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あとは任せて


「恐らく、父さんは現実世界でこの世界の崩壊のスイッチを押した。直に全てが消え去る」


ケイが耳元でそう囁く。近くにいたチカも不安げにトウタを見上げていた。


「どうするつもりか、兄さんは決めているんだろう?」


トウタに問いかけてくる言葉は疑問符だったが、ケイはどこか確信めいた口調で言った。

全てを分かっているよ、と言いたげなケイには叶わないなぁとどこかトウタは感心してしまう。


「うん、でも……巻き込む訳には二人を巻き込む訳には行かないよ……」


これは、トウタが決めたことだ。トウタ自身が考えてこうすると決めた。

それをケイとチカに強いるつもりは毛頭なかった。


しかし、ケイは大きなため息をついた。


「……俺らも随分前に決めてる。多かれ少なかれ、こうなることは予想してたことだしな。自分たちの終わり方くらい、自分たちで決める」


「そうだよ。最後くらい人の役に立ちたいよ」


そう言いきったケイとチカの覚悟の決まった目を前に、トウタは息を飲んだ。

やっぱり彼らもAIで、人の役に立つために生まれた存在なのだとトウタは思い知った。

立場は違えど、担わされた役目は同じなのだ。


「分かった、一緒に行こう」


ケイとチカはトウタのその言葉に頷く。続いてトウタはサクラに目配せをした。


──どうか、ショウとヒカリをお願い。


トウタは口には出さなかった。口に出してしまえば、ショウとヒカリに気づかれてしまうかもしれなかったから。


そんなトウタの無言の意味を察してくれたサクラは、強く深くうなづいた。


──後は、任せて。


そう、サクラに言われている気がしてトウタは柔らかく微笑んだ。

あぁ、なんて幸せな気持ちなんだろう、とトウタは揺れる足元の中、穴の淵に立った。


穴の底では、トウタの刀がさらに激しい電流を放ちばちばちと音を立てていた。

辺りのプログラムを破壊して、だんだんと巨大化しながら全てを飲み込んでいく。


きっと、あれを制御できるのはトウタしかいない。

そして、トウタだけでは扱いきれない。


「何するつもりなの、トウタ!」


「まさか、お前っ!!!」


その真意に気づいたヒカリが声を上げ、ショウが立ち上がろうとする。


「だめ! あなたたちはここに居て!」


「なんだよ、離せよ!」

トウタの元へ来ようとしているショウの肩を、サクラは強く押さえ付けていた。

ショウが必死にその手を振り解こうともがく。


「無理だよ、サクラは……強いから」


トウタはショウに、無駄だよと言う。

しかし、ショウは諦めず、サクラの手を解こうとしながら叫ぶ。


「お前、一番やっちゃいけないことをしようとしてんだぞ!? 俺らを置いて行くって決めて……!」


「そうだね……僕は、最低かも。だけど、決めたんだ」


トウタはショウに背を向けて前を向いた。

もう、ショウと話すつもりは無かった。これはただのトウタの独り言だ。


「僕はね、ショウとヒカリに出会えてよかったよ。お陰でサクラの記憶も取り戻せたし。だから、満足なんだ」


これは心からのトウタの本心だった。

何も無かった空っぽの心に、ショウと出会い、ヒカリを救い出して、孤独を埋めることが出来た。

その上、サクラとの記憶も取り戻せてこれ以上の幸せを、望んだらバチが当たる。トウタはそんな気さえしている。


だから。


「これでいいんだ、ありがとう。だから、後は……僕に……僕たちに任せて……!」


一歩、トウタは足を踏み出す。そこは足場などなく、トウタの体は真っ逆さまに落ちていく。

ケイ、チカもその後に続いて、穴へと飛び込んだ。



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