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「ほなな。行ってくるわ」

「うん。気を付けて」

「大丈夫大丈夫。殺したって死なんから。な?」

「いったいオレをなんやと思っとるんや…」

「んー。生き霊」

「………」

「はは、冗談冗談。…気ぃ付けて」

「ああ」

「望とルウェと明日香もな。また珍しいもん見つけたら、ウチが鍛えたるから」

「うん。次は、万石を持ってくるんだぞ」

「万石かぁ。そりゃ楽しみやな」

「柚香ちゃんも真さんもお元気で」

「うん」「ほいほ~い」

「じゃあね」

「ちょっ、ちょっと待った!」

「あ、お母さん」

「はぁ~。間に合ったぁ」

「どないしたん?」

「はい、これ」


何かの包みを渡される。

紐でしっかり結ばれていて、中身は分からない。


「あ、お弁当ですか」

「え、あれ?開けてびっくり作戦が…」

「なんや、図星かいな」

「そうだよ。お弁当だよ。それにしても、よく分かったね」

「匂いがしますから」

「あー、そうだね、うん。望ちゃんが狼だってこと忘れてた」

「お弁当か~」

「お昼にね。ゆっくり食べてよ」

「うん!」


自分は全く匂わないけど。

でも、お弁当なら楽しみなんだぞ!


「またしばらく帰らんと思うわ」

「ん?そう?まあ、気を付けなよ。じゃあ、もう行った行った。時間を掛けると余計に名残惜しくなるからさ」

「ああ。ほなら、またな」

「それじゃあ、また」

「行ってきます!」

「うん。行ってらっしゃい」「またな~」「行ってらっしゃ~い」


大きく手を振って。

三人は、ずっと見送ってくれて。



大きな通りはまだまだ続く。

通りの両脇も、普通の家から食べ物を売ってるお店へ。

そして、今は石を売ってるお店。


「これからしばらくは石を見れんからな。しっかり見とけよ」

「うん」

「そういえば、どっちに行くの?テヌカイかベラニクか」

「知らんがな。望が決めろよ。オレは護衛やし」

「もう…。ルウェはどっちがいい?」

「んー…」

「そもそも、ルウェはテヌカイもベラニクも知らんやろ。どうやって決めろゆうねん」

「あ、そっか」

「クノお兄ちゃんは、テヌカイに行ったんだよね?」

「そうだね。テヌカイは国境を越えることになるけど…」

「ベラニクやったら、ほとんどルイカミナに行くようなもんやし」

「長之助さんはそっちかな」

「せやろ。ルクレィ分隊ゆうてたし」

(ボクは、テヌカイに行きたい!)

「よっしゃ。ベラニクやな」

(えぇーっ!)

「悠奈はなんでテヌカイがいいの?」

(だって、美味しいものがいっぱいあるんだもん)

「そう…」

(なんなのさ!いいじゃん。美味しいもの、食べたい!)

「そういや、望はどういう道やったん?」

(無視しないでよ!)

「お前はいちいち五月蝿いねん。ベラニクにも美味いもんはいっぱいあるし」

(えっ、そうなの?)

「はぁ…。なんも知らんやっちゃな…」

(ベラニクかぁ。ベラニクもいいなぁ)

「結局、美味いもんだけかい…」

(えっと…うん…)

「認めんなよ…」

(あ、あはは…。じゃあねっ!)

「まったく…」

「ふふふ。でも、悠奈は美味しいものが食べたいってことが分かっただけでもよかったじゃないですか」

「あいつの食い意地は今に始まったことやないからな」

「でも、それじゃあ、テヌカイとベラニク、どっちにするの?」

「うーん…。どっちかなぁ…」


望は顎に手を当てて考え始める。


「うーん…」

「わたしは、ベラニクがいいな」

「じゃあ、ベラニクにしよっか…」

「ベラニクやな」

「うん」

「よっしゃ。分かった」

「今は、カツルとかソムナが旬なの」

「へぇ~。よく知ってるんだね」

「えへへ」


望は、赤い龍の女の子に良い子良い子して。

それに応えるように、大きな翼をパタパタさせる。


「それじゃあ、ベラニクに向けて出発進行!」

「おぉーっ!」

「それで、ヤマトはどこまであるの?」

「この職人街抜けて露店通りを過ぎて、ほんで、ヤマト名物の大鳥居をくぐってやっと街を抜けるってかんじやな」

「街を抜けるだけで大変なんだぞ」

「せやな」

「じゃあ、路線馬車使う?」

「金かかるやろ。そんなん歩いても知れとるし」

「まあ、そうかもしれないけど…」

「あっ」

「ん?どうしたの?」

「わたし、あれが欲しいの…」

「あれって…黒曜石のこと?」

「うん…」

「んなもん、こうたるがな」

「ホント…?」

「ああ。ほれ、こうてこい」


お兄ちゃんは、女の子にお金を渡す。

それを受け取ると、女の子は嬉しそうに石屋さんまで走っていって。


「…それで、あの子は誰なの?」

「さあな」「知らないんだぞ」

「そっか。…って、えぇっ!?」

「なんや、やかましいやっちゃな」

「だ、だって、お兄ちゃんの知り合いの子とか思うじゃない!」

「あんな紅龍の小娘なんか知らんで」

「じゃあ、なんで…」

「誰だってええやん、別に。知らん子やからゆうて、はねのけるんかい」

「そ、そういうわけじゃないけど…」

「何のお話?」


女の子が戻ってきた。

ピッタリ手に収まるくらいの黒い石を持って。


「ほぅ。なかなか綺麗なやつやな。結構おっきいし」

「うん!あ、これ、お釣りだよ」

「そんなんええて。お菓子でもこうとけ」

「えっ、でも…」

「子供が遠慮するな。素直に受け取っとけ」

「…うん」

「よしよし」

「えへへ」


女の子はニッコリと笑う。

すると、頬っぺたとかおでこの鱗がキラキラと光って綺麗だった。

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