表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
201/537

201

「それ、引っ張れ!」

「よーいしょ!」


しばらく引っ張り合いをして、圭太郎から合図があったのを確認してから楔に結びつける。

ふぅ…。


「集合、集合~」

「はぁい」


いつまでも祈祷を続けてるサンの手を引いて、圭太郎のところに向かう。

七宝もちゃんとついてきて。


「よし、集まったな。…道の注連縄張りはこれで終わりだ。次、他の区画も終わってから広場の注連縄張りに移るから、まあ…しばらく休んでいてくれ」

「よーし、終わり終わり」

「まだ終わってねぇぞ」

「へーい」

「祓人はそのままその格好でいてくれ。詞は回収する」

「えぇっ!」

「お前のはいい。どうせ、俺が作ったやつだし。五月蝿いし」

「五月蝿くないもん!」

「はいはい。とにかく、他のところもそんなに時間は掛からないはずだから、すぐに戻れるようにしておけよ。じゃあ、解散」


圭太郎が手を振ると、みんな思い思いの方へ散っていって。

サンは、詞が書いてある巻物を大事そうに丸めている。


「おぅ、サン。どうだった、念願の祓人はよ?」

「楽しかった!」

「そうか。よかったな」

「うん!」

「広場の詞は道のよりも難しいからな。ゆっくりでいいから、噛まずに言えよ」

「噛まないもん」

「そうか。じゃあ、頼んだぞ」

「うん」

「ケイちゃん」

「分かってる。サン、ルウェ、またあとでな。俺は報告を済ませてくるから」

「うん。またね」


手を振ってから、圭太郎と妙子お姉ちゃんと別れる。

それから、サンと一緒に広場に戻る。


(ねぇ、ハクは戻ってこないのかな)

「どうかな。分からないけど」

(もっとお話したかったな…)

「また来るよ、きっと」

(うん)

「あっ、あれ」

「え?」


サンが指差す方。

広場の樹の根元に、白い服を着た女の子が座っていた。


「ハク!」

「えっ?あ、ルウェにサン」

「早かったね。怒られなかった?」

「う、うん…。如月って人が、シフさまに話してくれて…」

「如月が?どうして?」

「分からないけど…。でも、なんでかは分からないけど、よく考えもしないで怒ってごめんなさいって謝ってくれて…」

「ふぅん…」

「分かったのかな、如月は」

「たぶんね」

「えっ?何の話?」

「さっき、お姉ちゃんに怒られてたんだ。あ、お姉ちゃんっていうのは、契約主なんだけど」

「怒られてた?なんで?」

「分からないけど、ハクがイタズラをするドウキがどうとか…」

「ボクがイタズラをする動機?そりゃ、楽しいからだけど…」

「うん。でも、別の理由があるみたい」

「ふぅん…?自分のことなのに、なんか変なの」


ハクは不思議そうに首を傾げる。

…ハク自身も分からないなんて、じゃあ、ドウキって何なんだろ。


(ねぇ、ハク)

「ん?」

(ハクって、白霧と変化以外にも術式は使えるの?)

「んー。あとは氷牙の術式くらいかな…」

(へぇ~)

「七宝はどうなの?」

(クーは、白霧と変化と…あと、転移が使えるよ)

「へぇ、転移。ボクはまだ練習中で、上手く使えないんだ」

(結構簡単なんだよ。でも、知らない場所に行くときは、かなり難しくなるけど)

「ふぅん。コツとかはあるの?」

(出来るだけ、はっきりと行きたい場所を思い描くことかな。あと、距離が離れるときは、少しずつ中継する方がいいんだよ)

「そうなんだ。ボク、この村から離れたことないから…。もっといろんなところに行って、もっといろんなものを見てこないといけないんだね」

(うん。実際に見てくるのが一番確実だよ)

「えへへ。ありがと、いろいろ教えてくれて」

(ううん。いいの)

「でも、このあたりは、この村にしか氷の龍脈がないから…」

(そっか…。氷の気質を持ってる人も少ないもんね…。あっ)

「え?」

(ルウェなら、持ってるかもしれないよ!)

「え、えぇ…?確かに、いろんな色は見えるけど…」

(ちょっと探してくるね!)

「えっ、あ、七宝?」


そして、七宝はすぐに消えてしまった。

…探してくるって、探せるようなものなのかな。

いろんな色を持ってるなんて、自分では分からないし…。


「そういえば、ハクって変化も使ってるの?」

「うん。本当は灰色の狼だよ」

「ふぅん。なんで変化を使ってるの?」

「えっ?えっと…その方が、こっちのみんなと一緒に遊べるから…。狼って怖いでしょ?」

「そうかな?」

「うん…」

「明日香も怖くないもんね?」

「うん。たぶん、ハクがそう思ってるだけなんだぞ」

「で、でも…」

「おい、お前ら。東の班も帰ってきたし、そろそろ準備しとけよ」

「はぁい」


圭太郎はちょっとだけ頷いて。

それから、ハクの方を見る。


「それで、お前は誰だ?」

「えっ?」

「この子はハクだよ、バカ圭太郎」

「そうか。まあ、祓人の着物を着てるならちょうどいい。広場の注連縄張りを手伝ってくれ」

「う、うん…」

「サンも、抜け出すんじゃないぞ」

「抜け出さないよ!」

「ははは。そりゃ安心だ」

「むぅ…」


圭太郎にガシガシと頭を撫でられて、少し嫌そうな顔をするけど。

それから、またあっかんべーをして、どこかへ飛んでいってしまった。


「じゃあ、全員帰ってきたら、また報せるから。そしたら、広場の南側に来い。さっき戻ってきた道だ。分かるよな」

「うん」

「ハクもよろしくな」

「あ…うん…」


圭太郎は軽く手を振ってから、屋台の間を抜けて広場の向こうに行った。

ハクを見ると、少し蒼褪めていて。

…なんで、ハクの姿が圭太郎にも見えたのかな。

白霧の術式を掛け忘れたのかな…?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ