目指していた場所
「ショウ! ヒカリ!!」
白い雪が容赦なく、トウタの体に襲いかかる。それはここに居る誰もが同じだった。着ているコートや靴にまで雪が積もる始末。
どうにかして早く安全な所へ行かないと。
トウタの心は焦っていた。このままここに居たら、サクラと同じように二人を失ってしまうのではないか、と。同じ轍を踏んでしまうのではないかと。
(それだけは嫌だ。もう、あんな思いしたくない!)
トウタの心臓が鼓動を打ち続けている気がした。止まっているはずの自分の心臓がここにあるような感覚。抑えようもない、焦り。
ぎゅっと強く握りしめた拳を、不意に掬いあげられ、トウタは振り返る。
「二人とも平気?」
そこにサクラが立っていた。凛としたサクラに一切の迷いや焦りは感じられない。
サクラの問に、ショウとヒカリがそれぞれ大丈夫、と答えるとサクラは続けて後ろを振り返る。
「ケイもチカもそこに居るわね!?」
猛吹雪の中、ケイもチカも寄ってきて六人で団子のように固まる。
お互いがお互いを温めるように身を寄せ合うとケイが何処からともなくロープを見せる。
「いいか、これでお互いの体を繋げる。これなら誰か一人はぐれることは無い。だが、繋ぐ以上、ひとりが倒れれば皆道連れだ」
それでもいいか、とケイが言う。
けれどそれでトウタは構わなかった。ここで誰かひとりが欠けるなんて考えられない。
欠けるくらいなら、一緒に倒れるくらいの覚悟をトウタは決めていた。
それくらい、もう離れることはトウタには出来そうにない。
「…………何を今更。もちろん、私は異論ないよ」
「私も、それがいいと思うなあ」
サクラが同意すると、チカも無邪気さを失わず声を上げる。
「むしろ、お願いしたいな。ね、ショウ」
「ああ」
続けてヒカリとショウが答えると決まりだ、とケイがロープを手早く各々の体に結び付けていく。
「トウタ……お前は先頭を行け。俺は殿を務める」
ロープの先端を差し出して、ケイが言う。
その射抜かれそうな強い眼差しに、トウタは深く頷きロープを受け取る。
「先頭は任せて。後ろはお願い」
トウタはロープを手早く自分に巻き付ける。それを見守ったケイがはは、と余裕のある笑顔を浮かべた。
「誰にものを言ってる」
「そうだね、ケイは何だって出来る人だよ」
「……ヒト、か」
僅かに体を震わせたケイに、トウタは再び言う。
「そう、僕らもヒトだよ」
「そうか」
別段気にしない、と言ったふうに装うケイが浮かべた笑みをトウタは見逃さなかった。
元はトウタも人間だ。今はどうであれ、人間だった。
きっとそれを言えるのは同じ立場であるもの同士のみだ。
AIである事実は変わらないけれど、トウタは人間だと、少しでも思いたかった。
(それはケイも同じだよね)
確かめるように言った言葉は、ケイにどう届いたのかわ分からない。
けれどトウタと一緒だと、返ってきた笑みが答えな気がした。
「行くよ、みんな」
トウタは一歩一歩雪を踏みしめる。雪が踏みしめられて、軋む音すらもう聞こえはしなかった。
視界は零に近く、一面真っ白。耳に届く音は騒がしく、全てを奪い無音と化していた。
どこへ辿り着くのかは分からない。ただ、この先に、終わりがあることをトウタは予感していた。
全ての終わり。雪から目を守るため、細められた二つの目が白い光を捉えた。
雪ではない、人工的な白。ライトを正面から突きつけられたみたいだった。
しかし、くらんだ目をトウタはそらさなかった。
──きっとここが、目指していた場所だ。
いつも読んでいただきありがとうございます!
物語も佳境です。
トウタたちは最後どこへ行き着くのか、お楽しみに!




