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聞き込み

「何かって、なんだ?」


「うーん、それまでは分からないな。ただ、ショウとヒカリが交わした約束を叶えられると不味いことだけは分かるね」


「まぁな……」


トウタたちは考え込むが、やっぱり答えは出なかった。

考えることを止めてトウタは、ぽんと膝を叩く。

そう言って立ち上がり、ショウに手を差し伸べた。


「しかたない。今は出来ることをしよう。この黒服は組織的に動いてるなら、他にも被害者はいるだろうから、その人を探そう」


「そうだな。手がかりを持っているかもしれないしな。人がいるところと言ったら、あそこしかないな」


その手をショウは握り立ち上がる。


「行こう!」


トウタたちは海沿いを駆け出した。

氷漬けの船や人気のない駅前を通り過ぎると大きな交差点に出た。


そこはかつて車の往来が盛んだった場所だ。

この道を辿っていくと、この街の心臓部とも呼べた巨大なターミナル駅に着く。


何本もの路線が乗り入れ栄えた駅も今や見る影もない。寂れてあちこち崩れかけた建物だが、周りに比べて頑丈だったらしい。


人が身を隠し暮らしていくには最適の場所だった。

そして、集まった人々によってコミュニティが形成される。


かつてバスターミナルとして使われていた場所は、闇市のような姿に変わっていた。

ビニールシートやパイプで作られた屋台には、どこからか手に入れたのか生活必需品が並ぶ。

食料の缶詰、持ち運ぶためのカバン、火を起こすためのマッチやライター。娯楽の本。所狭しと並べられた品物。


お金はもう意味が無いので、物々交換だが。

闇市を人と店主は数少ない品物で、怒号が飛び交うこともある。

それくらいみな必死で。ここでしか手に入らないものも確かにあった。


「やっぱり人が集まるなら、立浜(たちはま)駅だな」


「さっき居た来海(きまち)駅よりはひとがいるからね」


立浜駅に近づくにつれて人にぽつぽつとすれ違う。

みな、トウタたちと同じような出で立ち。

ツギハギだらけの服を着、どこか虚ろなギラついた目をしていた。

誰も彼もが必死に今を生きているのだ。


「さて聞き込みするか」


「そうだね!」


ショウが先頭にたち、露天の店主や客に声をかける。


「長い黒髪の女の子知りませんか。ヒカリというんですが。それか、このコートの持ち主の情報でもいい」


ヒカリのこと、黒服の情報を訪ね歩く。持っていたコートを見せて情報を得ようとした。

しかし、聞くもの皆首を横に振るか、まともに相手にされない。


「知らないね! それよりも、そのコートを売る気はないのか? あぁっ?」


むしろ、冷やかしならどこかへ行け、邪魔だと言われる。


「わかった、いい。いくぞ」


それでも、トウタもショウも諦めなかった。

諦めることなどできず、何人もの人物に手当り次第訪ね歩いた。


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