隣にいるひと
「お前、なんも分かってないな」
ここ座れ、と言わんばかりにショウは桟橋の端に座り足を凍った海に投げ出す。ぼんやりと水平線を見つめたショウは、とても穏やかに微笑んでいるようにトウタは見えた。
「…………」
黙ってトウタは腰を下ろす。
横に座って近ずくショウの横顔は、きらきら輝いてトウタは眩しくて目を細める。
ショウはトウタの顔を見ずに、水平線を見つめたまま話し始める。
「トウタは、自分自身のこと空っぽだなんて言うけど、おれはそうは思わないよ」
そこで確かにな、とショウが言葉を区切る。
「ずっと一人だったかもしれない。なんてたってこの世界で相棒がいない奴なんてそうそういないしな」
だけどな、と畳み掛けるようにショウは続ける。
「お前は今、サクラって奴を探してたって気づいたんだろう? 空っぽだって気づいて、空っぽな自分に何かを注ごうとしてる」
ショウはトウタに体ごと向けると、右手の人差し指でトウタの胸を指した。
「心に引っかかってるものを見つけて、それを手に入れようとしてる。手に入れたいって、自分から動き出そうとしてるんだろう?」
違うか? と首を傾げたショウに違いない、とトウタは頷いた。
「なら空っぽなわけあるか! 俺はな、空っぽってのは何も動き出せず、身動きすらない状態だと思ってる」
あの、老人みたいにな、とふと寂しそうにショウは呟く。
「トウタはちゃんと持ってるよ。空っぽじゃない。それにな!」
急に来た衝撃にトウタは体のバランスを崩す。
しかし、トウタが氷の海に落ちることはなかった。
ショウが、力強くトウタの肩を組んでいたから。
ぎゅ、と苦しいほどにショウはトウタを強く掴んで離さない。
それがどれだけトウタにとって心強かったか、きっとショウは知らないだろう。
「トウタの隣には俺がいるしな。まー、おまけでヒカリもな」
照れ笑いを隠すように、ショウはにししと笑う。
「俺はトウタのこと、相棒だと思ってるぜ」
「………………ありがとう、僕もショウのこと相棒だって思ってるよ!」
ショウの言葉をかみ締めながら、トウタもそう応えた。
(ショウのことも大事だ……)
トウタは今まで知らなかった気持ちを知った。
一人になって孤独を知って、空っぽだったトウタの心には、ショウとの共にした時間が降り積もっていた。
いつしか、それはトウタの心を埋めてくれていたことに気づけたのだ。
そして、相棒になった。いつの間にか、トウタは相棒を手に入れていたのだ。




