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「そうか。琥珀は大和と知り合いだったのか」

「そうだな。知り合いというか、大昔の旅の道連れだけど」

「ふぅん…。じゃあ、そうなると、琥珀はもともと人間だったのか?」

「ああ」

「人間が聖獣になることがあるのか」

「さあな。少なくとも、俺は琥珀しか知らない」

「ユヌトの花畑で消えた女の子が、またユヌトになって帰ってくる…か」

「俺も正直びっくりしたけどな。まあ、あのクノの長老さまなら、そういうことも出来るかもしれない」

「長の力、ということか?」

「いや、何年生きてるか分からない化け物だから」

「クノお兄ちゃんは化け物なんかじゃないんだぞ」

「ん?あぁ…そうだな。化け物は言い過ぎかもしれねぇな…」

「言い過ぎなんだぞ!」

「はは、ルウェはクノのことがよっぽど気に入ったらしいな」

「まあ…それはあれだろ。クーア旅団の副団長と知り合いだから」

「あぁ、そういえばそうだったな」

「どっちのクノお兄ちゃんも、優しくて格好よくて…」

「格好いいのか?オレはルィムナしか見たことないから分からないんだが…」

「ルィムナさまの姿は人間に近いけどな。クノの長老さまは獅子だ。紅葉の言う格好いいに当てはまるかどうかは知らないぞ」

「ふぅん…。獅子か。見てみたい気もするな」

「まあ、出来ないこともないが、あの人は腰が重たいから。滅多に"星降る夜"から出ることはない」

「星降る夜?獅子座流星群か?」

「うん!願い事がいっぱい叶うんだぞ!」

「そうだな。あれだけ降っていれば、願い事を唱えるのも楽だろう。でも、星降る夜っていうのは地名だ。ベラニクやルイカミナといったものと同じ。あそこは、ここで言うリュクラス、つまり、禁地や聖地と呼ばれる場所だ」

「ふぅん…」

「まあ、リュクラスと少し違うのは、あの場所が禁地なんじゃなくて、長老さまが居座ってるから禁地と呼ばれているんだけどな…」

「禁地に神がいるんじゃなく、神のいるところが禁地…ということか」

「ああ。まあ、神なんて大袈裟なものじゃないけどな。でも、普通は、契約のときに長老さまが出てくることはない。たいてい、クルクスの若大将が代行で出てくるんだが…。ルウェのことが、よっぽど気に入ったらしい」

「ホントに?」

「気まぐれとかじゃなくてか?」

「あの人は、気まぐれで物事を決めたりするような軽いやつじゃない。行動するには理由がある。そういう人だ」

「ふぅん。…珍しいな。お前が誰かに一目置くなんて」

「一目じゃ足りねぇよ。十目は置いてる」

「どちらにしても珍しい。ルィムナ以来じゃないか?」

「以来って言い方はおかしいと思うけど…。しかし、俺が不遜みたいな言い様だな」

「実際そうだろ」

「失礼なやつだ。俺だって尊敬出来る人は尊敬してるぞ」

「ルィムナとクノの二人だけなんだろ?」

「そんなことないって!」

「ムキになるところが怪しい」

「お、俺だって、ルィムナさまとか長老さまとか…尊敬してる人はたくさんいる!」

「さっき出てきたまんまじゃないか。その二人以外を挙げてみろよ」

「えっ、あぁ…。ル、ル…ルウェ!ルウェだ!」

「え?自分?」

「なんで、ルから探そうとするんだよ…」

「い、いいじゃねぇか。俺はルウェを尊敬してるぞ!」

「…仕方ないな。そういうことにしておいてやろう」

「ていうか、そういう紅葉こそ、全くもって不遜じゃねぇか。お前は誰を尊敬してるんだよ」

「オレか?オレは、今まで会った人全てを尊敬している。みんな、尊敬に足る人物だよ」

「あっ!お前、それはずるいだろ!」

「普段から不遜な態度しか取らないお前には出来ない答え方だろうな」

「大和はフソンなんだぞ」

「お前…ちゃんと意味を分かって言ってるのか?」

「ううん」

「はぁ…」

「不遜というのは、思い上がって全く他人を尊敬せず、見下している様子だ」

「うーん…。じゃあ、なんだか大和とは違うような気がするんだぞ」

「気がするんじゃなくて、実際そうなんだ」

「自分で言ってたら世話ないな。不遜とか不遜でないとかっていうのは、他人から評価されて初めて意味を持つんじゃないのか?」

「ルウェに不遜じゃないって評価してもらったんだ。自分で言ってもいいだろ」

「ルウェは、不遜ではないかもしれないと言ったんだ。それを、お前が不遜ではないという断定に訂正させた。つまり、まだ本当の評価は受けてない。"自称"の域を出ない、ということだ」

「…理屈っぽいぞ、お前」

「今に始まったことじゃないだろ?」

「まったく…。そんなに論理で攻めたててると、友達なくすぞ」

「それでも、大和よりは多いと自負している」

「よく言うよ…」

「狼の姉さまは、友達というより家族なんだぞ。もちろん、大和もだけど」

「…そうだな。オレはルウェのお姉ちゃんだからな。友達じゃなくて、家族…か」

「そういう考え方もあるんだな。血が繋がっていなくても、種族種類が違っていても、家族か。少し羨ましいかな。そういう考え方が出来るっていうのは」

「じゃあ、大和も真似すればいいんだぞ」

「はは、そうだな。その発想はなかったよ。よし、じゃあ、真似してみようか」

「そうすれば、お前の不遜な態度も改善されるかもしれないしな」

「そういう点においては、紅葉も真似した方がいいんじゃないか?」

「オレは、その考え方をすでに導入している。だから、改めて真似する必要はない」

「導入しててそれか。そりゃ、改善のしようがないな」

「改善する必要もないしな」

「………」

「狼の姉さまも大和もフソンじゃないんだぞ。二人とも、みんなのことを想ってくれてるし…。だから、喧嘩しないで…」

「ん?あぁ、ごめんな」

「喧嘩のつもりはなかったんだけどな…」

「そうなの…?」

「ああ。まあ、軽口だな。本気で言ってるわけじゃないよ」

「ルウェだって、ヤーリェやリュウと話すとき、冗談を言ったりするだろ?」

「うん…」

「それと同じだ。ちょっと分かりにくかったみたいだけどな」

「ホント…?」

「ああ。ありがとな、心配してくれて」

「それにしても、ヤーリェが来る前を思い出すな。軽口が、いつの間にか本当の喧嘩になってたりして…」

「たいていは大和が悪かったんだけどな」

「否定はしない」

「素直じゃないな」

「…この状況で使う言葉じゃねぇだろ」

「そうかもしれない」

「ねぇ、二人が今までやった喧嘩で一番大変だったのって、どんなの?」

「ん?そうだな…。非常食消失事件か?」

「あれは、紅葉が一方的に怒ってただけだろ…」

「それはどんな事件だったの?」

「ヤーリェと会った日から一ヶ月くらい前だ。非常食として干してた肉を、ちょっと目を離した隙に大和が全部食べてしまって…」


なぜか会話オンリーです。

まあ、そんなときがあってもいいですよね。

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