弔うべき覚悟
そう言っては見たものの、あまり気が進まずトウタの足取りは重い。
それはショウも同じようで、トウタのさらに後ろを抵抗するかのように歩いていた。
先頭を行くヒカリだけが、逞しいほど先に行ってしまう。
トウタはヒカリはあの惨状を目の当たりにしていないから、行けるのだろうと思う。と同時にあれを見て欲しくは無いなと思い始めていた。
一度見たら血みどろの光景は一生忘れられないだろう。
忘れようとしても忘れられない。現に、トウタの頭の中で思い出したくないのに、生々しく浮かんでいるのだ。
だがそんなトウタの思いも露知らず、ヒカリはどんどん行ってしまう。
場所は知らないせいで時たま、方向を聞かれその度にトウタは嘘を言おうとしたが出来なかった。
(見て見ぬふりは出来ないから)
覚悟を決めつつあるトウタと、何も言わないまま着いてくるショウ。
直ぐにトウタたちはあの惨状へ舞い戻った。
足がすくみ立ち止まるトウタとショウ。
薄く開いたシャッターの向こうを想像し、目をトウタは背けた。
(行きたく、ない)
そうトウタの心が叫ぶ。
体は心を守るように、思うようにストップを掛けて前へ進むのを拒んだ。
手足は震えて、酷い耳鳴りがする。
思わずトウタは耳を塞いだ。
「ごめん、私に任せて」
ぽん、とトウタの頭に置かれた手のひらはヒカリだ。
顔を上げたヒカリはトウタを落ち着かせるような柔らかい笑みだった。
前へ進めなくても、一切責めるような仕草を見せずショウへも声を掛けた。
「二人はここにいて」
去っていくヒカリの背中を力無くトウタは見送る。
この場において動けるなんて、凄い人だとトウタは思った。
トウタたちがこんなにも拒否を示す場所に自ら進んで飛び込もうとしているのだから。
拒否をして行かないという選択肢あったはずなのに。
弔いたい、という気持ちだけでここまで来て一人行ってしまったのだ。
(なんか情けないな)
トウタが思った瞬間、耳鳴りが遠くなる。
少しだけ世界がクリアになった気がした。
「僕、行ってくよ。ショウはどうする?」
覚悟を決めてトウタはショウに声を掛けた。
するとショウは両の拳を握りしめ、一歩踏み出す。
「俺も行く」
短い一言だったが、ショウも覚悟を決めたのだとトウタはひしひしと感じていた。




