「無能は不要」と雨の日に追放された聖女ですが、隣国の氷の公爵に拾われ「ずっと君だけを探していた」と執着されています。私が去って滅びゆく王国が戻れと泣きついてきても、最強の夫が怖すぎて近づけませんよ?
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第一部:冷酷な宣告と、雨の中の再会
「エルゼ・フォン・アシュバッハ。貴様との婚約を破棄し、この国から追放する!」
きらびやかな王城の晩餐会。その中心で、第一王子アルベルトが傲慢な声を響かせた。
彼の隣には、私の妹であるミラが勝ち誇ったような笑みを浮かべて寄り添っている。
私、エルゼは、代々「聖女」を輩出するアシュバッハ家の長女だ。しかし、私には魔力がない。植物を少し早く成長させる程度の、聖女とは程遠い「雑草」のようなスキルしか持たなかった。対して、妹のミラは輝くような神聖魔力を持ち、次期聖女として国中の期待を背負っている。
「殿下、それは……どういうことでしょうか」
震える声で問い返したが、アルベルトは冷たく鼻で笑った。
「言葉通りだ。無能な聖女など我が国には不要。お前の席は、より優れたミラに譲ってもらう。お前のような『紛い物』が王太子妃の座に居座るなど、反吐が出る思いだったのだよ」
周囲の貴族たちからも、クスクスと忍び笑いが漏れる。
「当然だわ、あんな地味な女」「ミラ様こそが真の聖女にふさわしい」「追い出されて当然の寄生虫め」
父も、母も、誰も助けてはくれない。彼らの視線はすでに、新しい「商品」であるミラにしか向いていなかった。
「……分かりました。謹んでお受けいたします」
私はドレスの裾を掴み、深く頭を下げた。涙は見せなかった。ここで泣けば、彼らの思うツボだ。
私はその足で夜の街へと歩き出した。持たされたのは、最低限の着替えが入った小さな鞄一つだけ。
外は、私の心を表すかのような冷たい雨が降りしきっていた。
「……ふふ、あはは……」
誰もいない路地裏で、私は自嘲気味に笑った。
十五年間、家族のために、国のために、どれだけ蔑まれても「聖女の役目」を果たそうと必死に勉強し、領地の作物の世話をしてきた。その結果がこれだ。
「もう、どうでもいいわ」
雨に打たれ、体温が奪われていく。意識が朦朧とする中、私は石畳の上に力なく座り込んだ。
視界が暗くなっていく。ああ、このまま消えてしまえたらどれほど楽だろう。
その時だった。
カツン、カツン、と規則正しい足音が雨音を切り裂いて近づいてきた。
高級な革靴が、私の目の前で止まる。
「――ようやく、見つけた」
低く、けれどどこか熱を帯びた、深い森のような声。
ゆっくりと顔を上げると、そこには銀色の髪を濡らした一人の男が立っていた。
鋭い美貌。氷のような蒼い瞳。そして、この国の人間ではないことが一目でわかる、冷徹な威圧感を纏った軍服姿。
それは、隣国リデル帝国の「氷の公爵」と恐れられる男、ギルバート・フォン・レストレイドだった。
「……公爵、閣下……? なぜ、私のような者に……」
「私のような者、だと?」
ギルバートは迷うことなく泥だらけの地面に膝をつき、私の凍えた手を大きな掌で包み込んだ。
彼の体温が、あまりにも熱くて驚く。
「この十年間、一日たりとも君を忘れたことはない。……エルゼ。我が帝国へ来ないか。君を虐げるこの国など、捨ててしまえばいい」
「私には……何もありません。聖女の力も、魔力も……」
「いいや、君にしかない力がある。俺にはそれがわかる。……それに」
彼は私の指先に、狂おしいほど優しいキスを落とした。
「俺が欲しいのは『聖女』ではない。エルゼ、君という女性だ」
雨の中で告げられた、あまりにも場違いな愛の告白。
私の止まっていた運命の歯車が、この瞬間、激しく音を立てて回り始めた。
第二部:氷の公爵は、溶けるほどに甘く
雨の中、ギルバート様に抱き上げられた瞬間、私の意識は途切れた。
次に目を覚ましたとき、視界に飛び込んできたのは、見たこともないほど豪華な天蓋付きのベッドだった。
「……ここ、は……?」
「気がついたか。無理に動かなくていい」
傍らの椅子に腰掛けていたギルバート様が、瞬時に身を乗り出した。
その表情は、先ほどまでの「氷の公爵」という二つ名が嘘のように、深い慈しみに満ちている。
「ここは国境付近にある、私の別邸だ。君は丸二日眠り続けていた」
「二日も……申し訳ありません、ご迷惑を」
「謝る必要はない。……それより、粥を持たせよう。少しでも腹に入れないと、身体が持たない」
彼は自ら銀のスプーンを取り、私の口元へと運ぶ。
公爵閣下ともあろうお方が、泥だらけだったはずの私にここまで甲斐甲斐しく尽くすなんて。
「あ、あの……ご自身でなさるなんて、お止めください!」
「嫌か?」
少しだけ悲しそうに眉を下げられ、私は言葉に詰まった。
生まれてから一度も、こんな風に誰かに大切に扱われたことなどなかった。
「……いいえ。……美味しいです」
一口食べると、じんわりと温かさが全身に染み渡る。
それと同時に、妙な感覚に気づいた。身体の奥底から、これまでに感じたことのないほど、清浄で膨大な「何か」が溢れ出しているのだ。
「ギルバート様、私の身体が……なんだか、熱いんです」
「……ああ。やはりな」
ギルバート様は満足げに目を細めた。
彼は私の手を取り、そっと自分の胸に当てさせる。
「エルゼ、君は自分の能力を『雑草を育てる程度の微弱な力』だと言っていたな。だが、それは間違いだ。アシュバッハ王国の魔力測定器は、あまりにも旧式すぎて君の力を測りきれなかったのだよ」
「え……?」
「君が持っているのは『植物操作』などという矮小なものではない。万物の生命エネルギーそのものを司る**【世界樹の寵愛】**だ。……見てごらん」
彼が指差した窓際の花瓶。
そこには、今朝活けられたばかりのはずの百合の花が、信じられないほどの輝きを放ちながら、部屋中を埋め尽くすほどの勢いで成長し、咲き乱れていた。
「私が、これを……?」
「君の魔力があまりに強大すぎて、感情の昂りに呼応して溢れ出している。あの国は、宝石と知らずにダイヤモンドを捨てた愚か者の集まりだ」
ギルバート様は私の細い指を一本ずつ愛しむように絡め、真剣な眼差しで見つめてきた。
「エルゼ、我がリデル帝国は魔力の枯渇に悩まされている。君のその瑞々しい力が必要なんだ。……だが、それはあくまで大義名分だ。本音を言えば、ただ君を俺の傍に置きたい。君が子供の頃、俺にくれたあの一輪の野花を、俺は今でも魔法で保存して持っているのだから」
「あ……」
記憶がフラッシュバックする。
十年前、外交で訪れていた痩せっぽちの少年。誰からも疎まれていた彼に、私が手渡した一輪の白い花。
「覚えて、いてくださったのですか?」
「忘れるはずがない。あの時から、君だけが俺の光だった」
彼の言葉に、冷え切っていた私の心は一気に熱くなる。
その時、別邸の外で大きな騒音が響いた。
「おい! エルゼを出せ! 彼女はアシュバッハ王国の『所有物』だぞ!」
聞き覚えのある、不快な声。――アルベルト殿下だ。
どうやら、私の不在によって領地の作物が急激に枯れ始めたことに気づき、慌てて追いかけてきたらしい。
ギルバート様の瞳が、一瞬にして極北の氷河のような冷たさに変わった。
「所有物、か。……エルゼ、少しだけ失礼するよ。不快な羽虫を掃除してくる」
「閣下……」
「大丈夫だ。君はここで、温かい紅茶を飲んで待っていればいい」
彼は私の額に優しく口付けると、その直後、部屋の空気が凍りつくほどの殺気を放ちながら立ち上がった。
第三部:後悔してももう遅い、真の聖女の目覚め
別邸のバルコニーから階下を見下ろすと、そこには軍勢を引き連れたアルベルト殿下の姿があった。
雨は上がり、雲間から差し込む月光が、彼の焦燥に満ちた顔を照らし出している。
「エルゼ! 隠れていないで出てこい! 貴様が去ってから、我が国の王都の庭園がすべて枯れ果てたのだぞ! 呪いでもかけたのか!?」
相変わらずの傲慢な物言いに、私は小さく溜息をついた。
呪いなどではない。私が無意識に放っていた魔力が、あの国の土地を辛うじて繋ぎ止めていたに過ぎないのだ。
「……私の婚約者に、随分な物言いだな。アルベルト王子」
ギルバート様が、凍てつくような声を響かせながら庭へと降り立つ。
その背後には、漆黒の甲冑を纏った帝国騎士団が音もなく控えていた。
「ギ、ギルバート閣下!? なぜあなたがここに……! そもそも、婚約者だと? エルゼは我が国の、俺の所有物だ!」
「『不要』だと切り捨て、雨の中に放り出したのは貴殿だろう。……アシュバッハ王国の魔導師報告によれば、エルゼを追放した直後から、聖女ミラが管理していた結界が崩壊し、作物の成長が止まったそうじゃないか」
ギルバート様は一歩、また一歩と詰め寄る。その足元から地面が白く凍りついていく。
「それは……! ミラが本調子ではないだけで……!」
「認めろ。君たちが『無能』と蔑んでいた彼女こそが、この地を潤していた真の源泉だったのだ。……そして、彼女はもう、君たちの手には届かない」
ギルバート様が指を鳴らす。
次の瞬間、私の周囲に停滞していた魔力が、彼に呼応するように爆発した。
私の背後に、光り輝く**【世界樹】**の幻影が浮かび上がる。
枯れかけていた別邸の庭園が、季節を無視して一斉に芽吹き、見たこともない大輪の花々が咲き乱れた。そのあまりに神聖な光景に、アルベルト殿下の兵士たちが思わず膝をつく。
「な……なんだ、この魔力は……!? ミラよりも、ずっと……温かくて、強大だ……」
アルベルト殿下が呆然と呟く。
私はバルコニーから、冷ややかに彼を見下ろした。
「殿下。私はもう、あなたの所有物ではありません。……さようなら、二度と会うことはないでしょう」
「待て! エルゼ! 戻ってこい! お前さえいれば、国は元通りに――」
「黙れ、羽虫が」
ギルバート様が軽く手を振ると、凄まじい氷の壁が王子の目の前にそびえ立った。それは、物理的な距離だけでなく、彼らの運命を決定的に分かつ絶壁だった。
数日後。
私はギルバート様に連れられ、リデル帝国の帝都へと到着した。
そこは、私の故郷とは比べ物にならないほど活気に満ち、そして――どこか、枯れていた。
魔力不足により、噴水は止まり、街路樹も元気がなかったのだ。
「エルゼ。君の力を、この国のために貸してほしい。もちろん、君が望むならだ」
ギルバート様は、馬車の中で私の手を優しく握り締めた。
追放された私を救い、一人の女性として見てくれた彼のためなら、何だってしたかった。
「はい。喜んで」
私は馬車を降り、帝都の中央広場に立った。
静かに目を閉じ、胸の奥にある「種」に意識を向ける。
それは、ギルバート様への愛しさと、新しい人生への希望によって、今にも弾けそうに膨らんでいた。
「――咲きなさい」
私がそう呟いた瞬間。
黄金の光が私の足元から地を這い、帝都全体へと広がった。
止まっていた噴水が勢いよく吹き上がり、石畳の間から柔らかな芝生が顔を出す。
一瞬にして、灰色の街が緑豊かな楽園へと変貌したのだ。
「おお……! 奇跡だ! 聖女様だ!」
「氷の公爵様が、本物の聖女様を連れてきてくださったぞ!」
民衆の歓喜の声が響き渡る。
そんな中、ギルバート様は跪き、私の腰を引き寄せて囁いた。
「素晴らしい。……だが、これで見つかってしまったな。君の価値を、世界中が知ることになる。……少しばかり、独占欲を抑えるのが難しくなりそうだ」
彼の蒼い瞳には、崇拝にも似た、熱くドロドロとした独占欲が渦巻いていた。
第四部:偽物の没落と、甘い檻の始まり
リデル帝国の帝都が緑と花々に包まれてから数週間。私は「救国の聖女」として崇められ、公爵邸で何不自由ない生活を送っていた。
一方、私を追放したアシュバッハ王国からは、連日のように悲鳴のような親書が届いていた。
「……また、アシュバッハからですね」
ギルバート様の書斎で、私は差し出された報告書に目を落とした。
そこには、目を覆いたくなるような惨状が記されている。
私が去ったことで、土地の守護が完全に失われたアシュバッハ王国は、深刻な飢饉に見舞われていた。
「真の聖女」と持て囃された妹のミラは、必死に魔力を絞り出そうとしたようだが、所詮は私の魔力を「増幅」して見せていただけの紛い物。
焦った彼女は禁止された禁術に手を出し、暴走した魔力によって自らの美貌を損ない、今は教会の地下牢に幽閉されているという。
「アルベルト王子も、王位継承権を剥奪されたそうだ。民衆の暴動を抑えられず、今は貴族の籍を汚した罪人として、国境の警備兵に落とされたらしい」
ギルバート様は、興味なさそうに手紙を暖炉の火に放り込んだ。
「……あんなに誇り高かった方々が」
「同情する必要はない。彼らは君の価値を理解せず、ただ利用し、使い捨てようとした。その報いを受けただけだ」
ギルバート様が背後から私を抱きしめる。
分厚い胸板の鼓動が、背中越しに伝わってくる。その鼓動は、驚くほど速い。
「エルゼ。……君をあの国に、一瞬たりとも返したくない」
彼の腕に力がこもる。
首筋に落とされる熱い吐息に、心臓が跳ねた。
「あの国の王が、君を戻せば罪を許すとまで言い出している。……冗談ではない。君を差し出すくらいなら、俺は今すぐあの国を地図から消し去ってもいいと思っているんだ」
「閣下……! それは、やりすぎです……っ」
「いいや。君が雨の中で泣いていたあの夜、俺は決めたんだ。二度と君を誰にも触れさせないと」
ギルバート様は私を翻弄するようにくるりと前を向かせると、机の上に私を座らせた。
公爵様とは思えないほど、強引で、執着に満ちた仕草。
「……エルゼ。君は、俺のものだ。そうだろ?」
その蒼い瞳は、獲物を狙う獣のように鋭く、けれどどこか縋るような哀切を帯びていた。
冷徹な「氷の公爵」が、私一人の前でだけ、こんなにも感情を剥き出しにしている。
「私は……はい。あなたの、お側にいたいです」
私が答えた瞬間、深い、深い口付けが降ってきた。
それは、これまでのような優しいものではなく、領土を主張するような、激しく情熱的なものだった。
「……逃がさない。君がどこへ行こうとしても、俺が地の果てまで追いかけて、この腕に閉じ込める」
私の細い腰を抱き寄せる彼の指先が、微かに震えている。
最強の魔導騎士と謳われる彼が、私を失うことをこれほどまでに恐れているのだ。
「愛している、エルゼ。……いや、愛しているなんて言葉では足りない。君は俺の心臓で、光だ」
その夜、私は初めて知った。
冷酷だと思われていた彼の心の内側に、私という存在だけを焼き尽くすほどの、昏い情炎が渦巻いていることを。
アシュバッハ王国という小さな籠から放り出された私は、今、ギルバート様という、より巨大で、より甘美な、逃げられない「愛の檻」へと囚われたのだ。
第五部:世界で一番幸せな聖女と、永遠の愛の誓い
一年後。リデル帝国の帝都は、かつてないほどの色鮮やかな花々に埋め尽くされていた。
今日は、帝国最強の公爵ギルバート様と、伝説の聖女となった私の結婚式だ。
純白のドレスに身を包み、私は鏡の前に立っていた。
かつてアシュバッハ王国で「地味で無能」と蔑まれていた姿はどこにもない。世界樹の魔力によって磨かれた肌は真珠のように輝き、瞳には自信と幸福が宿っている。
「……準備はいいか、私の女神」
背後から、漆黒の礼装に身を包んだギルバート様が現れた。
彼は私の肩に手を置き、鏡越しに見つめ合う。その瞳には、一年前の冷徹さは微塵もなく、ただ蕩けるような甘い独占欲だけが揺らめいている。
「はい、ギルバート様。……夢のようです」
「夢ではない。これは現実だ。……さあ、世界中に知らしめよう。君が誰のものか」
大聖堂への道中、沿道には数え切れないほどの民衆が集まり、私たちの名前を呼んで祝福してくれた。
だが、その群衆の隅に、ボロ布を纏った数人の男女が、兵士に押さえつけられているのが見えた。
それは、変わり果てた姿のアルベルト殿下と、父、そして母だった。
彼らは、完全に魔力が枯渇し砂漠化したアシュバッハ王国から、命からがら逃げ出してきたのだという。
かつての威厳は微塵もなく、ただ飢えと後悔に支配された、惨めな難民の姿。
「エルゼ……! エルゼ、私だ! アルベルトだ! 悪かった、私が間違っていた! 頼む、国に戻ってきてくれ! お前さえいれば、私はまた王太子に戻れるんだ!」
「エルゼ、私だ、父親だぞ! お前を育ててやった恩を忘れたのか! 親を見捨てて自分だけ幸せになろうなんて、そんなことが許されると思っているのか!」
必死に叫ぶ彼らの声は、狂喜乱舞する民衆の祝福にかき消されていく。
私は一度だけ、彼らに視線を向けた。
だが、そこに怒りも憎しみもなかった。
今の私にとって、彼らは「道端に転がる石ころ」と同義だった。私を愛し、守ってくれる人が隣にいる今、過去の亡霊に割く感情など一滴も残っていない。
「……ギルバート様、行きましょう。私たちが向かうのは、あちらではありません」
「ああ。君の言う通りだ」
ギルバート様は彼らを一瞥だにせず、私の腰を引き寄せ、守るように抱きしめた。
その直後、私が一歩踏み出すごとに、彼らとの間に高く美しい「花の壁」が咲き誇り、彼らの醜い叫びを物理的に遮断した。
それが、私を捨てた彼らへ贈る、冷徹で残酷な「終止符」だった。
大聖堂の祭壇に立ち、私たちは誓いのキスを交わした。
その瞬間、私の背中から黄金の光が溢れ出し、空に巨大な「光の世界樹」が描き出される。
「愛している、エルゼ。……君を追い出した者たちが一生かかっても届かない場所へ、俺が連れて行く」
「私も……愛しています、ギルバート様」
数年後。
アシュバッハ王国はリデル帝国の属領となり、かつての王族や聖女ミラは、荒れ果てた土地を耕す農奴として、一生を終えることになったと風の噂に聞いた。
一方、リデル帝国は「聖女の国」として、空前絶後の繁栄を極めている。
帝城の奥深く、誰も立ち入れない秘密の庭園で、私は今日もギルバート様に抱き寄せられている。
「……まだ、足りないな。どれだけ君を愛しても、君を俺の中に溶かし込みたいという衝動が収まらない」
氷の公爵は、今や私だけを愛でる情熱の塊となり、その独占欲は日に日に増している。
けれど、そんな「重すぎる愛」が、私には何よりも心地よかった。
追放されたあの日、雨の中で彼の手を取ったのは、私の人生で最高に正しい選択だったのだから。
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