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「ごめんなさい…」
「リュウが謝ることはないじゃない。回廊の術式から脱出しようと思ったのだって、早くルウェに朝ごはんを食べさせてあげたいからでしょ?」
「うん…」
「そのこと自体は、間違ってないけど、無茶をしたのは、間違ってるね」
「ごめんなさい…」
「まあまあ。終わったことは終わったこと。無事に朝ごはんも食べられたし、リュウも回復したんだからいいじゃない」
「そうだけど…。それでも、今日一日は、絶対安静だよ」
「はぁい…」
リュウは寂しそうに布団を頭から被った。
それを見て、響が横から潜り込む。
「そんな顔しないの!ほら、笑って!」
「く、くすぐったい…!あはは、ひ、響お姉ちゃん…!」
「こちょこちょ~」
「何、やってるの!」
「あたっ!」
光が布団の上から響の頭を殴る。
そのまま、響は頭から布団に突っ込んだ状態でしばらく動かなくなって。
「もう…。絶対安静って、言ってる傍から、そんなこと、するでしょ」
「いいじゃん。リュウが寂しそうにするからさぁ」
「はぁ…」
「あはは」
ノソノソと這い出てくる響。
リュウも、布団から顔だけを出して笑っている。
うん。
響の言う通り、笑ってる方が良いんだぞ。
「はぁ~、光に殴られたらお腹空いちゃった。何か食べるものない?」
「さっき、食べたばっかりでしょ。ダメだよ」
「むぅ~。ケチ」
「ケチで、結構。もう、響の昼ごはんも、作ってあげない」
「えっ!そんなのダメだよ!美希お姉ちゃんもいないのに、餓死しちゃうよ!」
「はぁ…。少しは、料理も、覚えたらどうなの?」
「あー、ダメダメ。わたしは、食べる方の仕事があるから」
「それで、わたしも、美希お姉ちゃんも、いなくなったら、どうするのよ」
「大丈夫。絶対に光とは離れないから」
「もう…。ちょっとは、自立しなさい」
「ちょっとだけしてるよ。ていうか、稼ぎはわたしの方が多いんだし、持ちつ持たれつだよ」
「わたしは、いざとなったら、お金がなくても、生活出来るから」
「えぇ~…。そんなこと言わないでよ~…」
響は光がいないとダメだけど、光は響がいなくても大丈夫ってことかな。
でも、そんなかんじはしない。
両方とも、相手がいなくちゃダメだって。
そんなかんじがするんだぞ。
「とにかく、今度、美希お姉ちゃんと話して、響にも、多少は自立してもらえるように、いろいろと、教えてもらうから」
「えぇ…」
「イヤなら、いいよ。その代わり、わたしがいなくなっても、知らないから」
「えぇ…」
「ふふふ。面白いの」
「うん。確かに」
「わたしは面白くないよ…」
「自分の、ことだからね」
リュウに代わって暗い顔になった響は、本当に面白かった。
…リュウは、すっかりいつもの笑顔に戻っていて。
さすが、響なんだぞ。
「さて。暗い顔もここまで。回廊の術式を仕掛けた犯人を捜しにいこっか」
「そうだね」
「すっかり忘れてたんだぞ」
「うん」
「思い出せてよかったじゃない。じゃあ、作戦会議にしよっか」
響はきちんと座り直すと、真剣な顔をして。
光も少し目が鋭くなったような。
…作戦会議といえば、前にもあったんだぞ。
七宝のとき。
「まず、犯人像について。術式を使うことを考えると、犯人は聖獣である可能性が高い。悠奈みたいな、ね」
「七宝もいるんだぞ」
「七宝?んー、またあとで会わせてもらわないとね」
「うん。今は七宝も寝てるんだぞ」
「へぇ~」
「話を戻すよ。回廊の術式は、術式の中でも特殊な部類に入る。設置罠型で、対象が範囲内に入ってくることで発動。術者の力の度合いで、イタズラや足止めくらいの効果から半永久的に対象を閉じ込める牢獄まで、様々に変化する」
「今回は、イタズラ程度だね。リュウは、破り方を知らなかったから、手こずっただけ。本当は、簡単に破れたんだよ」
「えっ、そうなの?」
「うん。また、あとで、教えてあげるね」
「うん!」
「とにかく、相手の力は大して強くはない。むしろ、わたしたちの方が強いと思う」
「うん。だから、懲らしめるって意味も込めて、逆に、罠を張ってみようと、思うんだ」
「罠?」
「そう、罠。自分が仕掛けてた回廊の術式に、自分自身が閉じ込めてられることで、犯人も更正するだろうって魂胆だね」
「でも、カイロウの術式は光が全部破っちゃったんだぞ」
「あー、大丈夫大丈夫。わたしが作れるから。どーんと複雑な回廊を作ってあげるよ~」
「無限階段くらいで、いいと思うんだけど…」
「光は甘ちゃんだねぇ。四つの扉とか面白そうじゃない?」
「四つの扉?」
「四角い部屋のそれぞれの壁に、扉がひとつずつ付いてるんだ。そのどれかを開けて進むんだけど、進んだ先も似たような部屋ばかり。そのうち、扉を開ける気力もなくなって…」
「要するに、趣味の悪い回廊だよ」
「もう…。そんなことを言ったらつまんないじゃない…。いちおう、組むのも解くのも最高難度の回廊なんだから…」
「今は、そんなの、いらないでしょ?簡単な、無限回廊と、破られないように、いくつか、術式を重ねておくだけでいいの」
「へ~い。分かりましたよ~だ。つまんない」
「つまんなくない!」
「はいはい…」
適当な返事をすると、響は手近にあった紙に何かの模様を描き始めた。
なんなのかな…。
これが、回廊の術式なの…?




