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「それにしても、意外とあっさりだったよね、サン」

「えっ?うん。…意外?」

「だってさ、ユタナんときだって、あんなに寂しがってたのに」

「絶対に笑顔で送り出すって決めてたんでしょ?そう言ってたし。今回だって、寂しかったはずだよ。でも、サンは芯の強い子だから」

「うん。だから、全然意外じゃないんだぞ」

「…そっか。なぁんだ。サンを信じてなかったのは、もしかして私だけ?」

「信じてなかったの?」

「ん?いやぁ…やっぱり信じてたかな」

「えぇ、どっち?」

「信じてた!じゃあ、信じてた!」

「じゃあって何よ、じゃあって」

「もう!赦して!」

「あはは。赦してほしいなら、サンに謝ってきたら?」

「もう無理だよ!」

「あちゃあ、そりゃ残念」

「もう!」


なんかナナヤ、いいようにあしらわれてるんだぞ。

…まあ、切っ掛けを作ったのもナナヤだけど。


「しっかし、何か起こらないかなぁ」

「何も起こらんのが一番や。面倒事はもう充分」

「でもさ、せっかく旅に出てるんだから、冒険のひとつやふたつくらい、やりたいじゃない」

「やりとぉないわ。お前だけでやっとれ」

「つれないなぁ。旅と言えば冒険!これ、鉄則ね」

「小説の読みすぎや、アホ」

「えぇ…」

「読まないよりはマシでしょ」

「あぁ?オレはしっかり読んどるぞ」

「何を?」

「本や、本!何言い出すねん、ビックリするわ…」

「えぇ~。何を読んだの?」

「いろいろ」

「いろいろって…怪しいなぁ…」

「ふん。お前らの知らん題挙げても、どうせ疑うだけやろ」

「当たり前じゃない」

「そんなやつらにゆうても、なんの証明にもならんやん」

「まあ、そうなのかな」

「余計な体力は使わん主義でな。無駄やと分かってるのに、そんなこと言わんわ」

「えぇ~。何か知ってるかもしれないじゃない」

「ふん。まあ、学のないやつと思われても一向に構わんし」

「なぁんだ、つまんないの」


望はそう言って口を尖らせて。

…お兄ちゃん、どんな本を読んでるのかな。

姉さまとどっちが多く読んでるんだろ。

姉さまも、たくさん読んでるし。

二人で話をしたら、たぶん面白いんだぞ。


「はぁ…。なんにせよ、面白いこと、起きないかなぁ」

「起きやんでよろしい」

「あ。あそこ」

「えっ?」

「何かいるの」

「はぁ?お前、ナナヤ、呼び寄せんなよ」

「呼び寄せてなんかないよ。向こうから勝手にやってきたんでしょ?」

「いや、喧嘩してる場合じゃないでしょ…」

「何なのかな、あれ」

「ちょっと見てくるの」

「あ、自分も」

「二人とも!危ないから!」

「あーあ、聞いてないよ」


リュウと二人で、それに近付いていく。

近付くにつれて分かってくること。

白に黒の縞模様。

毛皮っぽい。

というか、動物っぽい。

そして、その動物っぽい何かのところに到着。


「虎…かな」

「そうだね」

「なんでこんなところにいるのかな」

「うーん…。分かんないの…」

「うん…」

「おーい、二人とも。どうだった?」

「なんか、虎っぽいの」

「虎?なんでこんなところにいるの?」

「あれじゃないの、もしかして。聖獣」

「あー…。その可能性は大いにありやな…」

「でも、なんでこんなところで行き倒れてるの?」

「知らんがな…」

「ねぇねぇ、属性は何なのかな」

「はぁ?んー…。雷…かな、この色は。しかし、なんや、その希望に満ち満ちた目は…」

「雷?ホント?やった!だけど、なんで分かったの?」

「聖獣の目や。お前は知らんかもしれんけど、オレら斡旋者は聖獣と契約出来んでも、聖獣の目ゆうて、各人の属性の色を見分ける聖獣の力を借りることが出来る。それで、こいつの色を見ただけや。あとな、こいつとお前の属性が適合するからゆうて、こいつと契約出来るかは分からんぞ。こいつが誰かと契約してても無理やし、お前がよくてもこいつが拒否したら契約出来んし。てか、お前、雷斗と契約したんやろ?」

「そうだけどさぁ」

「はぁ…。お前の器がどれくらいあるかは知らんけどな、聖獣二人以上と契約するんは、なかなか難しいぞ?」

「大丈夫大丈夫。なんとかなるって」

「お前のその自信がどっから湧いてくるんかが、一番の疑問やわ…」

「いやぁ、それほどでもぉ」

「褒めてへんわ」

「それより、なんでここに倒れてるのか聞くのが先だと思うの」

「これ、聞けるの?」

「死んでるんとちゃう?」

「もう!縁起でもないこと言わないの!」

「へいへい。まあ、しかし、誰か呼んできた方がええんとちゃう?少なくともオレは、聖獣の病気とかその辺は知らんで」

「そうだね。知ってても、お兄ちゃんに診てもらうことはないけど。やっぱりカイトかな?」

「呼ぶ必要はない。ここにいる」

「あ、カイト。聞いてた?」

「ああ。どれ。少し見せてみろ」

「この子だよ」

「ふむ…」


カイトは、ぐったりとしてる白虎をひっくり返したりして、いろいろ見てるみたいだった。

それから、しばらくして、何か考えるように目を瞑って。


「ふむ…。どうやら、存在する力が足りていないらしい。契約をしている様子もないし、ここには雷の龍脈もないしな。どうして、ここにいるのかが不思議なくらいだ」

「えっ。じゃあ、どうしたら…」

「とりあえず、元の世界に返してやるのが一番手っ取り早いだろう。私が連れて帰ろうと思うが、異議はないな?」

「はい!はい!」

「なんだ、ナナヤ」

「私が契約してあげたいです!」

「それは無理だ。契約には、こいつの準備も必要だろう?」

「あ、そっか…」

「では、いいな?」

「うん…」

「回復したら、また報せる。そのときに、二人でどうするか決めればいい」

「はぁい…」


ナナヤが返事したのを確認すると、カイトは白虎と一緒に消えてしまって。

…何だったのかな、あの虎。

なんで、ここにいたんだろ。

うーん…。

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