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「それで、クノさんはどうするの?」

「もうええんとちゃう?」

「そんなの、絶対にダメだよ!」

「でも、如月がああではなぁ…」

「す、すみませぬ…」

「如月が悪いわけじゃないんだから」


如月に寄り掛かって眠る七宝。

すっかり如月と仲良しになったんだぞ。


「起こす?」

「いや、それは可哀想やろ…」

「じゃあ、作戦を立てるだけ立てて、あとは私たちで探すしかないね」

「作戦て、そんな大袈裟なもんかいな…」

「大袈裟じゃないよ!人一人行方不明になってるんだから!」

「はぁ…。明日香か大和がおったら、まだ楽なんやけど…」

「そういえば、まだ帰ってきてないの」

「あの子たちは大丈夫だよ」

「なんで?」

「狼だからだよ」

「……?」


リュウは首を傾げる。

…自分もよく分からないんだぞ。


「それより作戦だよ、作戦!」

「…なんか楽しんでへんか?」

「き、気のせいだよ…」

「ほぅか」

「作戦と言っても、手分けをして探すくらいしかないと思いますが」

「まあ、そらそうやけど。ほなら、班分けやな」

「じゃあ、お兄ちゃんとリュウ、私はカイトと、ルウェは如月とだね」

「ええ…。即決かいな…」

「いいじゃない。それに、一番良い分け方だと思うよ。お兄ちゃんは召致が使えるし、リュウは飛ぶのが速かったから報告するにも速いだろうし。私はカイトと一緒に行けばいい。ルウェは、もしここにクノさんが帰ってきたときに悠奈を走らせられるでしょ?」

「悠奈に探してもらったらいいんじゃないのか?」

「あ…それもそうだね…」

「あかんあかん。あいつの鼻はアテにならん」

(む。どういう意味なのさ)


目の前が真っ白になって、次の瞬間には悠奈が足下にいた。

なんだか、ちょっと怒ってるみたいだけど。


「どういう意味も何も、そのまんまやけど」

(なんでボクの鼻がアテにならないのさ!)

「お前に任せて、探しもんが見つかった例しがない。すぐに美味そうな匂いにつられて、それを食い終わったらその場で寝るからな」

(そ、そんなことないもん!)

「あー、じゃあ、さっきの班で行くよ。あと、見つからなくても日が沈むまでに戻ること」

「分かっとる分かっとる」

(ねぇ!ボクは無視なの!?)

「じゃあ、ルウェ。頼んだよ」

「うん」

(ねぇってば!)


そして、みんなはそれぞれの方向に歩いていった。

悠奈はもう見えなくなったお兄ちゃんや望に、まだ文句を言っていた。



七宝がモゾモゾと寝相を変える。


「誰も帰ってこないね」

「そうですね」

「悠奈が帰っちゃったし…」

「まあ、よいのではないですか?いざ入り用のときとなれば、動いてくれるでしょう」

「うん。それはそうだけど…」

「私と話をするのは退屈ですか?」

「ううん、楽しいよ。如月は、葛葉みたいにいろんなこと知ってる」

「葛葉さま…ですか」

「うん。葛葉ね、いろんなことを教えてくれるの。何かのお話とか、シュクジョとしてのタチイフルマイとか」

「お姉さまなのですか?」

「ううん。自分と同じ歳なんだぞ」

「ほぅ」

「でもね、姉さまとセトもいろんなことを教えてくれるよ」

「お姉さまもいらっしゃったのですか」

「うん。姉さまは、術式を使うのがすごく上手いんだぞ」

「術式使いですか。最近は減っていると聞きますが…」

「そうなの?」

「はい。なぜか、術式適性のある者が減っているらしいのです。聖獣との契約適性も、日に日に悪くなっていってますし…。これは、何かの前触れなのでしょうか…」


深刻な顔をする如月。

…術式、か。

手の平に小さな旋風を作ってみる。


「ルウェさまは適性があるんですね」

「うん。姉さまと葛葉に貰ったの」

「貰った…というと、力の授受をしたということですか?」

「ジュジュ?」

「あげたり貰ったり、ということです」

「あ、うん。そうだよ」

「ふむ…。しかし、そういった力は完全に先天的なもののはずですが…。あ、そうか」

「……?」

「本来、術式を扱う力というのは訓練によって引き出すものなのです。私たち聖獣も、何年か修行を積んで使えるようになります。ごくごく稀に訓練なしでも術式を使える、いわゆる"天才"もいるのですが。それに関連して、術式の適性や潜在能力が非常に高い者は、何かふとした切っ掛けで術式を使えるようになると聞きます。天才までとはいかなくとも、たとえば近くで発動した術式に共鳴して術式が使えるようになった等、半天才的能力の持ち主の話もあります」

「ふぅん」

「そして、ルウェさまはその半天才的能力の持ち主だったのでしょうね」

「へぇ~」

「…えらく他人事ですね」

「ハンテンサイテキノウリョクの持ち主とか言われても、自分は姉さまと葛葉に力を貰って使えるようになったってことは変わらないんだぞ。姉さまと葛葉の温かさは変わらないの…」

「ふふ、そうでしたね。私としたことが迂闊でした」

「えへへ」


ごめんなさいの代わりに、頬っぺたを舐めてくれた。

でも、如月が謝ることはないんだぞ。

如月にも、自分が姉さまと葛葉を大好きなこと、伝えられたし。


「それで、いつまでそこに隠れているつもりなのですか、みなさん?」

「さすが如月だね。気付いていたのか」

「当たり前です」

「クノお兄ちゃん!明日香と大和も!どこに行ってたの?」

「それは他のみなさまが集まってから改めて話させていただきますので、少し待っていてもらえますか?」

「そっちの方が効率良いしな」

「うん、分かったんだぞ。じゃあ、悠奈」

(やっと出番だ~)

「悠奈は明日香と共に望さまとカイトの方へ行きなさい。そちらの銀狼は、お兄さまとリュウさまの方へ」

(分かった)「ワゥ」「ほいほい」


そして三人はすぐに、それぞれの方向へ走っていった。

キッと睨む如月の視線を、なんとなく困ったような笑顔で受け止めるクノお兄ちゃん。

…どこに行ってたのかな。

早く聞きたいんだぞ。

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