世界に三人
泣き続けるチカに、トウタはただ立ち尽くすことしか出来なかった。
チカに何があったのだろう。何がチカを突き動かしているのだろう、とトウタは考えるが答えは出ない。
それに彼女といつも一緒にいた、ケイはどこにいるのだろう。
トウタは辺りを見回してみたが、ケイの気配、影も形も見当たらない。
(ひとりで逢いに来たの……?)
そこまでして、トウタにここにとどまれ、と言いに来た……?
その事実にトウタはチカが切羽詰まった状況なのかと察する。
どう声をかけるべきか、ケイはどこだ、といいかけた時。
その場の空気を破ったのは、ヒカリだった。一歩前に出たヒカリはトウタを背に隠すように立つと、チカに言い放つ。
「それは、無理な話じゃない? トウタの望みを知ってるなら尚更だわ」
ヒカリは階段をゆっくり降りていくのを、トウタはただ黙って見送ることしか出来ない。
静かな空間にヒカリの声が木霊する。
「人の望みは止められないわ。停滞も発展もその人が望むこと。他人が指図する権利は無いのよ」
ヒカリが一歩一歩進む事に、チカは眩しそうに目を細めて見ていた。
細めた目からこぼれ落ちる涙がきらきらと、光る。
「どうしてそこまでして、トウタを縛ろうとするの? 何か、事情があるの? 私たちの記憶をいじったり……あなたたちは何がしたいの、何が望みなの……?」
ヒカリはチカに手を伸ばせば届きそうな位置で足を止めた。
チカは微動だにせず、ただ唇を噛み締めやがて口を開いた。
「私たちはどこにもいけないから……全てを終わらせるためにはこうするしかないの」
「それはどういうこと? 分かりやすく説明して」
「私たちはトウタと一緒なのに、何故こうも違うの? 私たちだって……人間だったのに……私たちを、助けてよ……っ」
泣きじゃくるチカの言葉は要領得ない。何を言っているのかトウタには分からず、ショウやヒカリにも理解できなかったのか首を傾げている。
ただ、彼女が助けてと言った一言だけが、トウタの耳にこびりついて離れない。
今度こそ、トウタが階段を降りチカに駆け寄ろうとした時。
トウタの耳に声が届いた。ケイだ。
足音が近づき、影からゆっくりとケイが姿を現す。その姿は前にあった時よりも、表情に暗い影が落ちていた。あまりにも生気を失った姿に、トウタは息を飲んだ。
「チカ、探した」
その声も弱々しく、ケイの声とは思えないほどだった。トウタはヒカリの横を通り過ぎ、ケイとチカの傍に立った。
トウタ、ケイ、チカを柔らかな陽の光が照らし出す。
それは、トウタたちが切り取られた存在であるかのように感じさせた。




