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山のてっぺんから、ヤマトが全部見えた。

周りがグルッと山で、その一番下にヤマトがある。


「盆地やな」

「ルクレィ三平野のひとつだね」

「平野?平野ゆうたら海に面してやなあかんやろ。ルクレィは内陸国やから、平野は一個もないぞ。ルクレィ三盆地やな」

「そんな細かい分類なんて知らないですよ…」

「海に面してるか面してないか、だけやろ。細かくないし」

「もう…。いいじゃない、そんなこと」

「そうだ。平野か盆地かなんて、些細な問題じゃねぇか」

「あ、誰か飛んでる」

「飛脚だな」

「あれは、鷹印の飛脚便なの」

「えっ、あんな遠くのものが見えるの?」

「うん。荷物に鷹の印が付いてる」

「へぇ~。よく見えるね」

「空を飛ぶ種族はだいたい目が良いからな。飛ぶ速度が速くなればなるほど、目も良くなると言われてる」

「ふぅん。じゃあ、白龍が一番目がいいのかな」

「さあな。俺は、白龍は見たことない」

「えっ、そうなの?」

「オレはあるで。まだ子供やったけどな。リュウのなんかよりよっぽど小さい翼で、ピューッて飛んでいきよる」

「小さいってどれくらい?」

「せやな…。背格好はリュウに近いかんじやったけど…こんくらいかな」


お兄ちゃんは、リュウの翼を広げて、手で示す。

それはホントに小さくて、リュウの翼の半分もなかった。


「ん?傷だらけやな、お前の翼は」

「龍の翼は飛ぶためのものではないと聞いたことがある」

「うん。飛ぶときは疾風の術式を使ってるの。翼は、方向転換とかにしか使わないの」

「で?なんでこんな傷だらけなん?木に擦るんか」

「ううん。戦いで使うことがあるの」

「はぁ?戦闘訓練でも受けてるんか?」

「うん。大きくなったら旅団天照でお仕事して、桐華お姉ちゃんとか遙お姉ちゃんを助けてあげるの。だから、カルアお兄ちゃんにゴシンジュツを教えてもらってるの」

「護身術…」

「うん」

「まあ、頑張れよ…」

「えへへ。ありがと」


お兄ちゃんに撫でてもらって、リュウは嬉しそうに翼をパタパタさせる。

でも、お兄ちゃんは何か複雑な顔をしていて。

なんでだろ?


「まあ、気性の荒い龍ほど翼が大きくなるって言われてるからな。戦いで使うこともあるかもしれない。鱗があると大人しいとも聞くが…」

「えっと、こう…ね、相手の顎を狙って、下から打ち上げるといいって。あと、少し加速をつけて、首に当てるの。その訓練のとき、打ち込んでいた丸太が折れて、それで怪我しちゃったの」

「…そういえば、龍の翼に付く筋肉の量は、足に付く筋肉と同等以上だと聞いたことがある」

「えぇ…。怖いこと言うなよ…」

「え?何が怖いの?」

「足ってのは、毎日重たい身体を上に乗せて移動しやなあかん。だから、筋肉も付きやすいし、強くなりやすいらしい。腕の筋肉をいくら鍛えても、足の筋肉には追い付けんってのも聞いたことあるな…」

「それ、ホントなの…?」

「さあな。聞いた話やし」

「えぇ…。でも、すごいよね。翼って、そんなに強いんだ~」

「えへへ。くすぐったいよ、望お姉ちゃん」


望は、リュウの翼を撫でたり広げたりしている。

…自分もちょっと触ってみたい。

翼に手を触れると、リュウはゆっくり広げてくれた。

骨がある上の太い部分は鱗で覆われていて、すごく硬かった。

その下の布みたいなところは、ところどころに傘の骨みたいのがあったけど、他は柔らかくて細かい毛が生えてて、触ると気持ち良かった。


「あ、ここ、鱗が割れてる」

「ここは剥がれてるな。どんな訓練しとるんや…」

「カルアお兄ちゃんも、遙お姉ちゃんに怒られてたの。でも、わたしがやりたいって言ったことなのに…」

「まあ、カルアってやつの監督責任の問題になってくるやろな。子供に厳しい訓練を受けさせて、しかも怪我までさせたら」

「うん…。遙お姉ちゃんも、そんなこと、言ってたの…」


リュウはなんだかしょんぼりして、翼にも元気がなくなって。


「ちょっと、お兄ちゃん…」

「んー…」

「えっと…あ、そうだ。ル、ルウェ。この前、組合に行ったとき、広場で遙さんとカルアさんに会ったよね」

「うん。会ったんだぞ」

「二人ともすごく仲が良さそうだったけど、もしかして結婚とかしてるのかな?」

「ううん…。遙お姉ちゃんとカルアお兄ちゃんはケッコンしてないよ…。でも、五年くらいツキアッテルって桐華お姉ちゃんが言ってた」

「へぇ…。五年…」

「うん。それでね、この前カルアお兄ちゃんの荷物を見たらね、二人の名前が彫ってある小さな刀があったの。桐華お姉ちゃんに見せたら、チギリノショウニンなんだって教えてくれたの」

「ほぅ。契りの証人か。そういえば、紅葉に渡すのを忘れていたな」

「おい…」

「まあ、聖獣の契りの証人なんか、荷物になるだけだからな」

「いや、ちゃんと効果あるやろ!」

「ん?んー、あったような、なかったような…」

「はぁ…。こいつは…」

「ははは。でもまあ、忘れるくらいなんだ。大したことでもないんだろうよ」

「充分、大したことやと思うけどな」


大和が大笑いしてるのを見て、お兄ちゃんは呆れ顔。

…そういえば、チギリノショウニンって、何の役に立つんだったっけ?

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