大陸艦隊戦〜余興6〜
「ホノイ君?君には期待してるんだから…あの時みたいな血湧き肉躍る闘いをね…」
そう言いながら蛇腹さんが俺の方へと近づいて来る。
「あれから、君がどれだけ強くなったのか…僕もあれから強くなったんだよ〜?」
まだ、戦闘狂モードと普段のおっとりした雰囲気が混在している蛇腹さんはコロコロと表情を変えながら喋っている。
「だから…君が………ったら……っ‼︎」
急に喋っていることが聞き取りづらくなったと思ったらいきなり大剣を振り被って俺を八つ裂きにしようとしてきた。
「ッ⁉︎」
今の俺の残りのHPを考えるとあの大剣に当たったら一撃で終わる。となると、俺は全て避けるか、威力を相殺して受け止めるかのどちらかになる。
それにこの人には俺の【高密度結晶化】を食い破ってダメージを与えるほどのアーツが有る。
正直、あのアーツはほぼ回避不能だ。
と、なると俺が勝つには殺られる前に殺る。これしかなさそうだ。
そんなことを考えながら先ずは避ける。
ザクッ
と、音を立てながら地面に大剣が突き刺ささることによって生じる隙を狙って俺はアーツを放つ。
「【右ストレート】っ‼︎」
この一撃を当てられればここから一気にラッシュで攻勢に回れる。
「【無なる障壁】」
蛇腹さんが一歩もその場から動かずにアーツを発動した瞬間、俺の右腕は確かに蛇腹さんの顔を捉えたはずだった。
しかし、その右腕は歪んだ真っ黒の空間の中に入り込んでいた。
俺の右腕は何も感じない。
そう、この空間の中は全てが無いのだ、温度も何か気体があるのかすら分からない。
ただ、一つ確実に言えるのは此処に長い間いてはいけないこと。
俺は慌てて手を引き抜き、【高速移動】で距離をとる。
「【瞬…】」
去り際、蛇腹さんが何か言っているが聞き取れない。いや、聞き取る必要はない。
そして、俺は背後に気配を感じた。
「えっ?」
「言ったよね〜?僕も強くなってるってさ」
何故かそこには、剣を振りかぶっている蛇腹さんがいた。
「なるべく僕をガッカリさせないでよね…」
不味い…
この状況は不味い既に、俺はあの剣の射程距離内だ。
「君ならこれもどうにかできるよね?」
微笑みながら俺に問いかける蛇腹さんは少し残念そうな顔をしている。
「【断空】」
もう使ってくるか?
こいつをどうにかしないと…
俺の脳味噌がフル回転して答えを導き出そうとする。
そして、ある一つの案に辿り着く。
俺の目には周りの動きが、いや、俺の動きまでもがスローモーションに見える。
人間の脳は死に瀕したときに、神経が活性化するっていうけど本当なのね…
というか、それがゲームで再現されるとは…
「【カウンター】」
先ず俺は、【カウンター】を発動して一瞬で蛇腹さんの後ろをとるがその動きを目で追いながら既に半身を翻してくる蛇腹さんはもはや、化け物だ。
この状態で蛇腹さんを殴ってもアーツの発動は止まらない。
だったら、振り下ろされる剣を止めることができれば?
そう、俺のたどり着いた案は剣を止めて発動したアーツを強制的にキャンセルする事だ。
蹴りでも殴りでも、攻撃はインパクトの瞬間がある。だから、そこに至る前に物に当たったり、逆に強い衝撃をくわえられれは力はうまく伝わらない。
簡単に言えば、パンチをするときにしっかり肘を伸ばしきって当てたパンチと、肘を伸ばしきれずに肩に近い位置で当たってしまったパンチでは威力は段違い。と、言う話だ。
だから、俺がやるのは攻撃をしようとしている蛇腹さんに一撃当てることではなく、攻撃に用いられようとする剣に一撃を入れる事。
まだ、自分の動きも蛇腹さんの動きもスローモーションに見える。
俺の脳がマッハで行動と思考を処理する。
さて、やってみるか…




