103/244

103話 大災害7~アモンの神聖種~

 〜ダゴラス視点〜


 白兵戦における、戦いの極意。

 それは危機意識を覚えた状態で、その反応を無視することだ。

 これを言うと、よく言われる。

 矛盾してますだとか、無理ですなどと。


 無理なことはない。

 戦いを何回も重ねればな。

 今の地獄にはこうした機会はとんと少なくなった。


 世界の安定化。

 それが今の地獄を緩やかに蝕んでいく。

 後輩の育成もままならない。

 このままでは、遺伝子の中に刻まれた闘争本能は廃れていくばかりだろう。


 幾ら悪魔の寿命は長いとは言え、それは良くない。

 そうした点を踏まえて、短期間だがみっちり近接戦闘を叩き込んでやった。

 アイツは筋がいい。

 覚えも速い。

 そしてあの特殊な技能・・・


 でも、アイツにはまだまだ教えてやりたいことがかなりあった。

 ・・・心配だ。


 「あ~あ、行っちゃったか」


 アイツ、大丈夫かな。

 1人にさせるのはやっぱ不安だな。

 俺もこれが終わったら、駆けつけようかな。

 でも時間がかかりそうだ。


 目の前には、巨大化させた大剣を持ったアマンダと、溶岩を使うマールがいた。

 どっちもララに匹敵する強敵。

 マールに至っては72柱でもおかしくない実力だからなぁ。


 「そんなに余裕があるのか、英雄殿」

 「別にないよ、そう見えたのか?」

 「そうだな。欠伸をして視線を逸らされれば、誰だってそう思うとは思わないか?」

 「思わない」


 ここでアマンダが威圧感をグッと上げる。

 挑発したつもりもないんだがな。

 対してマールは冷静沈着。

 経験の差が出たか。


 「ガンガン攻撃してゆけ、アマンダ。サポートしてやる」

 「ええ、もちろん」


 側近同士だからだな。

 連携しなれている雰囲気だ。

 ますますめんどくさい。


 あの大爆発の後、俺はこの敵さん2人を出来るだけ氷分身(アイス・アバター)から遠ざけた。

 土の僕(ゴーレム)をこの場で抑えられる奴・・・つまり、ウルファンスを倒されたらこっちの負けだ。

 それは非常に困る。

 だから俺が引き付けた。

 そろそろ神聖種が出てくる頃合いだろうし、この2人組はますます俺にしか手が負えなくなる。


 エネルギーはまだまだ余裕。

 十全に対処出来る。


 「じゃ、行きますか」


 俺が動くよりも前に、アマンダが大剣を振り下ろした。

 ある程度離れていても、斬撃をお見舞いできる。

 攻撃範囲が広いからだ。

 遠距離でも白兵戦が通用するのだ。

 それに、動きも速い。

 威力も巨大化した分単純に上がっているだろうし。

 厄介だな・・・


 「てぇ、普通は思うだろうなぁ!!」


 巨大化した大剣に向かって、大剣を思いっきり振る。

 剣同士が接触した途端、衝撃波が生まれる。

 その隙を狙って、溶岩が頭上から落ちてくる。

 まるで噴火みたいだ。


 「霊性なる守りの壁よオセル・スピーリトゥス!!大いなる風よ(ラド・マグナス)!!」


 片手で結界を張って、溶岩を直接防ぐ。

 同時に風を大剣に纏わせる。

 リーチを15メートルにして。


 空気なので軽い軽い。

 あっちみたいにわざわざ筋力強化なんてこともしなくていい。

 切断力もこっちが上だ。

 アマンダへ接近しなくても、この剣の長さならこの場で十分に届く。


 アマンダの方向へリーチを伸ばした大剣を突く。

 突く突く突く。

 風の貫通力を恐れてか、アマンダは突きを横から弾く。

 弾く弾く弾く。

 ほら、隙が出来た。


 「霊性なる炎よ(ケン・スピーリトゥス)!」


 火を加工せずに、そのまま片手で放射する。

 広大な劫火の海を。

 視界が津波のように紅蓮に染まる。


 「ぐっ!!!」


 アマンダの方が火のランクは下だろう。

 マグナス級か、それ以下か。


 「いったん引け」


 アマンダは指示に従ってバックする。

 そこからマールは、またもノーモーションで溶岩を発生させる。

 俺と同じ形状。

 溶岩の海だ。

 波のように襲ってくる。

 これはダメだ。

 せめぎあっても負ける。


 実際、俺の広範囲に放射した火炎は熔岩にことごとく飲み込まれていた。

 溶岩と火。

 いくら大概の物質を燃やす4段階強化した炎と言っても、これは相当相性が悪い。


 迫る溶岩を見ながら、無詠唱で足に筋力強化を施す。

 負担はかかるが、言ってる暇がないからな。

 素早く跳躍して、空中に結界を敷いて見下ろしていたマールに突っ込む。


 「おらおらおらおら!!!」


 飛びながら連続無詠唱で水の球をマールへ発射する。

 が、それは突如現れた壁によって遮られる。

 壁の弾力性を含んでいるのか、僅かに衝撃に対してたわんでいるように見えた。


 「・・・ゴムか」


 水にはゴムを。

 火には溶岩を。

 そういう対処法ね。

 なるほど。


 目の前で水をキャッチしたゴムの壁を、リーチを伸ばした大剣で斬り付ける。

 ゴムは弾力性に富む故に、衝撃には強い。

 その分切断にはめっぽう弱い。

 風と相性が悪いのだ。

 あっという間にガラガラとゴムが崩れていく。


 「うお!」


 崩れたゴムの欠片から、無数の棘が伸びてくる。

 不意打ちか。

 冷静にこちらへ伸びてくる棘だけを見切って斬り落とす。

 途中、視界の端からアマンダが接近してくるのが分かった。


 アマンダの方を振り向く。

 ついで大剣と大剣が接触する。

 その時、巨大な大剣の炎がまたもメラメラと荒れ狂った。


 「・・・またか?芸がない」

 「バーニング!!」


 瞬間、大爆発が起こった。


 「霊性なる守りの壁よオセル・スピーリトゥス!!」


 とっさに結界をキューブ状にして、周りに展開する。

 ルフェシヲラと同等の結界。

 いくらなんでも破れまい。


 アマンダの攻撃を食らえば、普通は即死する。

 単純な爆死だ。

 が、それでも生き残る奴は生き残るだろう。

 でも、生き残っても相手に不利な条件は残すことが出来る。

 視界が光で埋まる。

 耳が聞こえない、とかな。

 ・・・不意打ちにピッタリじゃないか。


 丈夫な結界のおかげで、俺は無傷。

 だから周りの状況を察知出来る。

 上からでかい岩の塊が落ちてきているのが分かった。


 爆発の余韻があるから、まだ結界は解けない。

 剣で大岩を斬る訳にもいかない。


 俺はキューブ状の結界を変形させて、立体的な三角形へと形を変える。

 結界の1番上に圧力が加わるように、面積を出来るだけ小さく、丈夫に、鋭く。


 爆発の黒煙を蹴散らしながら、大岩が三角形の結界にぶち当たる。

 ガガガガと音を立てながら、岩が内部でどんどん割れていく。

 やっぱり岩自体の硬度はそんなんでもない。

 固有能力で鉄でも生成しない限りは。


 岩の内部から光が差す。

 赤い光が。

 溶岩の海が大岩に続いて大量に落下していた。


 「おいおい、容赦ないなぁ」


 俺の結界で溶岩は長く耐えられない。

 なら・・・


 「霊性なる水よ(ラグ・スピーリトゥス)!!」


 結界を水で沈める。

 そのまま水の規模を急速に拡大。

 1秒程で、空中に浮かぶミニ湖が誕生した。

 その湖の水を使って、ドラゴンの頭部を5つ形成。

 水を能力で作り出しながら、ドラゴンの口でブレスと似た攻撃を作り出す。


 溶岩が水に接触した途端、ジュワッと水蒸気が発生して、霧に包まれる。

 溶岩が湖に突っ込む頃には、溶岩はただの大岩になっていた。

 その調子でブレス状の攻撃を続けて、どんどん固まった溶岩を上へと押し返していく。

 マールに向かって。


 「流石に英雄か!!」

 「そりゃどうも」

 「させるか!!」


 三者の言葉が交差する。

 攻撃も同時に交差した。


 アマンダがジャンプして、巨大な大剣で冷えた溶岩を一刀両断する。

 あっちの魔剣、素の切れ味が高いな。

 業物なんだろう。


 湖の下から高速で岩のとげが俺めがけて伸びてくる。

 地面の岩を変形させていた。

 ・・・水じゃあどうしようもないな。


 再び無詠唱で、魔剣のリーチを風で伸ばす。

 俺が作ったミニ湖ごと棘を大剣で一掃する。

 中間あたりから、ズバズバ斬っていく。


 上への牽制も忘れない。

 片手でマトラス級の火球をいくつかぶっ放して、ちょっと気を逸らしたら・・・


 「大いなる風よ(ラド・マグナス)!!」


 風で空中を高速で走る!!

 視界を線で捕らえて、点であるアマンダをしっかりと捕捉する。

 同等程度の風を進行方向に発射して、スピードをゼロに。

 その際体に強烈な負担がかかるが、気にしない。


 岩の影。

 死角からの接近。

 アマンダにはもうどうしようもない。


 首めがけて思いっきり無骨にフルスイングする。

 よし獲った。

 ・・・と思ったが、マールに邪魔された。


 拳ほどの石を飛ばして、アマンダの兜に当てたのだ。

 首はあらぬ位置へと移動して、俺の大剣を寸でのところでかわした。


 「ちっ!」


 サポートが上手い。

 悔しいが、流石だと思った。


 それぞれが地面に着地する。

 上ではマールが睨みを利かせていた。


 「ほれ、アマンダ。今1回死んだぞ」

 「・・・申し訳ない」


 ああ、そういう関係かい。

 そうかそうか。


 「いやぁ~殺せると思ったんだけどな~」

 「わしがいなかったら殺れただろうて。残念だな」

 「本当に残念残念」


 当のアマンダは少し息を切らしていた。

 兜は弾かれて、素顔がまるまる見える。

 生えてる角から推察するに、まだ若い。

 しかも女だ。

 よくここまで実力を上げたもんだ。


 だが、バーニングとか言う技。

 あれは結構なエネルギーを使うっぽい。

 俺ならまだしも、アマンダが使うのは体に毒だろう。

 普通なら、1発で枯渇して使えまい。

 どこかに魔石を仕込んでいるのか・・・


 「殆どの能力を4段階まで発動出来る万能の戦士・・・ラースの英雄。これほどなのか」

 「驚くのはいいけど、まだ本気は出してないぞ~」


 これ、冗談ではない。

 本当だ。

 余裕って訳じゃないが、まだまだギアは上げられる。

 だが・・・


 「ん・・・」


 突然上空から赤い光が満ちていく。

 ・・・召喚の光。

 よく見ると、召喚されたそれは9本の尾を持った白い狐だった。


 「守護統べる管弦の聖狐(ナインテイル)か?」


 現れた途端、白い狐の口から火が灯る。

 そしてどこか弦楽器に似た鳴き声と共に、その火は俺の目の前にいたアマンダとマールへと着弾した。

 音楽のように軽やかに。


 ダメージはない。

 むしろその逆。

 脅威度が増している。


 綺麗な透き通る火が、アマンダとマールを包む。

 初めて見るが、これが魁偉の火(タクティクスフレア)なのか。

 なるほど、火が着弾した途端に体力が回復しているように見える。

 つけた傷が徐々に閉じていた。

 ・・・これ、エネルギーも回復してんじゃないのか?


 「ああ嫌だ嫌だ。ウルファンスもとっとと攻めない筈だ」


 魁偉の火(タクティクスフレア)による攻撃力の強化、及び傷の回復、エネルギーのチャージ。

 白い狐野郎は、主に補助系の神聖種だと聞いている。

 仲間の士気だって、そりゃ上がるだろう。


 もし、雪崩で不意打ちをしなかったら、街の悪魔全員にこの能力がいきわたってたとこだ。

 マリアの判断はやっぱり正しい。

 俺なんかが口出ししないで正解だ。


 「で、魔王様の応援をその身に受けて、どんな感想だ?」

 「・・・最高だ。今なら出来ないことも出来る気がする」


 ああ、興奮作用もあるのか。

 確か結構な数の能力をミックスさせてるんだっけか?

 4種類?5種類?

 正確には忘れたが・・・

 こんな時ぐらい、まじめに覚えておけばよかった。


 まあ、それはいい。

 今はコイツらを殺すことに集中しないとな。

 神聖種の相手は青龍(ブルードラゴン)に乗ったマリアとシフィーだ。

 俺はこいつらに集中しなきゃな。


 「んじゃ、2回戦突入ってことで・・・」


 こっちのセリフを待たずに、溶岩の波が襲ってくる。


 「・・・殺ろうぜ」


 俺はそう言った。




 ---




 〜シフィー視点〜


 土の僕(ゴーレム)と巨大な氷分身(アイス・アバター)が両の手を振って、殴りあっていた。

 氷が砕け、岩が砕ける。

 だがその度に再生し、殴り合いを再開。

 これじゃあキリがない。

 けど、それでいい。


 私の隣にいるマリアさんは、黙って戦局を見守っている。

 あの人間を送り出してからずっと。

 そして、マリアさんの視線の先。

 土の僕(ゴーレム)の胸部。

 そこから1つの火が隙間からバラバラと飛び出してきた。


 火の玉。

 綺麗な火だ。

 違和感のある感じ。


 あの手の火は知っている。

 何かしらの能力が混ざり合って起きる現象。

 多分、お母さまが邪険にしていた生き物。

 拡散していた火が集合しだして、1つの形に戻っていく。


 9本の尾。

 オオカミににた鋭い目つき。

 純白の毛皮。

 こんな生物2つといない。

 魔王の神聖種だ。

 間違いない。


 「さて、シフィー!準備はいい?」

 「もちろん。がんばりますよ」


 久々の戦いだからか、緊張してきた。

 落ち着かなくちゃ。

 他の方々と違って、このポジションは命がけって訳じゃない。

 だからこそ、みなさん以上に頑張らなくちゃね。


 白色に光る狐が、コォンと遠吠えをする。

 遠吠えしたその口から透明度の高い火が吐かれる。

 火の玉だ。


 仲間の補助に特化した効果。

 凄い不愉快な能力だと、お母さまに聞かされたことがある。

 聞いた通り、厄介そう。


 「「シフィーお姉ちゃん!私達のお城のあった所に、いっぱい悪魔が集まってる!」」


 ソフィーからの連絡。

 人間をゴーレム内部に送った後、スフィー、ソフィー、スーランは山頂の私達の住まう城へと即席の転移で送った。

 あの子達の役割は、山脈の監視。

 援軍の状況確認。

 そっか。

 もうなのね。

 あまり時間がないみたい。


 「「分かったわ。ありがとう」」


 マリアさんが返答する。

 この報告を聞いて、実際に対処するのはマリアさんの役割。

 私は彼女を守りながら、狐の相手。


 マリアさんの能力は強力だけど、本人は無防備に近い状態になる欠点がある。

 能力の運用次第では命を取られかねない。

 1番被弾が少ないポジションだって、この状況じゃあ何が起こるか予想もつかない。

 だからますます警戒しなくちゃいけない。


 魁偉の火(タクティクスフレア)浄炎不死の聖鳥(フェニックス)程味方を回復する訳じゃない。

 じわじわと気力、体力、エネルギーを自動で回復する、自然干渉系と身体干渉系が混ざった能力。

 全身に装備することで、初めて効果を発揮する火なのだ。

 その際筋力も微量ながら上げてくれる、優れもの。


 こんなのを魔王の側近に装備させちゃったら、大変だろうな~、きついだろうな~とか他人事のように私は思ってた。

 けど、言葉の通り黙って傍観してる私でもない。


 私の働き次第で、ララさんとダゴラスさんの負担が減る。

 その為の貢献が出来る。

 ただし、うちのブルちゃんを使ってだけど・・・


 「じゃあ行くわよ!!」


 マリアさんみたいに能力で操れればいいんだけど、私にはそれは出来ない。

 けど、指示をしてあげればちゃんと理解してくれる。

 これは長年ブルちゃんを飼っていた家族の苦労の賜物。

 ちゃんとしつけておいて正解だったと思う。


 「全力でブレス!!」


 命令に合わせて、ブルちゃんが口を開く。

 最大出力のアイスブレス。

 単純な攻撃だけど、出だしのスピードは速いし、攻撃範囲も広い。

 おまけに強い!

 私としては、開幕でケリをつけたかった。

 あまり長引かせたくないから。


 可視化された冷気が、広範囲に渡って展開される。

 けど、核は一直線にナインテイルの位置へ。


 よく見ると、相手の方も攻撃の準備は出来ていたみたいで、口からこっちと同じくらいの大きさの火炎放射を出していた。

 お互いの攻撃が真正面から衝突して、輪っか状の波紋を生む。

 こっちは全力の攻撃でやってるのに、攻撃を押せない。

 押されてもいない。

 両者の力が拮抗していた。


 「ううっ・・・」


 火傷を負いかねない風が、こっちにまで届いてくる。

 ブレスと言うのは、火の玉みたいに単発的な攻撃じゃない。

 攻撃を継続して行うもの。

 だから、相手もブレスを使って来たらもう力比べになってしまう。

 幻想種はそんじょそこらの相手には負けない。

 とてもとても強いのだ。

 でも、この狐はちょっとまずいかも・・・

 そしてその直後。


 「えっ・・・!?」


 ブレス同士がぶつかって、その中心に大きな力のわだかまりが出来る。

 熱いものに冷たいものを急にぶつけたら、どうなるか?

 ・・・水蒸気爆発。

 目の前で、猛烈な爆発が起こった。


 「きゃっ!?」


 悲鳴。

 平衡感覚が分からなくなって、目の前も真っ赤になる。

 本気で危ないと感じて、とっさに私が持っている魔具を使って結界を張る。

 私とマリアさんを密閉するように。

 無我夢中だ。


 「いった・・・」


 少し火傷を腕に負った。

 ヒリヒリして痛い。

 真っ赤に腫れている。

 でも、治癒能力を使えば何とかなる。

 今はそんなことよりも・・・


 私は結界ごしから目の前を見る。

 まだ連続爆発が続いていた。

 衝撃が凄まじい。

 

 そんな中で、ブルちゃんは私の命令に従って、まだブレスを吐いてくれていた。

 相手も火炎放射は継続中。

 よって、爆発はまだまだ勢いを増している。


 結界がピキピキ悲鳴を上げている。

 慌てて補強に入る。

 両手を結界に直接当てて、エネルギーを注ぎ込む。


 「うっ!!」


 外の環境が苛烈なせいで、能力の行使にどんどんエネルギーが吸い取られていく。

 これは・・・長くは持たない。

 これ・・・ツライよ。


 ガリガリ貪り食うように、私のエネルギーがなくなっていく。

 魔具を通して能力を使ってるから、少しは負担も軽いはずなのに・・・


 「・・・まだ・・・終わらないの!?」


 ブレス攻撃と爆発はまだ終わっていない。

 ここで結界を解いたら、マリアさんごと私は死んでしまう。

 でも・・・でも・・・


 「もう無・・・理!!」


 元々私は戦闘向きじゃない。

 お母さまみたいに、勇猛に戦えないのだ。

 もし、私に力があったら・・・

 本当にそう思う。


 でも、無理。

 力が足りないからブルちゃんに乗ってるのに。

 そんな想像は無駄よね。

 そんなことを思いながら、結界が破れていくさまを見る。


 ごめん、お母さま。

 私、あっという間にやられちゃった。


 その後私の全身は、連鎖する無慈悲の爆風に包まれた。

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