忍び寄る闇
トウタたちは警戒をしつつ、ジメッとした重い空気を纏ったまま建物の外へ出た。
どうやら既に日は落ちきっていたらしく、すっかり月が昇っていた。
外の新鮮な空気を吸い込み、トウタはやっと一息つくことが出来た。
本当にケイたちはトウタたちには用がなかったらしく気配すら感じられない。
そのことにトウタの肩の力が抜ける。
「ここは、あの地下か!」
ショウが驚きの声を上げて、トウタは辺りを見回す。
確かに、ここは自分が意識を失う前……あの老人と共にいた場所だ。見覚えのある店舗跡が軒を連ね、静まり返っている。
「すぐ近くに僕らは捕まってたんだ……」
ある意味、敵陣のお膝元だったのかもしれないとトウタは身震いを覚える。
知らなかったとはいえ、すぐそこに敵が潜んでいてまんまと敵陣に引きづりこまれたのだ。
背中に冷たい汗が流れるが、ほっと胸を撫で下ろす。
「意外とあいつら近場にいたとはな。分かってたらこっちから仕掛けに行ったのに」
ショウは少し悔しそうに言葉を吐いた。
随分と勇ましいことをいうショウに、ヒカリは物騒だよ、と言葉をかけた。
「よく分からないんだけど、何があったの?」
興味津々といった様子でヒカリがせがむように、トウタたちに問いかける。
トウタはどこまでどう話したらいいのか分からず、たまらずショウを見た。
ショウも、そうだなぁと頭を掻きながらトウタと出会った瞬間からの話をし始めた。
「……ふーん、そんなことがあったんだ?」
あらかたことの顛末をショウが話終わると、ヒカリは顎に手を当てて考え込んだ。
どうやらヒカリの知らないショウの話を聞いて、好奇心は満たされたようだ。
「思ったんだけど、そのお爺さんとお婆さん亡くなっちゃってるのかな?」
は? とトウタとショウの声が重なる。
「何突拍子もないこと言ってんだよ」
「ぼ、僕もそう思う……」
ショウは少し怒った口調でヒカリに言葉をなげつけた。
トウタも戸惑いを見せつつ、ヒカリが何を言っているのか理解しかねる。
あの時二人はケイとチカに殺されたはずだ。
壁や床に飛び散る血痕は、致死量を超えていた。確実に失血死している。本能で分かるようにトウタの気持ちは揺るがない。
「なら、一度行ってみようよ。本当なら、弔ってあげないと」
「…………」
力強くいうヒカリに、トウタとショウは言葉を失う。
(分かっている、分かってるけど……)
もし亡くなっているのなら弔うべきだろうとトウタは分かっている。もちろん、それはショウだってわかっていることだろう。
だけど、あの惨状をまた目の当たりにすることに、トウタは恐怖した。
(行きたくない、でも行かなくちゃいけない)
自分たちに手を貸そうとして、ケイとチカに目をつけられたばかりにあんなことになるなんてトウタは思いもしなかったのだ。
自分たちが殺してしまったのでは、という罪悪感がトウタの背中にぴったりと絡みつき、動けなくなるのが怖かった。




