侵入
「そろそろ食料も尽きかけてるな……」
ヒカリに呼ばれショウと共にトウタは船着場に戻ってきていた。
トウタたちは小さな輪を作り、缶詰を食べているとショウがポツリと呟いた。
「確かに、そろそろ探さないとね」
食べ尽くし底が見えている缶を見つめ、トウタも心許なさを感じていた。
お腹いっぱい食べられずとも、我慢出来る位の食事が取れるならいいのだが、現在そうもいかなくなっている。
「そうだね、とりあえずこの後食料探しをしましょうか」
食べ終えて片付けをしていたヒカリがそう言うと、ショウも頷く。
「決まったなら行くか」
うん、とトウタも強く頷いた。
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見渡す限り氷の世界を、トウタは歩く。
けれど、今はひとりがふたりになり、今は3人になった。
それがなんだかトウタにはむず痒かったが、嫌ではなかった。
むしろ、もう無くしたくないほど、大切だ。
白く空っぽだった世界に、今や色んな色が溢れていくようだ、とトウタは思う。
トウタは新たな絆を掴むように、カバンの紐をぎゅっと握りしめる。
「とりあえず、商業施設後に行こうか。もしかしたらなにか残ってるかも」
トウタは立浜駅からほどなく離れた元商業施設を思い出した。そこは、港町だったこの場所のシンボル的なタワーが聳える場所だ。
人が集まれば、店も集まる。飲食店も例外ではないことを、トウタは知っていた。
船着場を離れ、トウタたちは来海駅の近くのタワーにたどり着く。入口は階段を昇った先だ。来海駅からタワーまでは長い歩道橋で繋がっている。そこをゆっくりと歩いていくと厳重に封がされている入口にたどり着く。
人一人分通れそうな隙間が空いていて、かなりの年月放置されていたのだろうとトウタは思った。
「行こう。多分、地下に飲食店があったからし食べ物があるかも」
トウタが先頭を切って中へ侵入を果たす。続いて、ヒカリ、ショウの順番だ。
中に入ると、窓は少ないものの天井が吹き抜けているおかげで、陽の光が全体的に差し込んでいて明るい。
埃と氷がちらちらと舞い上がり、幻想的な雰囲気だった。
中は荒らされた様子で、洋服や本、誰かが生活していた跡が見て取れる。
けれど、随分放置されていたようでほぼほぼ氷漬けだ。
トウタが地下へ降りる階段にさしかかろうとした瞬間。
ショウがトウタの肩を強く掴んだ。そのまま力づくで柱の影に押し込まれる。
「な、何……?」
ただならぬ雰囲気にトウタは声を潜めて、ショウに尋ねた。
「し、誰か、いる」
ショウは前を睨みつけたまま答え、ポケットに手を入れた。ポケットの中には、ショウの武器電撃が走る短刀が入っている。
いつでも攻撃を仕掛ける体勢を取るショウに、トウタは身震いを覚え刀を強く握りしめた。




