表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
27/537

27

お兄ちゃんに見せてもらったのより少しくすんでいるけど、綺麗な瑠璃。

おじさんが、少しだけセイレンしてくれた。


「重いですね…」

「自然の力が詰まっとるからな」

「ねぇ、柚香の家はどこにあるの?」

「ヤマトやな。着くんは明日の夕方か夜くらいや」

「え?」

「まだもうひとつ、山を越えないといけないからね」

「でも、さっきの洞穴はヤマトじゃないの?」

「ああ。ヤマトの採掘場やな」

「……?でも、ヤクゥルの方が近い…」

「せやな。それでもヤマトや」

「ふぅん…」


なんでだろ。

ヤクゥルの方が近いのに、ヤマトの採掘場…。

ヤクゥルは石を掘らないのかな。


「しかし、腹減ったなぁ」

「夕飯にはまだ早いんじゃないですか?」

「んー、せやけど、これのええ匂い嗅いでたら我慢出来んわ」


お兄ちゃんは、おじさんにもらった高山飯の包みを持ち上げる。

紐がしっかり結ばれていて中身は分からないけど、良い匂いが漂っていて。


「じゃあ、今日はここで野宿します?」

「せやな。まあ、日ぃ暮れるまで時間もないし、進んでも進まんでも変わらんやろ」


そう言って、早速荷物を下ろすお兄ちゃん。

そして、包みを開き始める。


「せっかちですね…」

「ちょっとでも温かいうちに食わんと損やろ…って、火炎岩が添えたぁるな…」

「ワゥ」

「あ、うん。分かった」

「明日香も夕飯か」

「はい。ちょっと行ってくる、って」

「ほぅ」

「望は、なんで明日香の言葉が分かるの?」

「なんでかなぁ」


お兄ちゃんの背負い袋からお皿を取り出しながら、望は考え込む。


「考えるまでもない。簡単なこっちゃ。お互いがお互いを信じてる。だから心が通じ合って、ゆうてることも分かる」

「お兄ちゃんは、明日香の言ってること、分かる?」

「んー、ちょいちょいかな」

「へぇ~」


自分はどうかな…。

明日香は無口だけど、ときどき応えてくれる。

自分も、ちょっと分かるのかな。


「しかし、美味そうやなぁ」

「食べることばっかりですね」


と、そのとき、望のお腹が鳴った。


「望もな」

「………」

「ってぇ!」


鈍い音が響いた。

望の顔は真っ赤になっていて。


「さ、ルウェ。食べよっか」

「う、うん…」


頭を押さえて転げ回るお兄ちゃんを横目に、箸を取る。

包みの中を見ると、お昼とはまた違って今度は魚の焼いたものだった。


「ツグだね。この辺で採れるのかな」

「近くの川で採れる」

「川があるんですか?」

「ああ。道からはちょっと離れるけどな」

「へぇ~」

「身体、洗いたいんやったら案内するけど」

「そうですね。でも、まずは夕飯です」

「せやな」


お兄ちゃんも完全復活。

ちょうど取り分けも終わって


「じゃあ、いただきます」

「いただきま~す」「いただきます」


火炎岩で熱々のツグに箸を伸ばす。



固く絞った手拭いで身体を拭く。

ちょっと冷たくて寒いけど、我慢する。


「背中、拭いたろか?」

「いいです」

「オレの背中、拭いてくれんか?」

「嫌です」

「望、背中拭いて~」

「うん。手拭い貸して」

「なんでオレのは拭いてくれんのや~」

「………」


望は無視して、ゴシゴシと背中を拭いてくれる。

力加減がちょうどよくて、とても気持ち良かった。


「はい、綺麗になったよ」

「うん。ありがと、なんだぞ」

「どういたしまして」

「じゃあ、お兄ちゃんの背中、拭いてあげるね」

「お、ルウェは優しいなぁ」

「えへへ」


お兄ちゃんから手拭いを受け取って、一所懸命に背中を拭いてあげる。

お兄ちゃんの背中はとても広くて大変だけど、隅々まで綺麗に。


「あー、良かったわぁ。絶妙やな」

「ルウェ、私のもやってくれる?」

「うん!」


望の背中はお兄ちゃんより狭いけど、とても柔らかくて。


「それにしても、ホンマに胸ないなぁ。サラシでも巻いてるんかと思たけど」

「ひゃぁ!ど、どこ見てるんですか!ていうか、前に出ないでって言いましたよね!?」

「ええやないか。恥ずかしいんか?」

「………」

「まあ、気にする年頃やろな。オレの配慮が足らんかったわ。すまんな」


そう言って、お兄ちゃんは川で手拭いを洗って服を着込み、向こうの方へ行ってしまった。

望はそれをジッと見送って。


「もう…ホント、信じらんない…」

「なんで、胸を見られるのがイヤなの?」

「ルウェも大きくなったら分かるよ…」

「……?」


なんでなのかな?

自分の胸を見てみるけど、別に何もなかった。


「望。自分も先に戻ってる」

「あ、うん。ちゃんと服、着なさいよ」

「うん」


服を着て、来た道を戻っていく。

道じゃないけど道があるから迷わなかった。

途中で、お兄ちゃんの背中が見えて。


「お兄ちゃん」

「ん?ルウェか」

「うん。…お兄ちゃんは、望のこと、どう思ってるの?」

「…望なぁ。オレは、望のことは妹やと思てる。手間は掛かるけど、可愛い妹…」

「ふぅん」

「もちろん、ルウェもやで」

「えへへ」

「でも、望自身、どう思てるのかは分からん。だから、どう接したらええんか検討も付かん。妹として接してええんか、それとも、あくまで他人として接さなあかんのか…」

「………」


望もお兄ちゃんも、たぶん、お互いの気持ちが分かってないんだぞ。

望もお兄ちゃんも、たぶん、お互いにもっと近付きたいと思ってる。

あと一歩のところまで来てる。

なのに、何かの壁が邪魔してる。

なんとかして、壁を取り払えないかな…。


「きゃぁ!」

「望!?」


望の悲鳴が聞こえたのと同時に、お兄ちゃんは走り出す。

望…望…。

何があったの…?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ