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こんな終わりを望んでない


何度も繰り返される失敗が、人類の──サクラの精神を削っていったのは明白だった。


解決策なんて、見つからないと人類が気づくのはすぐだった。

トウタも薄々分かっていたのだ。もうすでに手遅れであることを。

人類の手にはあまりある自然の脅威には、勝てないことを。


全ては神のみぞ知る世界に足を踏み入れてしまったのだと。


徐々に明るさを失っていったサクラに、トウタはどうすることも出来なくなっていた。


初めはトウタの励ましの言葉に、そうだよねとうなづいてくれていたサクラだったが、いつの間にかそれさえも届かなくなっていった。


「サクラ…………」


呼び掛けに、一切反応を示さないサクラにトウタは戸惑う。AIである自分に心というものがあるのか分からないが、胸の奥がづきんと痛む。

これがバグなのか、心があるせいなのか分からないが苦しいのは確かだ。


けれど、自分が痛いのはトウタにとってはどうでもいいことだった。

それよりもサクラの痛みを、なんとしても和らげたかった。


(でもその手段が分からない)


出来ることと言えばそばに居ることだけだった。逃れようも出来ない無力感にトウタは襲われ、足が竦む。


(傍にいてあげて言われたのに、それだけしか出来ないなんて)


言われたその言葉の奥に、トウタが気づかないはずがなかった。

人の役に立ちなさいと願われたのをトウタはとっくのとうに理解していた。だからこそ、サクラになにかしてあげたかった。


その間にもサクラは壊れていくのを、トウタはただただ見ていることしか出来なかった。

隣にいることに、段々と恐怖を覚えながら。


最期の時をトウタは迎えたのだ。


真っ白い空間に、サクラの体が横たわっていた。

血の気のない、真っ白な肌。それはまるで雪みたいだ、とトウタは思った。

今まで見た中で一番真っ白だ。穢れを知らない白さにトウタの目が眩む。

ピクリとも動かない指先に、真っ青な唇に、トウタは打ちのめされていく。


「サクラ……?」


静かにその名前を呼んだ。トウタの頭では分かっていても、理解したくなかった。

理解、出来なかった。拒んだ思考がトウタを前に進ませなかったのだ。


「彼女はもう、死んでいる。人しての生を終えた」


トウタの背後に立つのは、ケイだ。すぐ側にはチカも立っている。

二人は悲しそうな素振りも見せない、声色でサクラを一瞥する。


「嘘だ、なんで……」


嘘だ、と繰り返すトウタにケイは告げる。


「彼女は現実世界で衰弱して、息を引き取った。それほどまでに、ここの生活が苦しかったんだろう」


ケイの言葉がトウタの胸に突き刺さる。

結局、サクラはトウタがいても苦しみ、そして死んでしまったという事実に打ちのめされる。


トウタは役目を全うできないどころか、サクラを死なせてしまうなんて、あまりにも自分は無力すぎる。


「何のために、ここにいるの? 何のために、僕は……!!!」


頭が真っ白になる。何も考えられず、全てが真っ白に塗り替えられていく気がした。


「あぁ、こうすれば良かったんだ……」


その時気づいてしまった。

悲しさも、辛さも、この雪のような白さに塗りつぶしてしまえば、何も感じることは無い。


解決策の無い現実世界も、解決策を見いだせない仮想空間も全て無くなればいいとトウタは願ってしまった。


全て真っ白に、消えてしまえ。


トウタの意識はそこで、ぷっつりと途絶えた。




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