闇の中の家族
照明器具がない部屋の中、輝いているのは二台のモニターだけだった。
簡素な鉄パイプの椅子に座っていたケイは、無表情のままその画面を見つめ続ける。
そこに写っているのはトウタたちだ。
どうやらここで夜を明かすことにしたらしい三人は肩を寄せ合い会話を交わしていた。
その様子をケイはじっと見つめていた。
(兄さん……)
声には出して言わないが、ケイはトウタのことをそう呼んだ。どうしたって届かない声だった。
(それに……まさかこんなことになるとはな)
そう、この事態がケイにとって予想外だった。
トウタが再び誰かと一緒に居るようになるとは今の今まで思ってもみなかった。
全ては偶然。ケイが用意した道でも、ましてやチカが用意した道でもない。
(どうするべきか)
椅子に深く腰掛け、モニターを睨みつけたまま低く唸った。
顎に手を当ててケイが足を揺すっていると、すぐ側にチカが音もなく立つ。
「どうしたの、ケイらしくもない」
無邪気に笑うチカがケイに問いかける。
チカはいつもそうだ。ケイが何かを考え込んでいる時にそっとやって来ては包み込むようにそばに居る。
それがケイにとって安らぎになる。
それに、ひとりじゃないと思えた。ある目的のために作られた自分たちの存在理由を。人の記憶を奪い、導いていかなければならないという役目を担うことを。
「ほら、元気だしてよ。大丈夫、だよ」
チカがケイの肩に触れる。軽く掴まれたその小さな手の力強さに、ケイは奮い立たせてもらっていた。
「ああ。大丈夫だ。心配かけた」
「ふふ、別になにしもしてないよ」
なんでもないように振る舞うチカにケイが笑いかけようとした時。モニターにノイズが走る。砂嵐のような画面の荒れが収まると、そこには人影が映る。
しかし、ノイズが激しいせいで表情は読み取れない。
だがそれが誰であるのかケイもチカも分かっていた。
ケイはその姿を見ただけで背筋が伸びる思いがした。この人を前にすると抗えない気持ちに襲われる。抵抗が出来ない。してしまったら取り返しがつかないことになるのをケイは知っていたから。
苦々しい思いを抱えながらケイは画面の向こう側の人物に声を掛けた。
「なにか御用でしょうか」
思った以上に低い声が出たケイに対して、画面の向こうの人物はふん、と鼻を鳴らした。
それだけでこの人物が怒っているのだと感じ取ってケイは震えた。
隣に立っていたチカも小さい体躯を更に小さくしてケイに縋り付いていた。
ケイがこの人物を恐れているように、チカも恐れているのだ。
「父さん」
そうケイが呼びかけると、ケイとチカの父親ははん、と鼻で笑うようにケイとチカの名前を読んだ。




