表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
521/537

521

「大丈夫だと思う?」

「今さら不安になってるのか?」

「そうじゃないけど…」

「まあいいじゃない。とりあえず、行ってらっしゃい」

「うん…。行ってきます…」


さっきまですごく元気だった龍王は、今はなんだかすっかり萎れてしまって。

天華さんの見送りにも、なんだか力のないかんじで返事してるし。

…やっぱり、ちゃんと認めてもらえるかどうか、不安だもんね。

シエラ、すごく心配してるみたいだし…。


「はぁ…。しかし、なぜ私もついていかなければならないんだ」

「いいじゃん。澪、暇だったんでしょ?」

「暇ではない。まだ仕事が残っているというのに…」

「自分は、澪と一緒に行けて嬉しいんだぞ」

「………」

「あっ、照れてる」

「照れていない」

「えぇ、照れてるよー」

「照れていない」

「ははは。お前たち、本当に仲がいいな」

「………」

「まあ、無愛想だけど、結構可愛げがあるしね」

「まあ、共に旅をする仲間だしな」

「シエラ…。オレが旅に出るのは、やっぱり不安かな…」

「そりゃ不安は不安だろうけど、だからって龍王も不安になることはないんだ。自信を持って行かないと、余計にシエラを不安にさせるだけだろ?」

「それは…そうかもしれないけど…」

「旅に出たいんだろ?」

「うん…」

「それなら、胸張って行け。大丈夫だ。きっと上手くいく」

「うん…」


龍王がこんなんじゃ、シエラも旅を認められないかもしれないよね。

でも、龍王の気持ちの問題だし…。

どうしたらいいのかな…。


「ルウェが心配することはない」

「でも…」

「あれだけはしゃいでいたんだ。そのときになれば、ちゃんとやれるだろう」

「そうかな…」

「ああ。龍王なら、大丈夫だ」

「なんだ?ルウェと秘め事か?」

「そういうものではない」

「ふぅん。そういえば、澪は、なんでルウェにそんなにベッタリなんだ?」

「ベッタリではない」

「ベッタリだろ」

「ベッタリだね。私から見ても」

「………」

「でも、どちらかと言えば、妹想いのお姉ちゃんみたいだな」

「男だよ、もともとは」

「いや、知ってるけど…」

「女の子の身体で何してるんだろねー。やらしいー」

「………」

「まあ、澪はあんまり興味なさそうだけどな、人間の女には」

「えぇ、じゃあ、ルウェは?」

「それは、ほら。妹みたいなかんじだって言っただろ」

「澪の肩持ってる?」

「いや、なんでそうなるんだよ…」

「だって、男同士じゃない」

「あのな…」

「フゥも、女の子に化けたいって思ってるんじゃないの?」

「思ってたら、そうしているよ…。性別くらい、簡単に変えられるし…」

「えぇー」

「お前は、俺たちに何を望んでるんだよ」

「別に。でも、男って、なんかやらしいじゃない」

「どんな偏見なんだよ…」

「澪は、毎日のように、ルウェをお風呂に連れ込んでるし!」

「一緒に風呂くらい入れさせてやれよ…」

「ルウェに貞操の危機が!」

「テイソー?」

「身の純潔のことだ。処女であることや、配偶者以外との性交渉を持たないこと」

「……?」

「明日香が余計なことを言うから、ルウェが変な言葉を覚えようとしてるぞ」

「うっ…。でも、ルウェの貞操が…」

「強情だな…。だいたい、澪も女の身体なのに、貞操の危機も何もないだろ」

「あるよ!百合とか!」

「お前、なんか余計なことばかり知ってるな…」

「余計なことじゃないもん…。澪だって男なんだから、女の子の身体に興味を持ってもおかしくないでしょ!」

「人の話を聞いてるのか、お前は…。澪は、人間の女に興味を持つようなやつじゃないって」

「むぅ…」


明日香が心配してくれてるのは嬉しいけど、なんかちょっと的外れかな。

そりゃ、身体のこととか、なんかいろいろ教えてもらってるけど…。

でも、澪なら大丈夫だから。


「確かに、人間の女の身体に興味はない。それに、ルウェは守るべき主…いや、トモダチだ。自らの手で穢すわけがないだろう」

「そんなの…。主従関係から始まる恋だってあるでしょ!」

「小説の読みすぎだ」

「うぅ…。でも、澪は、ルウェのことが好きなんでしょ?」

「ああ」

「ルウェに興味があるんでしょ?」

「ある」

「じゃあ、心配だよ…」

「意地を張るな。な、明日香。澪だって、そういう意味で言ってるんじゃないってことは、よく分かってるはずだ」

「………」

「お前も、ルウェのお姉ちゃんとして、ルウェを守ってやりたいと思ってるのはよく分かる。でもな、澪だって、同じ気持ちだ。お前は、それが分からないようなやつじゃないだろ?」

「分かるけど…」

「そういうことだ。旅の仲間同士、冗談でも歪み合ったり、疑うようなことはするな。特に、つまらない意地の張り合いなんてやめろ」

「はぁい…」


明日香も、ふざけることはあっても、そんなことはしないって分かってるけど。

でも、フゥは、ふざけてるって分かってても、やめた方がいいって言ってるんだよね。

…確かに、ほんの少しの取り違えで、本当の喧嘩になることだってあるし。

自分と葛葉も、そういうことで喧嘩したことがあるから、よく分かる。


「ふふふ」

「ん?」

「明日香と澪とルウェ、今、同じ顔してる」

「顔?」

「うん。みんな、真剣に何かを考えてる顔だった」

「そうかな…」

「そうだよ。一緒にいると、そういうところも似てくるんだね」

「えぇ…。やだなぁ…」

「オレとフゥも、みんなみたいになれるかな」

「なれると思うぞ。ただし、お前がちゃんと俺の言うことを聞いて、ちゃんと旅が出来ていたらの話だけどな」

「むぅ…。分かってるよ…。フゥのイジワル!」

「ははは。まあ、俺に似れば、お前も意地悪になるかもな」

「イヤだ!絶対に似ないもん!」

「そうか。楽しみにしてるよ」

「絶対に似ないからね!」


龍王、なんだか元気になったみたい。

澪と明日香のお陰かな。

七転び八起き?

転んでもタダでは起きない?

なんか違うような気もするけど…。

でも、これで、シエラを安心させてあげる準備は整ったと思うんだぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ