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どう考えても不適合!

佐藤あかり、25歳。普通の会社員、いわゆるOLだ。毎日朝起きて電車に揺られ、会社でデスクワークをこなし、夜はアパートに帰って一人暮らしのルーティン。別に不満はないけど、人生のハイライトは間違いなく「BL」だ。ボーイズラブ、つまり男性同士の恋愛をテーマにした小説や漫画。15歳の頃からハマりまくって、今じゃヘビーユーザー。現実の恋愛? 興味ないない。男の人と付き合うより、架空のイケメンたちが織りなすドラマチックな関係性に心を奪われるんだよね。


今日も仕事から帰って、ベッドに転がりながら新刊のBL小説『禁断の王冠』を手に取った。表紙は金髪の王子様と黒髪の忠実な騎士が、意味深な視線を交わすイラスト。もうこれだけで胸が高鳴る。「ふふふ、今日の俺のディナーだぜ!」って心の中で叫びながら、ページをめくり始める。ストーリーはファンタジー世界で、王子が騎士に命を救われてから始まる禁断の関係。最初は主従の絆が、徐々に恋愛に変わっていく展開。作者の筆致が絶妙で、心理描写が細かくてたまらない。


特に今日のクライマックスシーンがヤバかった。王子が戦場で負傷し、騎士が必死に抱きかかえて逃げる場面。「お前なしでは生きていけない…」って王子が囁くセリフに、騎士の目が潤むのよ! 「あああっ、ツンデレ王子と熱血騎士の絡み合い!! これぞBLの神髄!!」 興奮がピークに達して、鼻血がドバドバ出始めた。いつものことだけど、今日は量が異常。ティッシュで押さえながら読み進めるけど、止まらない。頭がクラクラしてきて、視界がぼやける。「やば、貧血かも…」 立ち上がろうとして、ベッドサイドのテーブルに頭をゴンッと強打。痛みが走った瞬間、意識がブラックアウトした。


……どれくらい経っただろう。目を開けると、そこは見慣れない場所。ふかふかのベッドに、天蓋が付いてる。カーテンがレースで、部屋全体が豪華絢爛。壁には金縁の鏡と絵画、家具はアンティーク調。「え、夢? 病院?」 慌てて起き上がって鏡を見ると、そこに映っていたのは自分じゃなかった。金髪のロングヘア、碧い瞳の美少女。ドレスみたいな服を着てて、年齢は10歳くらい? 「誰これ!? 私、佐藤あかりなのに…!!」


パニックになりながら周りを見回す。記憶がフラッシュバックみたいに蘇ってきた。ああ、そうか。これは…あの乙女ゲームの世界だ! 数ヶ月前にプレイした『ロイヤル・ハーツ ~王冠の恋人たち~』。ファンタジー王国を舞台にした恋愛シミュレーションゲームで、主人公の平民ヒロインが貴族のイケメンたちを攻略していくストーリー。で、私は…悪役令嬢ヴィクトリア・ド・ロワール公爵令嬢に転生したみたい。ゲームでは、ヒロインをいじめまくって、最終的に破滅する運命のキャラ。貴族の誇りを盾に、陰険な策略を巡らせるタイプ。


「マジかよ!! 腐女子の私に悪役令嬢なんて向いてないって!!」 心の中で叫ぶ。ゲームのシナリオを思い出す。ヴィクトリアは傲慢で嫉妬深く、ヒロインのエレナを陥れて、王子様の婚約を狙うけど、結局バレて追放か処刑エンド。現実の私はそんな陰険なことできないよ。むしろ、攻略対象のイケメンたちをBL目線で楽しみたい派だもん。王子アレクサンダーと騎士ガレス、王子と公爵子息ルイス、魔法使いセバスチャン…みんなカッコいいし、組み合わせ次第で無限のBL妄想ができるのに!


でも、待てよ。転生ものって、ゲームの知識を使って破滅を回避するパターンだよね? 私もそうしよう。まずはこの世界の自分を把握しなきゃ。部屋の扉がノックされて、メイドが入ってきた。「お嬢様、お目覚めですか? 朝食の準備が整いましたわ」 丁寧な言葉遣いに、ビビる。ヴィクトリアは公爵令嬢だから、こんな扱いか。メイドの名前は…ゲームで出てきたアンだっけ? 「あ、ありがとう。えっと、今日の予定は?」 自然に振る舞おうとするけど、声が幼い。


アンさんが優しく微笑む。「本日は家庭教師のレッスンですのよ。お父様がお待ちですわ」 お父様…公爵ド・ロワール。ゲームでは厳格で、娘を道具みたいに扱うキャラ。母は早くに亡くなってる設定。転生前の私の家族は普通だったけど、母は早くに離婚して、父と二人暮らし。寂しかったけど、BL本が友達みたいなもんだった。あかりの過去がフラッシュバックする。学生時代、クラスで浮いてた私。みんながアイドルや恋バナで盛り上がる中、一人でBL漫画読んでニヤニヤ。社会人になっても変わらず、休日は本屋巡り。孤独だったけど、それで幸せだったのに…今はこんな世界に飛ばされて。


公爵の執務室に行くと、威厳のある中年男性が座ってる。「ヴィクトリア、遅いぞ。今日からマナーのレッスンを強化する。貴族の娘として恥ずかしくないようにな」 厳しい目。ゲーム通りだ。「は、はい。お父様」 内心ビクビク。レッスンは貴族の作法、魔法の基礎、歴史。ヴィクトリアは魔法適性が高い設定で、ゲームではヒロインを魔法で攻撃したりする。でも、私の知識で回避できるはず。


レッスン中、ふと窓から外を見ると、王宮の塔が見える。あそこに攻略対象たちがいるんだろうな。王子アレクサンダーはクールで完璧主義者。幼少期に母を亡くして、心を閉ざしてる。掘り下げると、弟の第二王子との確執があって、責任感が強すぎるツンデレタイプ。騎士ガレスは熱血漢で、貧乏貴族出身の努力家。戦場トラウマを抱えてて、夜に悪夢を見るらしい。公爵子息ルイスは遊び人風だけど、博識で家族のプレッシャーに苦しむ。妹思いで、幼い頃の虐待経験が影を落としてる。魔法使いセバスチャンはミステリアスで、禁忌魔法のせいで体が弱い。永遠の命を求めてるけど、人間味を失いつつある…。


「うわぁ、みんな掘り下げ深い!! BLのネタが尽きないよ!!」 妄想が止まらない。王子とガレスの主従愛、ルイスとセバスチャンの知的ライバル関係…鼻を押さえるけど、幸い鼻血は出ない。転生体質か? でも、この体は10歳。ゲーム本編は学園入学から始まるから、まだ数年猶予がある。まずは破滅ルートを避けるために、ヴィクトリアの性格を穏やかに変えていこう。父に媚び売るんじゃなく、自然に。


夕食時、公爵に話しかける。「お父様、今日のレッスン楽しかったです。もっと勉強したいです」 公爵の目が少し柔らかくなる。「ふむ、珍しいな。お前はいつも不満げだったのに」 ゲームのヴィクトリアはわがままだったみたい。転生前のあかりは、父に甘えられなかったから、こんな関係が羨ましいかも。掘り下げてみると、ヴィクトリアの母は魔法の事故で亡くなった設定。公爵は再婚せず、娘を厳しく育てるけど、実は愛情深い。転生した私は、それを利用して絆を深めよう。


夜、ベッドに戻って考える。「腐女子の私に悪役なんて無理!! むしろ、ヒロインと仲良くなって、みんなでBL推し活したいわ」 でも、ヒロインのエレナは平民で、腐女子だって設定…待て、ゲームではそんな描写なかったけど、この世界のオリジナル? いや、私の妄想かも。いずれにせよ、転生ライフを楽しむぞ!!


でも、頭を打った痛みがまだ残ってるみたい。転生の代償か? 明日から本格的に計画立てよう。まずは学園入学まで、貴族社会に慣れること。腐女子パワーで、この世界を変えてみせる!!

最後まで読んでいただきありがとうございます。これからどうなってしまうのでしょうか…

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