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お兄ちゃんに見せてもらったのより少しくすんでいるけど、綺麗な瑠璃。
おじさんが、少しだけセイレンしてくれた。
「重いですね…」
「自然の力が詰まっとるからな」
「ねぇ、柚香の家はどこにあるの?」
「ヤマトやな。着くんは明日の夕方か夜くらいや」
「え?」
「まだもうひとつ、山を越えないといけないからね」
「でも、さっきの洞穴はヤマトじゃないの?」
「ああ。ヤマトの採掘場やな」
「……?でも、ヤクゥルの方が近い…」
「せやな。それでもヤマトや」
「ふぅん…」
なんでだろ。
ヤクゥルの方が近いのに、ヤマトの採掘場…。
ヤクゥルは石を掘らないのかな。
「しかし、腹減ったなぁ」
「夕飯にはまだ早いんじゃないですか?」
「んー、せやけど、これのええ匂い嗅いでたら我慢出来んわ」
お兄ちゃんは、おじさんにもらった高山飯の包みを持ち上げる。
紐がしっかり結ばれていて中身は分からないけど、良い匂いが漂っていて。
「じゃあ、今日はここで野宿します?」
「せやな。まあ、日ぃ暮れるまで時間もないし、進んでも進まんでも変わらんやろ」
そう言って、早速荷物を下ろすお兄ちゃん。
そして、包みを開き始める。
「せっかちですね…」
「ちょっとでも温かいうちに食わんと損やろ…って、火炎岩が添えたぁるな…」
「ワゥ」
「あ、うん。分かった」
「明日香も夕飯か」
「はい。ちょっと行ってくる、って」
「ほぅ」
「望は、なんで明日香の言葉が分かるの?」
「なんでかなぁ」
お兄ちゃんの背負い袋からお皿を取り出しながら、望は考え込む。
「考えるまでもない。簡単なこっちゃ。お互いがお互いを信じてる。だから心が通じ合って、ゆうてることも分かる」
「お兄ちゃんは、明日香の言ってること、分かる?」
「んー、ちょいちょいかな」
「へぇ~」
自分はどうかな…。
明日香は無口だけど、ときどき応えてくれる。
自分も、ちょっと分かるのかな。
「しかし、美味そうやなぁ」
「食べることばっかりですね」
と、そのとき、望のお腹が鳴った。
「望もな」
「………」
「ってぇ!」
鈍い音が響いた。
望の顔は真っ赤になっていて。
「さ、ルウェ。食べよっか」
「う、うん…」
頭を押さえて転げ回るお兄ちゃんを横目に、箸を取る。
包みの中を見ると、お昼とはまた違って今度は魚の焼いたものだった。
「ツグだね。この辺で採れるのかな」
「近くの川で採れる」
「川があるんですか?」
「ああ。道からはちょっと離れるけどな」
「へぇ~」
「身体、洗いたいんやったら案内するけど」
「そうですね。でも、まずは夕飯です」
「せやな」
お兄ちゃんも完全復活。
ちょうど取り分けも終わって
「じゃあ、いただきます」
「いただきま~す」「いただきます」
火炎岩で熱々のツグに箸を伸ばす。
固く絞った手拭いで身体を拭く。
ちょっと冷たくて寒いけど、我慢する。
「背中、拭いたろか?」
「いいです」
「オレの背中、拭いてくれんか?」
「嫌です」
「望、背中拭いて~」
「うん。手拭い貸して」
「なんでオレのは拭いてくれんのや~」
「………」
望は無視して、ゴシゴシと背中を拭いてくれる。
力加減がちょうどよくて、とても気持ち良かった。
「はい、綺麗になったよ」
「うん。ありがと、なんだぞ」
「どういたしまして」
「じゃあ、お兄ちゃんの背中、拭いてあげるね」
「お、ルウェは優しいなぁ」
「えへへ」
お兄ちゃんから手拭いを受け取って、一所懸命に背中を拭いてあげる。
お兄ちゃんの背中はとても広くて大変だけど、隅々まで綺麗に。
「あー、良かったわぁ。絶妙やな」
「ルウェ、私のもやってくれる?」
「うん!」
望の背中はお兄ちゃんより狭いけど、とても柔らかくて。
「それにしても、ホンマに胸ないなぁ。サラシでも巻いてるんかと思たけど」
「ひゃぁ!ど、どこ見てるんですか!ていうか、前に出ないでって言いましたよね!?」
「ええやないか。恥ずかしいんか?」
「………」
「まあ、気にする年頃やろな。オレの配慮が足らんかったわ。すまんな」
そう言って、お兄ちゃんは川で手拭いを洗って服を着込み、向こうの方へ行ってしまった。
望はそれをジッと見送って。
「もう…ホント、信じらんない…」
「なんで、胸を見られるのがイヤなの?」
「ルウェも大きくなったら分かるよ…」
「……?」
なんでなのかな?
自分の胸を見てみるけど、別に何もなかった。
「望。自分も先に戻ってる」
「あ、うん。ちゃんと服、着なさいよ」
「うん」
服を着て、来た道を戻っていく。
道じゃないけど道があるから迷わなかった。
途中で、お兄ちゃんの背中が見えて。
「お兄ちゃん」
「ん?ルウェか」
「うん。…お兄ちゃんは、望のこと、どう思ってるの?」
「…望なぁ。オレは、望のことは妹やと思てる。手間は掛かるけど、可愛い妹…」
「ふぅん」
「もちろん、ルウェもやで」
「えへへ」
「でも、望自身、どう思てるのかは分からん。だから、どう接したらええんか検討も付かん。妹として接してええんか、それとも、あくまで他人として接さなあかんのか…」
「………」
望もお兄ちゃんも、たぶん、お互いの気持ちが分かってないんだぞ。
望もお兄ちゃんも、たぶん、お互いにもっと近付きたいと思ってる。
あと一歩のところまで来てる。
なのに、何かの壁が邪魔してる。
なんとかして、壁を取り払えないかな…。
「きゃぁ!」
「望!?」
望の悲鳴が聞こえたのと同時に、お兄ちゃんは走り出す。
望…望…。
何があったの…?




