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「ふむ。白い世界」
「うん。真っ白な世界」
「白というのは全ての光を混ぜた色だが…」
「黒じゃないの?」
「黒は、全ての色を混ぜた色だ」
「……?」
(クーの色も白だよ)
「金だからな。でも、それは白という色であって、全ての光を混ぜた色ではない」
「回りくどいな」
「いっつもそうだ。このジジィは」
「少しは頭を使わないと、せっかく若いのに錆び付いてしまうぞ」
「答えが分からんなぞなぞなんか、やるだけ無駄だって言ってるんだよ」
「答えが分からないのなら考えればよい。考えるというのが若さだ」
「考えるのは年寄りの役目だろ」
「年寄りの役目は、それまでの経験から導き出されることを伝えるだけだ」
「そうかぁ?」
「口では勝てんて。諦めろよ」
「そんなことないぞ!」
大和は諦めが悪いんだぞ。
カイトは落ち着いた様子で、口から細く炎を噴いていた。
「あ、そうだ。真っ白な世界で、黒い炎が出てきたんだ」
「黒い炎か」
「うん」
「黒い炎といえば明日香だろうな」
「明日香?」
「ワゥ」
(明日香ってなんでも出来そうだよね!)
「ルウェの夢にも出ていったの?」
「ワゥ」
「えぇ~、ホントかなぁ」
「本当に夢だったのか?」
「うーん…。分かんない」
「ワゥ!」
明日香は飛び上がり、宙返りをした。
うん。
明日香がそう言うなら、たぶん夢じゃなかったんだぞ。
「えっとね、わたしも真っ赤な世界にいる夢を見たことあるの」
「ほぅ」
「でもね、燃えてる火の中にいるみたいに、赤色がユラユラ揺れてたの」
「ふむ。それは自分の本質を見ていたのかもしれんな」
「本質?」
「自分の内側のことだ。赤だったのなら、リュウの本質は火なのだろう」
「火?」
「望と同じ色だ」
「あ、そうだ。それならさ、リュウにも聖獣を紹介してあげてよ」
(えぇ~…)
「何よ、七宝。イヤなの?」
(だって、また火が増えちゃうもん…)
「どういうこと?」
「七宝が属する金は、火に弱いのだ。土を挟めば別だろうが、基本的には金は火に近寄らない。若い者は特にな」
「俺から言わせてみれば、弱い属性だとか強い属性だとか、そんなのは誰かが勝手に決めた法則でしかない。属性で相性が良くても、気に入らないやつなんて数えきれないくらいいるからな」
「お前は好き嫌いがはっきりとしているからな。誰に対しても、もう少しやんわりと接することは出来ないのか」
「無理だな。気に入らないやつは気に入らない。なんでそんなやつらにもニコニコしないといけねぇんだ」
「世を渡るためには、その方が便利だからな。まあ、お前もそのうち分かるだろう」
カイトはまた身震いをして、火の粉を散らした。
キラキラと落ちていく火の粉は、なんだか雪のようにも見えた。
「しかし、だ。全く変化のない真っ白な世界なんていうのは、ルウェの本質ではないだろう。もっと別の何かだ」
「別の何かって?」
「それは、私にも分からない。単調な世界というのは…む?」
「なんや。ド忘れか?」
「いや。真っ直ぐ飛んでくるぞ」
「え?何が?」
「もうすぐ来る」
その真っ直ぐ飛んできた何かは、空中で急停止を掛けると、望の肩に泊まった。
「うわっ!えっ、何!?」
「大丈夫です。クーア旅団で育てている、速達用の鷹です」
「えっ、鷹?」
「よくここが分かったな。そら、こっちにおいで」
「………」
クノお兄ちゃんに呼ばれるまま、望の肩から飛び移る。
周りを注意深く見て、少し警戒してるみたいだったけど。
「よし、良い子だ。伝書は…これか」
「なんて書いてあるんですか?」
「お前なぁ…。いきなり手紙の内容聞くか、普通?」「あ…」
「別にいいですよ。これからの振舞いについての内容ですし」
「どんな内容だったんだ」
「しばらくしたら如月を送る、とのことでした。だから、この鷹丸に今の位置を覚えさせて帰してくれ、と」
「そうだ。お前はよくここが分かったな」
「………」
「なんだ。無口なんだな」
「………」
「喋らねぇって。言葉が分かってないんだろ?」
「いや。位置を伝えることが出来るのだから、話せるということだろう」
「でも実際、全く喋らないじゃねぇか」
「だから、無口なのだろう」
「えっと、もう帰しても良いですかね」
「こいつらの言い争いなんか聞いてたら、いつまでも帰されへんで」
「どういう意味だ」
「どういう意味も何も、そのままの意味だろう。他意があるとも思えない」
「ほら、はよ帰せよ」
「あ、はい」
クノお兄ちゃんは鷹丸に何か言うと、空に向かって飛ばした。
しばらく近くでクルクル回っていたけど、そのままどこかに飛んでいって。
「ちっ。結局、喋るのか喋らねぇのか分からなかった」
「鷹丸は、速達用の鷹の中でも一番よく喋ると如月が言っておりましたが」
「じゃあ、喋るんじゃねぇか…。黙り決め込んでよ…」
「緊張していたのではないか?あるいは、お前に睨まれて畏縮していたか」
「お前だろ。同じ鳥同士、仲良くやれよ」
「大和にそんなことを言われるとは思わなかったな」
「減らず口ばっかり叩いてるんじゃねぇよ」
「減らないから減らず口なのだろう。それに、それはこちらの台詞というもの」
…まだまだ続きそう。
でも、カイトが落ち着いているお陰で、昨日のお兄ちゃんと大和みたいな大喧嘩にはならないみたいで良かったんだぞ。




