今度は迷わない
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「いつからお前は、そんな口を聞けるようになったんだ?」
はっ、と鼻を鳴らして嘲笑うかのような男の声。
その声の中にトウタを嫌う感情がありありと込められている気がした。
そこまでして嫌われる理由はトウタには分からない。
けれど、トウタ自身もこの声の人物は、はっきり嫌いだと分かる。
嫌悪。生理的に受け付けない、と言っていい。
ここまで人を嫌ったのは初めてだ。
「またお前は、立ち塞がるのか?」
「なんのことか分かりませんね。僕はあなたに会ったのは初めてですよ」
トウタはそう言ったが、内心初めてな気がしなかった。こうして昔言葉を交わした、気がしていた。
その時も、こうしていい気はしなかったとトウタは思う。
きっと、この人とは根本的に分かり合えない。
(やっぱり、この人……僕のこと知ってるんだ……)
思えば思うほど、感じる嫌な気持ち。トウタは苦虫を噛み潰した気分に気持ち悪くなってくる。吐きそうな胃の縮む思いを堪える。
「どうしたんです? 僕が怖いんですか? だから姿を現さないのですか?」
その泥のような汚い気持ちを振り払うように、トウタは言葉を投げつける。
しかし返ってきたのは、腹の底から響く男の高笑だった。
「勘違いするな。お前に私が姿を現す価値がないからだ。あるとすれば、こいつだろう!」
男は、その名を呼ぶ。
────サクラ、と。
「………………トウタ………………!!!」
暗がりから飛び出してきた華奢な体が、容赦なく襲いかかってくる。
桜の花びらが散るように、弾ける火花。
トウタは繰り出されるサクラの斬撃を、咄嗟の判断で刀で受け止める。ふたつの青白く輝く刀が十文字に一瞬交わった。
が、すぐに腕が痺れる重い衝撃にトウタの手から刀が弾け飛び、輝きはあっという間に失われる。
トウタが会いたいと願った相手がすぐそこに居る。再び刀を持ち、立ち塞がる形で。
でも、もう迷わない、迷うつもりはトウタには無かった。
トウタは再び刀を握ろうと、刀の元へ走り出そうとした。
それをサクラが許すはずもない。行く手を遮るために刀を一寸の迷いなく振り下ろす。
(気を緩めたら、一瞬にしてやられる)
これでは真っ直ぐ刀の元に行けない。
背後のサクラの圧は、それほどに凄まじい。
どうにかして刀の元へ行かないと。
刀なしでは到底サクラに敵わないことは、トウタは痛いほど理解していた。




