落ちた星
「勝手な行動は、感心しない」
「……うん…………ごめんなさい………………」
ケイの言葉に素直に謝るチカの頭を、ケイは二度触れるように触る。
見るからにケイの方が弱っているのに、それでもチカを気遣おうとする隠しきれない優しさや強さが、トウタには見えた。
「帰るぞ」
トウタには目もくれず、その場をチカと共に去ろうとする。そのふたつの背中に、トウタは声を掛けた。
「待って!! ねぇ、助けてって、何から? 君たちは何に怯えてるの……!!」
このまま返すなんて、トウタには到底無理だった。トウタはケイとチカが自分たちにしたことを許すことは出来ない。
けれど、今面と向かって話しをして、二人の様子を見れば、ただならぬ状況だとすぐに分かる。切羽詰まっている暗い表情を見過ごせない。
それを放っておけるほど、トウタは薄情にはなり切れなかった。
強いトウタの叫びに、ケイが足を止めた。続いてチカも足を止め、不安げにケイの顔色を伺うように覗き込む。
「俺たちのことは、いい。俺たちはこう生きるしか、ない。そう、作られてる」
え? とトウタは問いかける。
(どういうことだ? 作られてるって)
まるで自分たちが人間ではないような言い方に、トウタは戸惑う。
ケイとチカは何者なんだ、正体はなんなのだ。
「俺たちは……人間に……」
ゆっくり振り返りながら振り向くケイが、更に言葉を続けようとした時───。
耳を劈く警報音が鳴り響く。静寂を無かったことにする音に、トウタは思わず耳を塞ぐ。
トウタの塞いだ耳が、かすかにヒカリとショウの声を捉える。トウタを心配する声だ。
大丈夫、と声を出しながらトウタはうなづいた。いつの間にかトウタの傍にショウがいて、ヒカリの腕を掴んでいた。
「離れるなよ!」
ショウが片耳だけを塞ぎながら叫んだ。辺りを警戒しながら、周りを見回す───その瞬間。
ブチン、という不穏な音が響いた。
電源が無理やり落ちたような音と共に、真っ暗闇が訪れる。
トウタは目を疑う。文字通りの暗闇だったから。昼間だと言うのに、そこは夜。いや、夜の方が明るいだろう。星や月があるから完全な闇ではないのだ。
けれど、ここは。生物の気配もなく、息づくのは自分の呼吸だけ。
「何もない、静寂の星みたいだ……」
トウタの広げた手のひらさえ、見えない完全な闇の世界だった。




