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「ヤーリェはどこに行ったんや?」

「あ、そういえば、朝も見なかったですね」

「どこに行ったんやろな」

「うーん…。クノさんなら知ってるかも」

「なんでやねん…」

「ねぇ、この石、すごく綺麗なんだぞ!」

「ホントだね。えっと…紫水晶ですか?」

「せやな。それにするか?」

「んー…」

「あの、失礼ですが、そちらの子はどこの旅団の方なんですか?」

「どこにも所属してへんけど。なんで?」

「それって、クーア旅団の腕輪と旅団天照の名札ですよね。だから、どっちに所属してるのかなって思って…」

「こっちの腕輪は本物やけど、名札は旅団天照やのうてヤゥトの紋章や。まあ、腕輪が本物ゆうてもクーア旅団におるわけやないんやけど」

「でも、腕輪だけでも本物だとしたら、あの三旅団のひとつに認められてるってことですよね。それってすごくないですか?」

「さあ、どうかな。あいつ、すごい気まぐれやしな。もしかしたら、深い意味なんか全くないんかもしれんし」

「あいつって?あ、まさか、幻の旅団長ですか?」

「なんやそれ…」

「ごく一部の人しか知らない、クーア旅団の旅団長のことですよ!」

「そんな大層なもんか?」「副旅団長が乗ってる馬車に誰かが乗ってるらしいってことだけは分かってるんですが、それ以上のことは全くの謎なんですよ。普通に通りを歩いてるとの噂もありますが、旅団長が誰か分からないから真相は不明なんです…」

「そういえば、タルニアさんが旅団長として人前に出たのって、警察でだけですよね」

「あれ?せやったか?」

「たぶん」

「たぶんて…」

「タ、タルニアさんですか…。女性のような名前ですね…」

「女性のようなって、実際女やし」

「えぇっ!?貫禄たっぷりの厳格なおじいさんが取り仕切ってると思ってました!」

「えぇ…。オレと同じくらいの若い姉ちゃんやぞ…。背はこいつくらいやけど」

「タルニアさんの方が、ちょっとだけ高いですよ」

「せやったかな…。まあ、胸は断然あいつの方がでか…ってぇ!」

「何か言いました?」

「痛たたっ!痛いって!」


望はお兄ちゃんの足をグリグリと踏んでいた。

…どうしたのかな?

明日香は大きな欠伸をしていて。


「ねぇ、これにするんだぞ!」

「ほら、望、ルウェ、ゆうとるやん!足、どけろって!」

「ふん。私が払いますから、その必要はないですね」

「石屋さんのお兄ちゃん、これ~」

「はぁい。瑠璃の小、上ですね。七百円です」

「な、なんや、ちょっと高くないか?」

「最近、瑠璃に限らず、なぜか石の採掘量が減ってるんですよ。脈の力が弱ってるとか、いろいろ言われてますけどね。万石の採掘量も、これからどんどん落ちるって言われてます」

「ふぅん…」


なんだか考え込みながら、お兄ちゃんはお財布からお金を取り出して。

足を踏まれてるのはもういいのかな…。


「あっ!私が払いますって!」

「オレがルウェにこうたるって約束したんや。オレが払わんかったらどないすんねん」

「でも…」

「それに、ルウェは望だけの妹ちゃうねんぞ」

「………。分かりましたよ…」

「じゃあ、お釣りの三百円。毎度ありがとうございます」

「ああ。また来るわ」

「はぁい」


お兄ちゃんは軽く手を振ってお店を出る。

自分も石屋さんのお兄ちゃんに一度お辞儀をして、お店を出た。


「あ、望はいらんかったんか?」

「何がです?」

「石や石。金属でもええけど」

「べ、別にいいですよ。欲しかったら自分で買いますし…」

「ほうか。ほなら、これやるわ」

「えっ…」


お兄ちゃんが懐から出して望に渡したのは、緑色の綺麗な石。

何なのかな?


「電気石や。昨日、偶然見つけたんやけど」

「………」

「この緑色のやつは特に珍しいやつやねん」

「あのっ」

「ん?どうした?」

「………。…いくらしたんですか?」

「そんなん聞いてどないすんねん」

「お金、払わないと…」

「もう払てあるから大丈夫や」

「ち、違います!」

「…望は、ルウェに何かやるときに代償を求めるか?」

「………」

「それとおんなじや。怒らせたんは悪いと思うけど…素直に受け取ってくれんか?」

「………。…うん」


望はお兄ちゃんに貰った電気石をギュッと握り締める。

そして、顔を上げて


「ありがと、お兄ちゃん!」

「…へへっ。やっぱり、笑顔が一番可愛いな」

「うん…!」


お兄ちゃんに頭を撫でてもらって、とっても嬉しそうに尻尾をパタパタと振る。

うぅ…


「自分も!自分も撫でて!」

「ほいほい。分かってる分かってる」

「えへへ」


なんだか嬉しくて、お兄ちゃんをギュッと抱き締めた。

お兄ちゃんは、石の匂い、金属の匂い。


「自分の大好きな匂いなんだぞ!」

「え?何が?」

「なんでもない~」

「なんや、変なルウェ」

「ん~」

「わわっ。どうしたの、ルウェ?」

「望も大好き!」


望にもギュッと抱きついて。

なんだか分からないけど、今日はとっても嬉しい日なんだぞ!


これを書いたのが大晦日でした。

もう二月も終わりですね…。

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