視界を遮る吹雪
「それこそ、気にしないの。トウタもトウタのしたいようにすればいい。私もそうするから。ほら、これ」
「これは……」
差し出し出されたのは、トウタがサクラを斬った剣だった。
「忘れ物って、これの事だったの……?」
まさか取りに行っていたとは思っておらず、トウタは驚きの声を上げる。
サクラは少し得意げに鼻を鳴らしながら答える。
「ふふ、凄いでしょ。これはあなたが持っておくべきもの。これがあればいろいろ対応できる。武器はないよりもあった方がいい」
ず、とサクラはトウタの胸に刀を押し付ける。
トウタはその刀を両手で受け取った。
「ありがとう、持っておくよ」
「よろしい。どんな選択をしようとも、私はトウタを応援するよ」
満面の笑みを浮かべるサクラに、つられてトウタも笑い返す。
すると。
「おーい、ふたりとも何してるのー? 行っちゃうよー!!!」
遠く、氷上の上からヒカリが両手を振りながら叫んでいる。
ショウとケイはやれやれと肩を竦め、チカはヒカリと同じように手を振っていた。
「今行くー! 行こう、サクラ」
トウタはサクラに手を差し伸べる。サクラも迷わずにその手を取って走り出した。
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晴天の中、強い日差しが氷の白に反射する。
余りの眩しい白さに、トウタを初め一行は目を細める。
地面から視線を外し僅かに顔をトウタは上げた。
風に舞い上がる粉雪がキラキラと光って幻想的だ。寒さも忘れ歩き続けると、陸地はだんだん離れ、遊園地の廃墟が遠く霞む。
代わりに陸地では遠く見えていた工業地帯が、目の前に迫る。
「あれ……?」
不思議そうに、ヒカリが声を上げる。
かなり遠くに見えていたはずなのに、直ぐに工業地帯が広がることに、不思議がっているようだ。
「そこまで不思議がることじゃないよ。ようは、生活する空間だけを細部まで緻密に再現してるだけ、後の場所は簡単にしてるんだよ」
例えば世界全てを再現したら、それだけで保存する情報が膨大になってしまう。そうなれば
人という情報を入れる隙間が無くなる。
それを避けるため、人が生活する分だけをこだわりその他は簡略化したのだ。
距離も見えずらくしたりし、視覚の錯覚を起こさせ遠く見せたり、近く見せたりしているに過ぎない。
「よく出来てるのね……」
そうトウタが説明するとなるほど、とヒカリが頷く。
五感はあれど、細部まで拘っているわけではないちぐはぐな世界だ。一歩一歩確かめるようにトウタは前に進む。
時間が経つにつれて、多くなる雲。それは段々と群れをなし、黒く染まる。
強くなる風と、降り始める雪が吹雪となって襲いかかる。
「みんな、大丈夫!?」
トウタは大声を張り上げる。出ないとこの嵐に全てをかき消されてしまう。視界も段々と悪くなり、数メートル先も危うい状況。
遭難という二文字がトウタの頭を過ぎる。虚構の世界とはいえど精神は、ちゃんと働いている。下手に五感が命の危機を感じたら、精神にどんな悪影響をきたすか分からない。
(ショウとヒカリが心配だ)
離れすぎないようにトウタは、ショウとヒカリのそばに駆け寄る。雪で足元を取られながらも、歩く二人に疲労の色が伺える。
この短時間の気候の変化は、二人にかなりの負担を強いているのは明らかだった。




