表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/63

奈落に続く穴


「ぐ…………!!」


焼き付くような光が、トウタを包み込む。腕で目を覆っても、貫通してくる容赦ない光にその場で蹲った。


やがて吹雪の音は止み本当の静寂が訪れる。トウタの背後からは仲間たちの息遣いが聞こえる。


(吹雪を、抜けた…………?)


にしても静かだ。仲間の息遣いしか聞こえない空間が吹雪の向こうにあったのか、と思うと警戒しながら目を開ける。


「なんだ、これ…………!?」


トウタの足元、積もっている雪が不自然に途切れていた。

まるでそこだけ切り取られたかのようだ。あと一歩踏み出していたら、雪の足場はなく自分自身が落ちる所だった。


「ここ、はまさか」


見覚えのある場所にトウタの記憶が蘇る。

サクラを最期に見た場所、真っ白な何も無い空間。


「僕は戻ってきた」


記憶の中の空間そのままに、トウタは酷く動揺した。

濁流のように押し寄せ、何度も何度も同じ場面を繰り返す。


自身に焼き付いたトラウマとして。

けれど、トウタは飲み込まれる訳にはいかなかった。


今はショウやヒカリがいる。それに、ケイとチカ。

そしてサクラも。


(しっかり、しろ)


トウタは自分自身の腕を強く掴んだ。痛みで頭の中が埋め尽くされる。そのお陰で緩くなった記憶の再生に、トウタは安堵する。


(今は、自分のことは後回しだ)


今自分が成すべきことはなにか。分かっているだろう?


少しずつ落ち着きを取り戻したトウタは、深く息を吐いた。


恐る恐る底をトウタは覗き込む。それは穴はどこまでも続いていて、どこまで行っても真っ白だった。穢れのない白に、トウタは恐怖を覚え足がすくむ。落ちたらきっと戻れない。


後ずさった足場の雪が、奈落の底へ落ちていく。


「あれ、は!」


ゆっくりと落ちていく雪にノイズが走る。溶けるでもなく、雪は数字の羅列と化し空気に解けるように消えた。


「ここに落ちたら、僕らもああなる」


ここはさながらデータを消す、巨大なゴミ箱というべきだろうか。

こんな物が世界の果てにあったなんて、トウタは思ったが直ぐにこれが何か気づく。


深い奈落の底、目を凝らした先に一本の刀が見えた。青白く光る刀からは今も荒れ狂うように、電流が走っている。


「あれは僕が突き刺した、刀」


それはトウタがこの世界を破壊し尽くそうとした時に突き刺した刀だった。


「まだ、機能してたなんて……。ならこれは僕が作ったのか」


自分のしでかしたことの大きさに、トウタは一歩後ろに下がった。

改めてことの重大さに、押しつぶされそうになる。

この空間がもしも、仮想空間を飲み込んでいたら?


全ては真っ白になって、あの雪のように消えていたのかもしれない。


「こ、これは……」「なんだ……」


後ろを歩いていたヒカリとショウが声を上げる。トウタと同じように穴を覗き込むと、生唾を飲み込む音が聞こえてきた。


「なんで、穴が……?」「塞がってたはずじゃ……」


と、チカとケイが続く。

ケイとチカは驚いた様子で、穴の淵に手をかけて底にある刀を見つめ続けている。


「なんで、刀が? 消されたわけじゃなかったのか……?」


「あれは、特別な刀だ」


「……………………!?」


急に聞こえた声に、トウタの体が跳ねる。

声のする方へ振り返ると、白い壁に映し出されたモニターに一人の人物が映っていた。


荒い画面でも分かる、血の通ってなさそうな肌に無精髭。やせ細った男は──ハカゼだった。


トウタの知っている面影はどこにもなく、驚きを隠せない。

いくら時間が経ったとはいえ、ここまで人は変貌するのかとトウタは戸惑った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ