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大丈夫とは言ったものの、やっぱり怖くて。
足がすくんでしまい、途中にあった大きな枝から動けなくなってしまった。
「うぅ…」
「ダメか?」
「う、うん…」
「へへっ、でも頑張ったじゃん。俺なんか、最初、ここの半分も登れなかったぜ」
そう言いながら、頭を撫でてくれた。
乱暴だったけど、なぜかそれが気持ち良くて。
「よし、行くぞ」
「え?」
「おんぶ。一気に行くから、しっかり掴まっといてくれよ」
「うん…」
一気に…?
よく分からないけど、祐輔の背中に乗って、しっかりと手を回す。
「ひくほ」
「うん…」
「ひっかいうかあって」
祐輔は、いつの間にか靴を脱いで口にくわえていた。
そして、木の幹に確かめるように手をあてると
「わぁっ!」
爪を引っ掛けて、ものすごい速さで登っていく。
ほとんど真上に登っているのに、祐輔は何の苦もないようだった。
…下を見れば、地面はどんどん遠ざかっているんだけど。
でも、怖さはなかった。
今、鷹になれてるのかな…。
「はっ、はっ」
「大丈夫?」
「へへっ」
そう笑い、大きく跳ぶ。
でも自分は、びっくりして思わず腕を絞めてしまった。
「く、苦しいよ…」
「あ…ごめん…」
「へへっ、着いたぜ」
「「ようこそ!我らの秘密基地へ!」」
「え…?あ、うん」
辿り着いた先は。
大木の上というより、ひとつの街。
太い枝には家が建ち、細い枝にも枝から枝への橋が掛けられて。
幹の周り…今立っているここは、広場のようになっていた。
「すごいだろ」
「うん!」
「隊長!新しい隊員っていうのは、その子でありますか?」
「おぅ。ルウェだ」
「全員集合~!集合~!」
号令が掛かると、四方からたくさん集まってくる。
何人いるのかな…。
「来てないのは?」
「八百屋の兄弟が三人とも風邪。雄作が家の都合で。あとは、陽平と龍次が来てないよ」
「お兄ちゃんが帰ってきたから、龍次は来ないかな。陽平は分からない」
「うん。他は全員いると思うよ」
「よし。それでは、新しい仲間を紹介する!ルウェだ!」
「よ、よろしく…なんだぞ…」
「よろしく!」「男の子?」「祐輔の恋人?」
「静粛に、静粛に」
「………」
「ルウェは、お兄ちゃんと、あと、望お姉ちゃんと旅をしてるんだぜ」
「おぉ~」「望お姉ちゃん?」「お兄ちゃんと旅してるのか~」
「しかも!しかもだ!なんと、契約者だ!」
「えぇっ!?」「わぁ~」「すごいね!」
「新しい仲間を歓迎するために!」
「「「枝跳び!」」」
「枝跳び…?」
何なのかな…。
枝を…跳ぶのかな…。
規則は簡単。
地面に付かないように"当たり"から逃げる。
"当たり"に捕まったら、広場に戻って待機。
五人捕まったら"当たり"の交代。
それだけ。
「みんな、"風"は持ったか?」
「持ってるよ~」「うん」
「それは非常用だ。使わなくてもいいように、気を付けろよ」
「はぁい」「分かってるよ」
「最初の"当たり"は、俺、夏月、友樹、龍兵、そして、ルウェだ」
「頑張ってね!」「簡単には捕まらないんだかんな!」
「"当たり"は必ず鉢巻きを着けること。鉢巻きをしてなかったら、捕まえても無効だ」
「早くやろうよ!」「まだなの~?」
「基本の確認は、何に於いても大切だ。じゃあ、最後に…」
「みんなで楽しく!」
「精一杯遊ぼうぜ!」
「そういうことだ。よし、始め!」
掛け声と共に、みんな散り散りになる。
上に行ったり、下に行ったり。
あらゆる方向へ。
「"当たり"のコツは、バラバラにならず五人で確実に一人一人捕まえていくこと。逆に、"当たり"から逃げるときは囲まれないようにすること」
「うん」
「夏月、がんばるね!」
「夏月ちゃんは、一人でだって捕まえてくるからなぁ。僕たちの出番があるかどうか」
「えへへ」
「へへっ、夏月に負けないように、俺たちも頑張ろうぜ」
「隊長!言われるまでもないであります!」
「よし、もうそろそろだな。見つけたら合図をすること。合図を受けたら、すぐに集まること。分かってるよな」
「わかってる~」「よっしゃーっ!」
「うん。じゃあ、追跡開始だ!」
夏月は上へ、友樹は右隣の木へ、そして、龍兵は後ろの木へ。
それぞれ散っていった。
「一緒に来るか?」
「う、うん…」
「へへっ。そのうち慣れるよ。高いところも、結構楽しいもんだぜ」
「…うん」
祐輔にそう言われると、本当にそう思えてくる。
目の眩むような高い高い木の上でも、祐輔と一緒なら大丈夫だった。
「よし、行こうか」
「うん!」
枝跳び。
楽しい時間の始まりなんだぞ!




