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「次ってどこだっけ」

「ルランちゃうんかよ」

「あぁ、ルランね。夜には着くかな」

「せやな」

「ルランって遠いの?」

「んー。遠くはないかな。歩くには歩くけど」

「ふぅん」

「ルクレィは街と街の間隔が狭いからな。半日から一日ありゃ隣街に行けるんがええわ。長くても二日三日やし」

「他のところは?」

「せやなぁ。オレんとこのムカラゥは、隣街に行くのに最低四日は掛かるな。まあ、中心の街がすごいでかいねんけど。ユールオとヤマトとルイカミナ合わせても足りんくらいな」

「へぇ。すっごいんだ」

「ホンマすごいで。まあ、また今度ムカラゥに行ったときは案内したる」

「案内出来るんだ」

「んー。出来んかもしれんな。あの国は刻一刻と変わっていっとるから」

「変わってるの?」

「オレのいた頃とは随分変わっとるやろなぁ」

「そうなの?」

「たぶんな」


街って、そんなにすぐに変わっちゃうものなの?

ヤゥトは全然変わらなかったけど。

…ヤゥトはあんまり変わってほしくないかな。


「そういやさ、ムカラゥと言えば、あのおじさんはどうしたのかな」

「はぁ?」

「お兄ちゃんと一緒にいた人」

「あぁ…。さあな。まあ、簡単に死ぬようなタマちゃうし。旅してたら、そのうちまた会えるんとちゃうか」

「手紙とかは?」

「そんなもんないわ。要らんしな、別に」

「そんなこと言って。寂しいんじゃないの?」

「アホ言うな」

「いてっ」


お兄ちゃんは、望の頭を小突いて。

…でも、本当に、あのおじさんはどうしたのかな。

名前…忘れちゃった。

また聞かないと…。

また、会えるよね。


「ルウェさま、ナナヤさま」

「えっ?」

「あ、薫。どうしたの?」

「蓮華が目を覚ましたぞ!」

「あ、雷斗」

「目が覚めたんだ、あの子」

「はぁ…。面倒事が残ってたな、そういえば…」

「もう、そんなこと言わないの。それで?こっちに来るの?」

「ええ。しかし、龍脈がないので長居は出来ませんから、私たちがおおよそのところを話すこととなっています」

「ほんなら、はよ話せよ」

「もう…」

「蓮華が、ナナヤにお礼を言いたいって!」

「お礼?なんで?」

「契約してくれるからって。これで自由に旅が出来るって!」

「はぁ?契約?お前、そんな約束したんかよ。出来るかどうか分からんゆうたやろ」

「えっ?私も、契約出来たらいいなって言っただけで…」

「はい。…雷斗。情報は正確に伝えなさい」

「でも、伊予さまだって…」

「それでもだ。…すみません、ナナヤさま。伊予さまの見解では、ナナヤさまは蓮華姉さ…蓮華とも契約出来るであろう器を持っているだろうということなのです。しかし、詳しく調べてみないと、実際のところは分かりません。ですので、一度蓮華がここに来ますので、ご協力を仰ぎたいのです」

「どういうこと?」

「器の大きさを調べるには、実際に横に並べて見てみやなあかん。ルウェみたいに無尽蔵にあるようなやつはともかく、ギリギリんとこしか持たんようなやつらは、しっかり調べとかな。器の大きさを超えたら、双方に普通に契約するときの何十倍何百倍も負担が掛かるからな。特に、昨日ぶっ倒れてたような病み上がりなんかが失敗したら死にかねんからな」

「まあ、そういうことです」

「んー。だいたいは分かったよ?それで、私は何をすればいいの?」

「なんもする必要はない。ボヤッと突っ立っとれば、こいつらで判断しよるから」

「えぇ…。そうなんだ…」

「概ねはそんなところです。では、呼びますよ」

「あっ!」

「えっ?」

「ちょっと待って…。なんか、緊張してきた…」

「今更やな、お前…」

「だってさ、だってさ、緊張しない?ね、望?」

「えっ?わ、私?」

「関係ないからゆうて油断してたやろ、お前」

「そ、そんなことは…」

「ナナヤかて、さっさと覚悟決めぇな」

「ナナヤお姉ちゃん、頑張るの」

「お、おぅ」


リュウに元気付けられて、ナナヤは気合いを入れて。

それから、何かブツブツ言って。


「よしっ!バッチこーい」

「はい。分かりました」

「こんにちは~」

「早っ!」

「待ってたんだからね」

「ビックリした…」

「手短に行くよ」


蓮華はナナヤに素早く近寄って、じっくりと見る。

ナナヤは、ジッと立ちすくんでる。


「はぁ、はぁ…。だ、大丈夫みたいね…」

「蓮華姉さん、大丈夫?」

「わ、私、帰るね…」

「うん…。無理しないで」

「はいはい…」


そして、本当に雷みたいに、あっと言う間に消えてしまった。

…ナナヤは、まだカチカチに固まってるけど。


「ナナヤさま。終わりましたよ」

「えっ、あ、うん。わ、分かった」

「お前、案外ビビりやねんな」

「ビ、ビビってなんかないよ!」

「ふん。あいつが目の前におるだけでなんも出来んかったくせに」

「そ、そんなことないよ!」

「カチカチに固まっとったやないか」

「固まってない!」

「お二人とも。静かになさってください。みっともない」

「………」

「では、話の続きです。契約出来そうということで、先程の雷斗の発言に戻るわけです」

「どういうこと?」

「はい。雷斗から、ナナヤさまは契約に積極的だと聞いていたので、器に充分な余裕があれば契約してくれるだろうと」

「もちろんだよ。蓮華さえよければ」

「ええ。それで、体調が回復し次第、契約をさせていただこうという話をしていたのです。しかし、先程見ていただいた通り、龍脈のない場所では、契約していない限り、私たちは長く存在していられません。なので、代わりにお礼の言葉を言っておいてくれと予め言われていたのですが、それは契約出来ると判断出来たときの話です。先にお礼を言うなんてことは…」

「薫、話が長すぎるんだぞ」

「確かに長いの」

「オレ、ちょっと居眠りしてたわ」

「えっ?あ、はぁ…。す、すみません…」

「ははぁ。それで、雷斗がさっき言ってたことに繋がるんだね」

「はい。そういうことです」

「分かった分かった。じゃあ、私も楽しみにしてるから、早く良くなりなさいよって言っておいてくれる?」

「はい。分かりました」

「じゃあね、ナナヤ!」

「はいは~い」


そして、二人とも消えてしまった。

…雷斗、先に言っちゃダメだったんだぞ。

まあ、でも、ナナヤと蓮華の契約が決まってよかったんだぞ。

ナナヤもすごく嬉しそう。

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